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能と歌舞伎の違いとは?狂言・文楽・日本舞踊・人形浄瑠璃と格&時代の比較も

歌舞伎

能と歌舞伎と狂言の違い

日本の伝統芸能といえば、と問われて「能」や「歌舞伎」を挙げる方は多いことと思います。ですが、あまり馴染みがない方にとっては、詳しく答えるのは難しいかもしれません。

ある日、能や歌舞伎鑑賞に誘われて慌てて知識不足のまま出かけたり、外国の方から質問を受けて何も答えることができなかったりしたら、もったいないことですね。

そこで今回は

など歌舞伎とあらゆる日本の伝統芸能の違いについて詳しくご紹介します。

ちょっとした基本知識をおさえておくだけで、周りから一目置く存在になれるはずですよ。

能と歌舞伎の違いとは?

種類 時代 歴史・格 特徴 料金(税込)
※指定席
初心者への
おすすめ
演目・曲目
室町時代
に大成
武家社会の庇護を受け、
格式高いものとして様式化
能面をつけるか素顔で演じる。
表情や動作は「静」が基本
9,000~
15,000円
『高砂』
『清経』
『羽衣』など
歌舞伎 江戸時代
中期に
大成
大衆向け芸能として発展 喜怒哀楽の表情が大きく、
動作も大きい
4,000~
20,000円
『助六』
『勧進帳』
『暫』など

能について

創成時より権力者に庇護され、格式高い「式楽」として扱われてきた歴史があり、代々様式化された形を守り続けてきました。

演者は多くの役で面をつけますが、直面とよばれる素顔で演じる際も喜怒哀楽を露骨に出さないのがお約束。省略の美といわれるように、格式化された芸が確立されています。

歌舞伎について

引用元:Pinterest-日本

能より250年ほど後の江戸時代に大成され、大衆向け芸能として人気を得てきました。

回し舞台やせり上げといった舞台装置を開発するなど、観客を飽きさせない様々な工夫が凝らされ、能と比べて商業性が高いのが特徴です。

能と歌舞伎の共通点

歌舞伎は能の影響を強く受けて発展してきたため、いくつかの共通点があります。

まず、原則的に演者は男性に限られているということ。

さらに、歌舞伎には能の曲目を取り入れたものが多くあり、「松羽目物」とよばれる似たストーリーの演目が演じられている点です。

他に、歌舞伎は「花道」、能は「橋掛り」とよばれる、演者が登退場する通路が舞台に設けられている点も共通点のひとつといえるでしょう。

能・歌舞伎と日本の伝統芸能の時代や格の違いまとめ

能・歌舞伎と狂言の違いは?

引用元:Pinterest-日本

能と狂言を合わせたものを「能楽」とよび、通常セットで演じられます。

貴人のための格式高い式典として扱われてきたので、歌舞伎が大衆から高い人気を得ていた江戸時代に、庶民が能楽を観る機会はほとんどありませんでした。

能は面をつけて演じられることが多く、霊の魂を慰める話や悲劇が多いのが特徴。「~で候」という候文の言い回しが一般的です。

狂言は庶民の日常を題材にした喜劇で、直面(ひためん」という素顔で演じられます。「~でござる」という口語調なので、能に比べると理解しやすいでしょう。

対して歌舞伎は、古典歌舞伎、新歌舞伎、新作歌舞伎によって大きな違いが。古典は文語体が中心ですが、ときには現代語に書き換えられて演じられることもあります。

能・歌舞伎と文楽の違いは?

語りを担当する太夫と三味線で演じられる「浄瑠璃」に、人形遣いが人形を操る「人形芝居」が合体したものを「人形浄瑠璃」と呼び、さらに江戸時代に大阪で栄えた義太夫節で唄われる浄瑠璃を文楽と呼びます。

文楽の大きな特徴は、生身の人間の代わりに人形が芝居を演じること。太夫、三味線弾き、人形遣いの三業で成り立つ、三位一体の演芸です。

日本舞踊と歌舞伎・能の違いは?

日本舞踊は発祥から400年近くたちますが、そこから更に300年遡る時代に成立していた能の技法を継承しているほか、歌舞伎から発生した歌舞伎舞踊の流れも汲んでいます。

歌舞伎や能との違いを挙げるなら、女人禁制の能や歌舞伎と異なり、主に女性によって完成されていった歴史を持つ点といえるでしょう。

また、日本舞踊のうち、京都や大阪で発展したのが上方舞(地唄舞)。

料亭の座敷や貴族の屋敷など限定された狭い空間で舞を演じるのが特徴で、歌舞伎の所作から発展した歌舞伎舞踊とは異なり、ゆったりした情緒的な舞として受け継がれています。

能・歌舞伎と人形浄瑠璃の違いは?

引用元:Pinterest-日本

文楽以外の人形浄瑠璃も、江戸時代から現在まで受け継がれています。特に有名なのは、兵庫県の「淡路人形浄瑠璃」と徳島県の「阿波人形浄瑠璃」。

ともに野外で演じられることが多かったため、遠くからでも見やすいように、人形のサイズや首(かしら)が大きいのが特徴です。

また、淡路人形浄瑠璃では女性が活躍している点も、能や歌舞伎との大きな違いです。

能と歌舞伎の違いQ&A

能の安宅と歌舞伎の勧進帳の違いは?

引用元:Pinterest-日本

演目・曲目 主役 演出の特徴 見どころ その他
能「安宅」
(室町時代)
武蔵坊弁慶 源義経の家臣が多勢出演し、
集団の力を表現
弁慶が力づくで富樫と対決、
関を突破する緊迫感
表情や動作に抑揚を
つけない
歌舞伎
「勧進帳」
(江戸時代)
源義経 登場人物は少なめ。三味線の音にのせて
舞踊劇的に演じる
弁慶の行動に心打たれる
富樫の人情が描かれる
見得をきるなど
表情や動作が派手

能の曲目「安宅」と、歌舞伎の「勧進帳」。

弁慶が集団の力で関を突破しようとする前者に対し、弁慶の知略に心を打たれて、義経の正体に気づきながらも一行を逃す富樫の人情が描かれるのが大きな違いです。

外国人には能と歌舞伎どっちがおすすめ?

引用元:Pinterest-日本

種類 舞台構成 演出の特徴 見どころ その他 座席
床の四隅に柱と屋根をかけただけの
簡素化された舞台
演者は主に能面をつけ、
謡や舞、囃子を中心に物語が進む
能面や様式化された動きで
「幽玄美」を表現
文語体の台詞が
多い
舞台正面、斜め前の中正面、
真横の脇正面の3種類
歌舞伎 大掛かりな舞台装置や
仕掛けが多い
観客を飽きさせない見せ場づくりや
派手な演出。音楽も多彩
歌舞伎独特の化粧や所作で
浮世絵のような様式美を表現
文語体や現代口語等
台詞は様々
2~3階席や桟敷席など
様々な席が揃う

外国の方にとって、表情が読み取りづらく台詞が難解な能は理解しづらいかもしれませんが、独特の緊張感や現実離れした空間を味わえるのは能ならでは。

逆に、派手な舞台演出や内容のわかりやすさから選ぶなら、歌舞伎がおすすめです。

歌舞伎と能の楽器は違う?

種類 主に使われる楽器(道具) 使い方・特徴
歌舞伎 三味線 義太夫節では最も迫力に満ちた
音色を出す太棹を使用
大太鼓 自然界の音や幽霊が現れる際の
効果音などを表現
小鼓・大鼓・締太鼓 舞台に顔を見せて演奏する
「出囃子」も見どころ
三味線に合わせる際は篠笛、
効果音には能菅が使われる
金属製の打楽器。人物の心理や
情景描写などで使用
笛(能管) 独特の節回しをリズミカルに
力強く吹き鳴らす
小鼓・大鼓・太鼓 柔らかい音(小鼓)や
力強く高い音(大鼓)など

歌舞伎ではさまざまな楽器や小道具を、伴奏音楽や効果音に用いて舞台を盛り上げます。

能の楽器は笛、小鼓、大鼓、太鼓の4種類ですが、たまに太鼓が加わらない曲目も。

能と歌舞伎が共演することはある?

公演名 主な演目 上演場所 値段(税込) 公演時期
『古典芸能を未来へ~至高の芸と
継承者~ 能楽・歌舞伎・囃子』
能と歌舞伎による三響會版「石橋」、
狂言と歌舞伎による三響會版「三番叟」他
国立劇場
(東京)
8,000~
20,000円
2019年8月
『三響會特別公演』 能・歌舞伎・舞踊の演者による
トーク、素演奏、素踊り
石川県立
音楽堂(石川)
7,000円 2017年11月
『伝統芸能の今2014』 歌舞伎と狂言による「石橋」他 京都芸術劇場
(京都)など
6,000~
6,500円
(京都)
2014年5月

数年に一度と多くはありませんが、能と歌舞伎がコラボする公演が開催されています。

能と歌舞伎の囃子方をしている三響會が開催していることが多いので、興味がある方はぜひ一度鑑賞してみては。

⇒公式サイト三響會の情報を調べる

まとめ

種類 時代と大成者 テーマ 演出の特徴 初心者へのおすすめ
演目・曲目
室町時代に観阿弥・
世阿弥によって確立
古典文学や歴史上の
人物にまつわる悲劇
演者は能面をつけるか、直面で演じる。
謡(歌・台詞)と囃子(楽器)に合わせて演じる
『高砂』
『清経』
狂言 能と同時期 中世の庶民の日常を
明るく描いた喜劇
人間同士の会話劇がメイン。
口語的な台詞で親しみやすい
『棒縛』
『附子』
歌舞伎 江戸時代中期。坂田藤十郎や
市川團十郎など
武将の武勇伝や
庶民の色恋沙汰など
派手な衣装と化粧のほか、
大掛かりな舞台装置による演出
『助六』
『勧進帳』
人形浄瑠璃
(文楽)
江戸時代に竹本義太夫に
よって確立
歴史的な人物を題材にした時代物や、
江戸時代の世相を描いた世話物など
語りを担当する太夫、三味線、
人形遣いの「三業」による総合芸能
『国性爺合戦』
『菅原伝授手習鑑』
日本舞踊 江戸時代前期。
最も古い西川流は、
初代西川仙蔵が興す
歌舞伎舞踊など演劇性が強い踊りの
ほか、上方舞、創作舞踊など
日本の伝統的な舞と踊り。
三味線、鼓、笛などの楽器や唄ものに合わせる
『藤娘』
『京鹿子娘道成寺』

最も歴史が古い「能」の影響を色濃く受けながら、「歌舞伎」や「人形浄瑠璃文楽」「日本舞踊」は独自の文化を作り上げてきました。

武家社会に守られながら様式化された「能」に対して、大衆文化の中で商業的に発展してきたのが「歌舞伎」や「人形浄瑠璃文楽」です。

「日本舞踊」も、もとは歌舞伎から派生したもので、それぞれの伝統芸能に繋がりがあることがわかりますね。

演出やストーリー、楽器など、さまざまな伝統芸能を比較しながら鑑賞してみるのもおすすめです。

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