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茶杓の銘(通年・月別)一覧|茶道の季節の言葉・季語120選

茶道

茶杓の銘

茶杓は、茶道具の用途としては抹茶をすくうための匙ですが、もうひとつ重要な役割があります。

茶杓にはそれぞれ「銘(めい)」という名前が付けられており、この銘によって亭主の趣向や意図を表現することが出来るため、茶席では銘というのはとても大切にされます。

でも、茶杓の銘は季節や月によって様々な種類があり、数が多すぎて覚えるのが難しいですよね。

そこで今回は茶杓の銘を季節・月別に分かりやすく画像つきでまとめました。

▼月別の茶杓の銘はこちら

もともと「銘」を持つ茶杓もありますが、お稽古などでは無名の茶杓を使って、自分で銘をつけることも練習のうちなので、ぜひこの記事を参考に、季節感あふれる素敵な銘を使ってみてくださいね。

通年使える茶杓の銘

▼通年使える茶杓の名

末廣(すえひろ)

末廣は、扇子の別名でもあり、扇子の末が広がる形を将来の繁栄にかけたおめでたい言葉として親しまれています。

茶道では、茶杓の銘にとどまらず、花入れかご・釜・水指し・菓子器などの茶道具で、末のほうがしだいに広がった形をしたものも末廣のお道具として好まれて使われます。

松風(まつかぜ/しょうふう)

松風は、読んで字のごとく、松に吹く風のことを指し、その光景には侘び寂びを感じます。

また、釜のお湯には、温度に応じた名前があるのですが、松風(しょうふう)がお茶に最も適した温度といわれており、まさに茶席にふさわしい銘と言えます。

常盤(ときわ)

常盤は、永久不変な岩や常緑樹の事を指し、転じて永久不変なことを指している言葉です。

諸行無常のように、変わらないものなどないという考えが強い茶の湯の世界でも、どうか平和や安寧が不変であるよう願いを込めた銘と言えます。

慶雲(けいうん)

慶雲は、一般的に彩雲(さいうん)と呼ばれるもので、太陽の近くを通りかかった雲が、緑や赤に彩られる現象のことを言います。

日本では、この現象がめでたいことの起こる前兆と考えられていることにあやかって、茶席に集う人々にもめでたいことが起こるよう願いが込められている銘です。瑞雲 (ずいうん) とも言います。

好日(こうじつ)

好日は、映画でも一躍有名となった「日日是好日」という禅語から取った一語です。

良い日も悪い日も一日一日が大切な日で、今日こうして茶席に集えることに感謝を込めた銘と言えます。

また、安らかに過ごせるよい日になるようにという願いも込められています。

千年翠(せんねんのみどり)

千年翠は、移りゆく世の中で、年月や季節に左右されずに常に美しい緑を保つ松をたたえた「松樹(寿)千年翠(緑)」という言葉から取った一語です。

不変をたたえる一方で、人間の目にはわからないレベルで、着実に変化を繰り返しているからこそ永く美しいのだという逆説的な意味があるのが面白い銘と言えます。

寿老(じゅろう)

引用元:滋賀県立琵琶湖文化館

寿老とは、命が長いことや長生きの人を表す言葉で、健康長寿を願いもちいられる銘です。

日本の七福神に寿老人という、頭が長く酒好きの長寿の神がおかれているほど、ありがたい銘でもあります。

和敬清寂(わけいせいじゃく)

和敬清寂は、茶道の心得を示す言葉としても良く知られている言葉です。

主人と賓客、茶席に集う人々が、お互いを気遣い敬いながら、お道具から心持ちまで、全体を清浄にすることを意味します。

知足(ちそく)

引用元:中国語スクリプト 中国語学習と中国文化

知足は、「老子」の「足るを知る者は富む」から取った言葉で、自分にとって必要以上のものを求めないことを指しています。

欲を我慢をするのではなく、今置かれている環境を幸せに感じることができる心や考え方を身につけようという意味から、茶会を開けること、顔を合わせることに幸せを感じていることを表す銘と言えます。

無一物(むいちもつ

引用元:野村美術 / 神戸の掛軸製造・表装・表具専門メーカー

無一物とは、禅を知る上で必ず学ぶことになる「本来無一物」代表的な言葉です。

世の中に存在するあらゆるものも、本質的には何もないカラッポのようなものだから、いちいち執着する必要もないという少々難しく思えるような意味ですが、「とにかく心を捉われることなく、肩の力を抜いて、この場を楽しんでください」というニュアンスで用いるのもいいのです。

茶杓の銘一覧【季節・月別】

▼1月の茶杓の名

▼2月の茶杓の名

▼3月の茶杓の名

▼4月の茶杓の名

▼5月の茶杓の名

▼6月の茶杓の名

▼7月の茶杓の名

▼8月の茶杓の名

▼9月の茶杓の名

▼10月の茶杓の名

▼11月の茶杓の名

▼12月の茶杓の名

1月の茶杓の銘

睦月(むつき)

睦月は、1月を表す言葉ですが、「睦み合う」すなわち、「人が集まる、仲を深める」が語源となっていると言われています。

茶会もそのひとつですが、新年に普段合わない人たちとも顔を合わせることの多い新年に、改めて睦まじいお付き合いを願う意味が込められています。

芹(せり)

芹は、旧正月に食べる七草粥に使う、春の七草のひとつです。

密集して生え、競り(せり)合うように育つことから、競り勝つという意味も込めた縁起物として新年にふさわしい銘と言えます。

薺(なずな)

薺も春の七草のひとつで、七草粥では若葉を食べますが、白く可愛らしい花を咲かせる植物です。

「なでで汚れを落とす」という意味が込められているので、新春に改めて心身ともに清めてスタートさせるにはふさわしい銘と言えます。

仏の座(ほとけのざ)

仏の座は、正式名称を小鬼田平子(こおにたびらこ)という春の七草のひとつです。

名前からもわかる通り、仏さまがゆったりすわっている様子を意味するため、世界の安寧の願いを込めた銘になります。

菘(すずな)

菘は、現代ではカブのことを指した名前で、こちらも春の七草に入っています。

カブが、鈴の形に似ていることから、「神を呼ぶ鈴」として縁起物とされてきました。一年の節目に神を呼び込む銘と言えます。

蘿蔔(すずしろ)

蘿蔔は、大根のことを指しており、春の七草では若い葉の部分を食します。

大根の白さに「汚れなき純白さ」を重ねた蘿蔔は、新たなスタートを切る新年にふさわしい、清らかな銘と言えるでしょう。

福寿草(ふくじゅそう)

福寿草は、黄金色の花びらと名前がいかにもおめでたいということで、新年の花といわれ、またの名を「元日草」と言います。

幸福と長寿の願いを込めて、多くの人が集まる新年の茶席にふさわしい銘です。

熨斗(のし)

熨斗は、削いだアワビの肉を干して伸ばした祝い事の飾りを文様化したもので、縁起のいい吉祥模様とされています。

長寿をもたらすとされていたアワビを伸ばすことで「齢を延ばす」ことに通じるとされており、健康長寿を願う銘にはぴったりと言えます。

東雲(しののめ)

東雲は、開けゆく空の様子を表す言葉で、特に初東雲というと元旦の朝の空を意味します。

夜空が赤い光に照らされて段々と明るくなる空は非常に縁起も良く、新年にふさわしい銘のひとつといえます。

乾坤(けんこん)

乾坤とは、一般的に天と地、陰陽など対になるモノのことを指しますが、転じて人界や、天下の意味を表すこともあります。

茶道では、天地の間にある国家の安泰や人々の平安の願いを込めて、新たな一年の始まりに用いられるのにふさわしいと言えるでしょう。

2月の茶杓の銘

如月(きさらぎ)

如月は、厳しくなる寒さに備えて重ね着をする「衣更着(きさらぎ)」、 一方で草木が生えはじめる様子から「生更木(きさらぎ)」が語源になっていると言われています。

寒い中にもわずかながら春の訪れがみえ、豊かな変化を感じられる銘といえます。

鶯(うぐいす)

鶯は、日本の春の訪れを象徴する鳥といっても過言ではないほど、日本人になじみのある鳥です。

特徴的な鳴き声とともに、「うぐいす色」が美しく可愛らしい様子はモチーフとしても人気が高く、寒い季節にも生きものの温もりが感じられる銘といえます。

梅(うめ)

梅は、数ある花のなかでも、早春に真っ先に花を咲かせることから、古くから早春の象徴として親しまれています。

春がもうすぐそこに来ていると予感させる銘は、まだ寒さが残る季節にこそ使いたいものです。

春霞(はるがすみ)

春霞は、春の山野がさまざまな要因によりぼんやりと霞んで見える様子のことをさします。

段々と緑になる山々や、残雪残る風景に霞がたなびき、どこかほんわかと温かみを帯びてきた春の気配を表した銘です。

蕗薹(ふきのとう)

蕗の薹は、山菜の中でも真っ先に雪の下から顔を出すものとして有名で、その生命力の強さから縁起がいいとされてきました。

雪を割って出てくる淡い緑色がまさに春の訪れを象徴しており、陽射しうららかな茶席に似合う銘でしょう。

椿(つばき)

椿は、古くから多くの和歌や俳句にも読まれ、絵や着物のモチーフとしても長く日本人に親しまれてきている花のひとつです。

特に、将軍や大名が好んで育てていた花ということもあり、多くの人に親しみがありながらも格調高い銘といえます。

初午(はつうま)

初午とは、二月の最初の午の日のことで、稲荷神社の祭礼でもあります。また、この日に合わせて芝居が行われるという風習も残っています。

二月の最初の丑の日あたりに行うお茶会では、もっともふさわしい銘と言えるでしょう。

節分(せつぶん)

節分は、立春の前日に鬼を追い払うことで厄災を払おうとした年中行事のひとつ。

長い冬の厄を一切払い落として、新たな気持ちで春を迎えようという清々しい銘です。

残雪(ざんせつ)

残雪は、春になっても庭の隅や木の陰で溶け残っている雪のことを言います。

冬の名残を惜しみながらも、春の陽に照らされて光る様子もまた美しいと感じる、なんとも日本人らしい銘のひとつです。

早春(そうしゅん)

早春は、まだ寒さが残る季節ではありながらも、景色の中に春の気配が見え始めてきたころのことを指します。

四季の移ろいのなかにある、さらに細かい変化まで楽しむ心が表現された銘と言えるでしょう。

3月の茶杓の銘

弥生(やよい)

弥生は、草木がどんどんと生えてくる様子「いやがうえにも生いる」から派生した3月を表す言葉です。

まさに植物が待っていたかのように次々生えてくるという生命力に溢れる銘なので、春の始まりにぴったりでしょう。

海松(みる)

引用元:バイオウェザーサービス

海松は、今では知らない人の方が多いと思いますが、古くは朝廷にも献納されていた岩礁に生息する海藻です。

松葉のように枝分かれし、末広がりに生える様子も縁起がいいため、文様にも使われた格式高い植物なので、少しかしこまった茶席にも使える銘でしょう。

桃(もも)

桃は、中国では古くから邪気を払う霊力のあるものとして大切にされてきました。

可愛らしい濃い桃色の春らしさに加えて、集う方々の邪気払いの願いも込めて用いるといいでしょう。

佐保姫(さおひめ)

佐保姫は、奈良の佐保山一帯にいるとされている、春の野山の美しさを司るとされている女神のことを言います。

非常に華やかさのある銘なので、茶席に女神が来てくださることを願って使うと良いでしょう。

若草(わかくさ)

若草は、目を出して間もない、柔らかくみずみずしい草のことを言います。

鮮やかで生命力あふれる草にあやかり、これから来る夏に向けて背筋を伸ばしたくなる銘です。

若鮎(わかあゆ)

若鮎とは、海で育った小さな鮎が、群れをなして川を上ってくる頃の鮎を指します。

まだ小さい体で、川の流れに逆らって懸命に上っていくようすが、日頃の姿勢を顧みる教訓としても使える銘でしょう。

薇(ぜんまい)

薇は、春の山に生える山菜のひとつで、春を告げるとも言われている。

白い綿毛のような頭も可愛らしく、優し気のある春の訪れを感じられる銘と言えるでしょう。

早蕨(さわらび)

早蕨は、わらびのなかでも特に頭を出したばかりの小さいものを指し、古くから文様にも使われていたなじみ深いものです。

まだ頭を出したばかりの早蕨になぞらえ、これからの発展や成長に期待を込めた銘として使うのがいいでしょう。

長閑(のどか)

長閑は、まさに春の穏やかな様子を表す言葉で、日常でも使うことが多いのではないでしょうか?

のんびりと暖かく心地いい様子に、穏やかで安らぎある日々を願って用いるのがいいでしょう。

帰雁(きがん)

帰雁は、雁が日本で冬を越して、北へ戻っていく様子のことを言います。

何かと別れが多いこの季節に、別れを惜しむ気持ちや、行く先の無事、さらにはまた会える日を願って使うのもいいでしょう。

4月の茶杓の銘

卯月(うづき)

卯月は、読んで字のごとく、卯の花が咲く旧暦の4月の頃を指した言葉です。

また、稲を植(う)える月から来ているという説もあり、現代では新年度が始めるタイミングでもあるので、新たなスタートにふさわしい銘と言えるでしょう。

桜(さくら)

桜は、いわずもがな日本の国花であり、日本人とは切っても切り離せない花と言えるでしょう。

桜の季節に用いるのも楽しいのですが、開花を待ちわびて、開花前に用いると茶席に早い春が訪れたようで喜ばれます。

春雨(はるさめ)

春雨は、春に降る細かく細い線のような柔らかい雨のことを指します。

雨の暗いイメージはなく、生えはじめた草木が喜んでいるかのような明るいイメージで、日々にこのような潤いがもたらされることを願って用いるといいでしょう。

藤(ふじ)

藤は、春がいよいよ盛り上がると咲く美しい紫色の花で、古来より多くの歌人にも愛されてきた花のひとつです。

高貴で魅力的な花を咲かせながらも生命力が強いため、美しく優雅な繁栄の願いも込めたい銘と言えます。

隅田川(すみだがわ)

隅田川は、古くから桜の名所とされ、美しい桜並木の下、さかんに花見が行われてきました。

桜、川、河岸の緑は日本の春を詰め込んだ美しさがあり、楽しい茶席にはぴったりの銘です。

柳(やなぎ)

柳は、柔らかに垂れた葉が風に揺れるようすが絵画のように美しいのが印象的です。

また、柳は繊細な枝はに反して強靭な根を張るので、根を張る・根付くという想いをかけるのも面白い使い方でしょう。

雲雀(ひばり)

雲雀は、「日晴り(ひばり)」から来てるとされ、春の晴れた日に飛び回る鳥です。

天高くのびのびと飛ぶ姿に、発展や成長の願いを込めて使うといいでしょう。

菜の花(なのはな)

菜の花は、鮮やかな黄色が眩しい花で、いまでも全国各地に菜の花畑が見られます。

また、花言葉が「小さな幸せ」でもあるので、日々の幸せを思って使うのもいいでしょう。

山桜(やまざくら)

山桜は、日本古来の桜と言われており、今では山に自生するものを山桜と呼ぶこともあります。

山奥でもたくましく根付き、美しい花を咲かせる桜は、新年度にふさわしい銘のひとつといえます。

青楓(あおかえで)

青楓は、楓の葉が、しっかりとした青葉になる手前、まだ柔らかいころのものを指します。

やわらかさやみずみずしさなどいくつになっても忘れたくない気持ちを込めて使うといいでしょう。

5月の茶杓の銘

皐月(さつき)

皐月は、現代だと六月頃になり、梅雨の真っただ中。そんななかでも端午の節句などで邪気払いをしようと務めた付きです。

梅雨の暗雲を吹き飛ばす願いを込めて用いるといいでしょう。

杜鵑(ほととぎす)

杜鵑は、三代将軍が比較のように詠んだことでも非常に有名な鳥です。

「ホトトギスが鳴くと夏が来る」と言われることから、来る季節を心待ちにした銘と言えるでしょう

薫風(くんぷう)

薫風は、初夏の木々や青葉の香りを含んだ穏やかな風のことを言います。

非常に清々しいイメージを持つ言葉なので、初夏の茶席に心地よい風を運んでくれることでしょう。

牡丹(ぼたん)

牡丹は、別名「花の王様」と呼ばれるほど豪華で美しい花です。

高貴でありながら非常に優雅な花を浮かべる銘は、茶席に潤いを加えてくれる効果があります。

杜若(かきつばた)

杜若は、日本に古くからあり、美しい水辺の風景には欠かせない花のひとつとされています。

万葉集にも読まれており、そのうちの作品から派生して「幸福が訪れる」象徴とも言われている花です。

菖蒲(あやめ)

菖蒲は、五月を象徴する花とも言われており、杜若など似た花の総称として使われることもあります。

「いずれアヤメかカキツバタ」という言葉があることから、甲乙つけがたい美しさや魅力を意味して用いるのもいいでしょう。

菖蒲刀(しょうぶがたな)

引用元:嵐山町web博物誌

菖蒲刀は、かつて端午の節句に、男の子が刀に見立てて菖蒲の葉を腰にさしていたものを表した飾りです。

邪気払いや、勝負強さ、健康の願いを込めた銘になります。

新緑(しんりょく)

新緑は、若葉が青々しさを一層増してきた様子を表しています。

みずみずしくも着実に色を濃くしていく様子に、成長や繁栄をかけて用いるといいでしょう。

五月雨(さみだれ)

五月雨は、梅雨時期に長く降り続く雨のことを言います。

人間には厄介な雨も、農作物の成長には欠かせないことから、人生の奥行きを表した銘と言えるでしょう。

水芭蕉(みずばしょう)

水芭蕉は、寒い地域の湿地に群生する白く大きな仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる葉が特徴的な花です。

この仏炎苞は、仏さまの背後にある飾りに似ていることから名がついたため、ありがたく神聖なシルエットでもあります。

6月の茶杓の銘

水無月(みなつき)

水無月の由来には諸説ありますが、田んぼに水を引く季節を指した言葉と言われています。

「水が無い」というよりは、いたるところに水が満ちた、豊かなイメージを持つ銘と言えるでしょう。

卯の花(うのはな)

卯の花は、ウツギという木の花のことを言います。

「卯の花腐し」という言葉は咲いていた卯の花を落とす長雨のことを意味し、梅雨を風流に表現しています。

青苔(せいたい)

青苔は、読んで字のごとく、青々と生した苔のことをさしています。

葉が強く色濃くなると、さらに青苔が生い茂り、風景はいっそう青々していく勢いを表現しています。

蛍(ほたる)

蛍は、現在は珍しい存在になりましたが、かつては日本のいたるところでよく見られました。

暗闇にほんわかと小さな光で漂う様子は、奥ゆかしくつつましい日本の美意識を表した銘と言えるでしょう。

花橘(はなたちばな)

花橘は、白く可憐に咲く橘の花を指した言葉です。

この銘は、花の可愛らしさと良い香りを連想させ、茶席に爽やかさをもたらしてくれるでしょう。

枇杷(びわ)

枇杷は、梅雨時期に実る比較的珍しい果物で、古来より日本人に親しまれてきた果樹のひとつです。

「庭に枇杷を植えるな」という言葉があるように、広く根を張るため、人間にとっては良い意味の銘と言えるでしょう。

二人静(ふたりしずか)

引用元:季節の花300

二人静は、2本の花序を能の演目にちなんで名づけられたとされており、小さな白い花を咲かせます。

寄り添うようには花を咲かせることから、末永いお付き合いや親愛を表現した銘と言えるでしょう。

早苗(さなえ)

早苗は、田んぼに植える直前の生命力あふれる稲の苗のことを言います。

まさにこれから広い世界で根を張り、厳しい環境で成長しようとするエネルギーにあやかりたい銘です。

早乙女(さおとめ)

早乙女とは、田植えをする若い女性のことを指した言葉です。

豊作を願い、食べものに困ることなく豊かな年を過ごせるようにと願いを込めた銘とも言えるでしょう。

蕗(ふき)

蕗は、春に咲く蕗の薹がさらに成長し葉を茂らせたもので、古くから食用にもしてきました。

読み方が「富貴」と同じく、富や尊さを表すありがたく縁起のいい植物と言われています。

7月の茶杓の銘

文月(ふづき)

文月は、かつて七夕の日に、書物を干す習慣があったことに由来すると言われています。

また、誰かを思い、文を書きたくなるという直接的な意味でも、とても風流な銘です。

七夕(たなばた)

七夕は、天の川を挟み、織姫と彦星が年に一度の逢瀬をする夜とされています。

年に一度の出会いに、茶席での出会いの尊さを重ねて使うのも良いでしょう。

白鷺(しらさぎ)

白鷺は、この時期に田んぼなどで見かける、とても頭の良い鳥です。

その美しい立ち姿から、古来より「神の使い」とされ、白鷺を祀った神社が全国各地にあります。

芹の花(せりのはな)

芹の花は、白い花が清廉さと高潔さを表すものと言われています。

さらに、競り(せり)勝つほどの生命力の強さから、縁起物としても愛されている植物です。

蝉(せみ)

蝉は、夏の盛りを象徴する虫と言ってもいいかもしれません。

何年も土の中で過ごし、地上に出てわずか一週間ほどで生涯を終える様に、この世の無常を重ねた銘と言えます。

蘭(らん)

蘭は、「花の女王」とも呼ばれるほど豪華で優雅な花で、見るものを魅了する力があります。

また「幸福をもたらす花」とも言われていることからも、縁起のいい銘と言えるでしょう。

玉虫(たまむし)

玉虫は、その美しい羽が古来より装身具や装飾品として用いられてきました。

また「玉」が宝や宝石を意味し、特に財運があがるとされ、人々に愛でられてきた虫です。

百合(ゆり)

百合の名は、大きな花が風に揺れてそよぐ様が美しいことに由来したと言われています。

女性は、百合の花が揺れるように歩く姿が美しいと言われていたほど、美の象徴にあった花です。

氷室(ひむろ)

氷室は、暑い夏に氷を貯蔵しておくための洞窟のことを言います。

暑い夏の茶席に涼を運ぶため、ぜひ使ってみたい銘のひとつです。

瓜(うり)

瓜は、古くより日本人にとても馴染みのあった野菜です。

見た目もつるんとみずみずしく、非常に水分の多い植物なので、夏場のうるおいに用いると喜ばれる銘でしょう。

8月の茶杓の銘

葉月(はづき)

葉月は、現代では夏の盛りですが、旧暦では秋の頃になるため、葉が色づき落ち始める様子を表したと言われています。

徐々に過ごしやすい気温になり、里山が色鮮やかに変化する様を楽しめる季節です。

飛瀑(ひばく)

飛瀑は、高いところから勢いよく流れ落ちる滝の様を指した言葉です。

残暑の暑さを紛らわす水の涼やかさと滝の力強さにあやかりたい銘と言えます。

空蝉(うつせみ)

空蝉は、蝉の抜け殻のことを言います。転じて、仏教ではこの世に生きる人間のことをこう表現することもあります。

蝉の儚さと人生の無常を重ねた、禅的な考えも落とし込まれた銘のひとつです。

秋海棠(しゅうかいどう)

引用元:ウェブガイド秩父

秋海棠は、夏の終わりから咲き始めるため、秋を告げる花と言われています。

鮮やかなピンク色の花が可愛らしく、庭や道端でも見ることができるため、昔から人々に親しみのある花です。

蓮(はす)

蓮は、水中から力強く鮮やかで豪華な花が咲く姿がとても高貴で美しいのが印象的です。

特に、仏教では「極楽に咲く花」とされているため、茶席ではとてもありがたい銘になります。

芙蓉(ふよう)

芙蓉は、美しい花を咲かせながら、1日で枯れてしまうため、その儚さが美しい女性のたとえにされてきました。

美の象徴であるため、秋の茶席に華やかさや儚い美しさをもたらしたい時に使うといいでしょう。

白菊(しらぎく)

白菊は、お葬式の花をイメージしてしまうかもしれませんが、国花とも言われるほど格式高い花です。

皇室の紋章にも使われていることから、格式高いお席でも遜色ない銘と言えるでしょう。

向日葵(ひまわり)

向日葵は、まさに盛夏を象徴する花と言えるでしょう。

鮮やかな黄色と青い空を連想させる銘は、茶席に明るさをもたらしてくれます。

木槿(むくげ)

木槿は、環境適応能力が高く、次々と花を咲かせる生命力に溢れる花です。

一方で、花自体は一日で枯れるという儚さも併せ持っているため、奥ゆかしさを感じる銘と言えるでしょう。

睡蓮(すいれん)

睡蓮は、日中に咲き、夕方には閉じる頃から、眠る(睡)花と名付けられたと言われています。

水面に静かに美しく咲き誇る花に、華やかさと心の落ち着きをあやかりたい銘です。

9月の茶杓の銘

長月(ながつき)

長月は、夏至を過ぎ、段々と夜が長くなってくる「夜長月」が省略したものと言われています。

まさに芸術を楽しむ秋を象徴する銘は、茶席にも積極的に取り入れたいです。

萩(はぎ)

萩は、秋を象徴する花のひとつで、絵画や文様など、秋のモチーフとしても多く取り入れられている花です。

万葉集で最も多く詠まれた花とも言われるほど、日本人の秋の風情には欠かすことができない花と言えるでしょう。

尾花(おばな)

 

尾花は、秋のモチーフとしても人気の高いススキの花の別名です。

お月見にも欠かせない植物で、秋の風に尾花が揺れる様子は、なんとも秋らしく趣のある光景です。

撫子(なでしこ)

撫子は、「やまとなでしこ」にも使われるように、日本の女性を象徴する言葉にも用いられている花です。

小ぶりで華美過ぎず、穏やかに美しく咲く様に、日本人の美意識を反映した銘と言えるでしょう。

葛(くず)

葛は、日当たりのよい山野などに自生する日本に古くからある秋の花で、根は葛粉や生薬としても使われてきました。

また、圧倒的な繁殖力を持つことから、子孫や家の繁栄の願いを込めて用いられることもある銘です。

女郎花(おみなえし)

女郎花は、小ぶりで可憐な花を咲かせますが、草丈は1m前後にもある秋の山野で見られる植物です。

風に揺れる姿が、儚く美しいことから古くは「美しい人」を意味する女郎という漢字が充てられたと言われています。

藤袴(ふじばかま)

藤袴は、花が咲くと長いめしべがフワフワとしている様子がユニークで可愛らしいとして人気があります。

小さなつぼみは一度に開花せず、およそ一週間かけて咲きそろうことから、そのいじらしさを愛おしんだり、物事をじっくり進める堅実さをかけた銘とも言えるでしょう

桔梗(ききょう)

桔梗は、古来から日本人に馴染み深く有名ですが、現在では絶滅危惧種に指定されるほど貴重な花となっています。

かつて桔梗を家紋にしていた戦国武将が勝利を多くおさめていたことから、勇ましく縁起のいいモチーフとして人気を博していた花です。

芒(すすき)

芒は、現在でも秋の風景に欠かせない植物で、秋の風景に芒を浮かべる人は非常に多いのではないでしょうか?

稲に見立てて豊作を願ったり、魔除けの力もあるとされていたりと、人々の切なる願いを多く受けてきた植物であるとも言えます。

鈴虫(すずむし)

鈴虫は、まさに秋の夜を知らせ、長い夜に鈴のような美しい音を添えてくれる存在です。

夏の蝉の力強い声から、秋の繊細な鈴虫の声に変わると、いよいよ夜の長い秋の訪れを感じられるという銘でしょう。

10月の茶杓の銘

神無月(かんなづき)

神無月は、一説には、日本中の神様が出雲大社に詣でるために、全国各地に神がいなくなることに由来していると言われています。

天候や豊作についての話し合いをすると言われいることから、結果がよりよいものになるよう願いを込めて茶席にも用いたい銘です。

蜻蛉(とんぼ)

見上げた空に蜻蛉が飛んでいると、いよいよ秋の空だと思うものです。

また「勝ち虫」という別名があるほど縁起がよく、前にしか飛ばない様からも多くの武将に好まれてきた虫でもあります。

砧(きぬた)

引用元:砧の伝承

砧とは、織物をたたいて艶を出すために使われた槌や、木や石でできた台のことを言います。

この作業は、特に農作業が終わった秋に多くの家々で盛んにおこなわれていたことから、砧打ちの音が秋の風物詩と言われているのです。

豊年(ほうねん)

豊年とは、作物が非常に豊かに実り、収穫が多いことや年を意味します。意味を強めた「豊年満作」という言葉もあります。

稲刈り前の茶席では、豊かな実りと豊かな心を願い、用いると縁起がいい銘でしょう。

稲(いね)

稲は、日本人にとって最も身近で、かつては税金代わりでもあった、生活に最も欠かすことのできない穀物です。

この収穫量によって暮らし向きが左右されていたことからも、日本人の積み上げてきた歴史や、稲への感謝の念が感じられる銘と言えるでしょう。

案山子(かかし)

案山子は、鳥獣の被害を防ぐために、田畑に建てられた人間に限りなく背格好を似せた人形です。

「見掛け倒し」など悪い意味で使われがちですが、実際には、大切な食料を鳥獣被害から必死に守ってくれているありがたい存在でもあります。

月見(つきみ)

月見は、十五夜にお団子や秋の作物、ススキなどをお供えし、月を鑑賞するという、日本に古くからある風習です。

春の花見の対にあるかのような秋の月見は、四季を楽しむ風流さが感じられる銘と言えます。

十六夜(いざよい)

十六夜とは、名のとおり、十五夜の次の夜のことをいいます。

名月と言われる翌日もまた月は美しいこと、さらには欠けていく月を名残惜しむという日本人の美意識が反映されている銘です。

残月(ざんげつ)

残月とは、またの名を「有明の月」ともいい、朝方空が明るくなってきてもまだ薄くぼんやりと残っている月のことを言います。

肌寒い秋の朝、物思いにふけって気付けば残月をながめていたというような風情のある光景が浮かびそうな銘です。

夜寒(よさむ)

夜寒とは、秋が深まり、いよいよ寒さが感じられるようになった夜のことをいいます。

日中との気温差も大きくなり、いよいよ冬の気配がそこまで近づいてきていることを表現した銘です。

11月の茶杓の銘

霜月(しもつき)

霜月は、まさに霜が降り始めるころの季節であることを示しています。

また茶道では、11月1日を炉開きの日に定めていた習慣があったため、大きな節目とも言えるでしょう。

雁(かり)

雁は、秋に北方からやってくる渡り鳥で、最初に来る雁を「初雁」とも言います。

寒空に飛来する雁たちの姿にはどこか哀愁もあり、とても絵画的な風景のひとつと言えるでしょう。

時雨(しぐれ)

時雨は、晴れていたかと思うと急に振り出しては、パタッと止むような、初冬に降る不安定な雨のことをいいます。

寒く冷たい雨ですが、赤や黄色に色づいた葉っぱが雨に濡れて見せてくれる美しさを楽しむ心の余裕を持っていたいものです。

網代(あじろ)

網代とは、木や竹などの植物で編んだものを板やカゴ状にして川に立て、漁の道具として使われていたものです。

主にアユの稚魚である氷魚を捕まえるために用いられていたことから、氷魚漁のシーズンである秋~冬の風物詩として使われるようになりました。

柴舟(しばふね)

柴船は、雪が積もる前に刈り取った柴を運ぶために使われた船のことを言います。

寒く厳しい冬のための支度を、せっせとする人々の様子や活気が感じられるような銘です。

紅葉狩(もみじがり)

紅葉狩りとは、春に桜を鑑賞するように、色とりどりに色づいた秋の木の葉を鑑賞して楽しむ風習を言います。

寒く、曇りがちな日も多い季節ですが、晴れた秋空を背にした木々は、感動するほど鮮やかで美しい光景です。

山茶花(さざんか)

山茶花は、秋から初冬にかけて咲く花で、童謡「たき火」の歌詞にもあるため、名前は知っているという人も多いのではないでしょうか?

赤や白、鮮やかな色の花をつけるため、彩りが寂しくなる初冬の頃にはひときわ目をひく花です。

銀杏(いちょう)

銀杏は、田舎だけでなく、都会でも並木道があるほど、黄金色の葉が美しい大木です。

非常に丈夫で、長生きすることから「長寿」の象徴としても使われる縁起のいい植物としても知られています。

都鳥(みやこどり)

都鳥は、冬になると干潟や海岸に渡ってくる鳥ですが、実は歌に詠まれていたものはユリカモメだったと言われています。

とはいえ現在ではユリカモメも含め、都鳥と呼んでいるという季節感がありがながらも少しユーモアのある銘です。

小春(こはる)

小春とは、春とありますが、初冬にたまに見られる暖かくまるで春の陽気に思える気候のことを言います。

寒い日が続く中に訪れる、太陽のあたたかさが伝わってくるような、ほのぼのとした銘と言えるでしょう。

12月の茶杓の銘

師走(しわす)

師走は、「師(僧侶など)が忙しく走り回る時期」すなわち年の瀬に当たる12月のことを言います。

普段はどんなに穏やかに過ごしている人でもこの時ばかりは走るようによく働き、今年をきっちりおさめ、来る新年に備えようという、どこかワクワクした思いも感じられる銘です。

鴛鴦(おしどり)

鴛鴦は、冬になると北からやってくる水鳥で、古くから縁起物としても好まれ、茶道具にも描かれることが多いモチーフです。

「おしどり夫婦」という言葉があるように、いつも寄り添い仲睦まじい姿は、寒い冬にほっこりとした温もりをもたらしてくれます。

寒牡丹(かんぼたん)

牡丹は、通常初夏に咲くですが、花芽を摘み取り、あえて冬に咲くようにしたものを寒牡丹と言います。

藁囲いをされ、真っ白な雪の中に咲く鮮やかな大輪は、牡丹の美しさを一層引き立て、彩り少ない冬の景色に華やかさをもたらしてくれます。

初霜(はつしも)

初霜は、その冬に初めて降りる霜のことを指します。

息が白くなる寒い朝に、びっしり降りた霜に朝日が射してキラキラと光る、寒い冬にしか見ることのできない美しい光景を思わせる銘です。

水仙(すいせん)

水仙は、寒い中でも美しい花を咲かせる姿が「水辺にある仙人」のようであることから名づけられたと言われている花です。

厳しい冬にも花を咲かせるたくましさもあり、縁起の良い花として、年末年始にふさわしい銘と言えるでしょう。

冬籠(ふゆごもり)

冬籠とは、寒さが厳しいころに、家や巣・地中などにもぐって、じっと過ごすことをいいます。

冬の寒さを引き立たせる一方で、暖かい場所での団らんや、冬仕事に精を出す姿なども浮かぶ、コントラストが楽しい銘です。

埋火(うずみび)

埋火とは、炉や火鉢の中で、灰をかぶせて温度調節をしたり、火種を長持ちさせている炭火のことをいいます。

暖房器具が不十分だった頃、人々は炭火を囲み、暖をとり会話を楽しんでいる光景がうかんでくる銘です。

神楽(かぐら)

神楽とは、神様にささげる歌や踊りのことで、いまも全国各地で受け継がれ、残されている伝統芸能のひとつです。

年末年始に演じられることも多く、寒い冬の空に雅楽の音色が響くと、思わず厳かで神聖な気持ちになります。

除夜の鐘(じょやのかね)

除夜の鐘は、大晦日の夜、新年を迎える直前に打たれる108回の鐘のことを言います。

煩悩の数とされる108回の鐘の音によって、汚れを落とし、清めた体で新年を迎えようという願いを込めて、銘に用いるといいでしょう。

大晦日(おおみそか)

大晦日は、一年を振り返りながらも、来る年の幸福を願い、備えるための日です。

一年を無事に過ごせたことの感謝や、新年の希望を込めて、その年の再度の茶席に用いるのもいいでしょう。

茶杓の銘まとめ

▼1月の茶杓の名

▼2月の茶杓の名

▼3月の茶杓の名

▼4月の茶杓の名

▼5月の茶杓の名

▼6月の茶杓の名

▼7月の茶杓の名

▼8月の茶杓の名

▼9月の茶杓の名

▼10月の茶杓の名

▼11月の茶杓の名

▼12月の茶杓の名

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