一字

「 一 」     禅語集 一字

「 一 」 いち

この「 一 」は数字ではあるが、単なる数字ではない。

存在する一切のものがそこから生れ、

またそこに帰るところの唯一絶対的ものを意味している。

 

万物の原始であり、かつ究極である宇宙の大生命を意味している。

仏教ではこの宇宙の大生命を意味する一を「如」とよび、

この如の人間に宿ったものを仏性と名付け、

特に禅ではこれを「父母未生以前における本来の面目」とか

「主人公」とか或いは「這箇 しゃこ」などと称している。

 

名称は異なるが、その実態は同じものである。

『老子道徳経』には、「天は一を得て以て清く、

地は一を得て以て寧く、

・・・万物は一を得て以て生じ、侯王は一を得て以て天下の正(政)を為す」

とある。たしかにそのとおりで、この一を得、これに基づかぬものは本物ではない。

 

そしてこれを拡大して、

「茶人はこの一を得て以て真の茶人となり、茶の湯はこの一を得て以て茶道となる」

といって、過言ではないであろう。

 

引用文献『 禅語の茶掛 一行物 』 芳賀幸四郎 著


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