茶道の稽古を数年続けると、釜が欲しくなるというもの。
せっかく手に入れた釜の手入れを間違えると、
長持ちするはずの釜が痛むだけではなく、
点前に最適のお湯が沸かせなくなってしまいます。
釜は育てる、というように手入れひとつで
良い釜になっていくようです。
基本的な釜の手入れ方法を紹介しましょう。
茶道で使う釜の手入れ方法
茶道で使う茶釜は鉄でできています。
詳しくいうと銑鉄(せんてつ)で作られています。
鉄に炭素が含まれており、温度を上げると熔けて液体になります。
それを鋳造鋳型に流し込んで作る鋳造で釜が作られます。
水分、塩分や油分を帯びると錆びるのが鉄の特徴ですから、
お湯を沸かしたあとの手入れに注意する必要があるのです。
釜を扱うときは環を使って持ちましょう。
直接釜の表面に手が触れて脂が付かないように気をつけます。
釜の使用後は、灰や汚れを落とします。
釜の内部は布で水気を拭きますが、
タワシや磨き粉で磨いたりはしません。
鉄製のキャンプ道具などと違い、油を塗ることも厳禁です。
その後、火のない五徳などにかけて余熱で釜を乾かします。
特に電熱器のスイッチを入れたままの空炊きは
底を傷めるのでやめておきましょう。
最近では電熱器を使う人がとても増えています。
新しい釜を使い始める前に
現在でも鋳物作りで使われている所もありますが、
日本では炭と砂鉄を原料にした、
和銑(わずく)という製鉄法で釜が作られていました。
錆びにくい特徴があるのでお湯を沸かす道具として
重宝されてきました。
時代を経ると西洋の製鉄法(高炉)での
鉄の大量生産が可能になったのですが
錆びやすいものになりました。
そこで、錆びにくくするために焼き抜きといい、
釜の内側に酸化被膜を作ります。
800℃から900℃で1時間炭火で加熱して
錆びを防ぐ被膜を作ります。
一般に市販されているものや安価なものは、
この工程を省略しているので錆びやすくなります。
錆び止めに漆を塗っている場合がありますが、
これを新品の釜の使い始めにこすり落としてはいけません。
金物臭は何回かお湯をかけていくうちに取れていきます。
お湯を沸かし、水が少なくなったら足して
何度か水を替えて綺麗なお湯になるまで繰り返します。
IH製品の注意点
IHクッキングヒーター用に作られた鉄の釜や鉄瓶と、
通常の鉄製品の違いは底の厚みです。
鉄製品は厚みを持たさずに美しく仕上げられているので、
200Vの IHなどの高温での使用には不向きです。
歪みや変形の原因になるので注意します。
どうしても使いたい時はゆっくりと熱するようにしましょう。
釜の使用後の注意点
何度も繰り返しますが、釜はきちんと乾かさないと錆びます。
強い熱で乾かしすぎると傷みます。
伝熱器を使う時はスイッチを切って、
蓋を空けたまま置いておきます。
蓋は閉めないで保管する方が錆びを防ぐことができるので
是非やってみてください。
最初に述べたように、手の脂がつかないように
釜の両端にある鐶付(かんつき)に、かん(鐶)を通して、
上げ下ろしします。
下ろした釜は釜敷(かましき)に置きます。
釜置(かまおき)ともいいます。
釜の内側に錆が出たら?
ちょっとした錆びであれば、お茶を浸した布でこすり落とします。
その後、茶殻をお茶やダシ用のパックに入れて、煮詰めます。
色が黒くなったら火を止めて、数時間置いておきます。
鉄の成分とお茶のタンニンの黒い皮膜が釜の内部に付くので、
錆びを止める効果があります。
古くなった釜は手の施しようがない時もあるでしょう。
その時は専門店に相談します。
底の入れ替えといって、穴や腐食部分を取り、
新しい底を漆で取りつけて直します。
ちょっとした穴であれば漆と鉄を混ぜた鉄漆(かなうるし)
というものを焼きつけたりすることもあるので、
釜は長く使えます。
まとめ
釜は水と脂を残さない、空だきしない。
この2点を忘れないようにしましょう。
保管する時には箱詰めにしたり布で包んだりしません。
湿気を帯びやすいからです。
四隅に隅立を入れて固定します。
唐銅などの柔らかい金属の場合のみ、キズが付かないように
柔らかい、湿気のない布で包んで収納してください。
直射日光が当たり高温になる場所は避けて置いておきます。
釜は育てるもの。これをお忘れなく。
コメント
その道に入らんと思う心こそ…と
ご縁ありし踏み入れた道ながら
歩を進める度に疑問も芽をだします
折々に参考にさせて戴いて居ります
コメントありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします
初めてお目にかかります。
岡山で古美術商をしております。
この度は、アクセスしていただいた方から「電熱器はつかえるか?」
質問がございまて、いろいろ調べていくうちにこちらのサイトに
たどり着きました。
とても丁寧に詳細が書いてあり、安心して納得することができました。
そこで、こちらのサイトのアドレスを質問様の回答に使わせて
いただきましたので、後手後手になりましたが、ご報告までと思い、
コメントに記載させていただきました。
色々、勉強になります。
これからも、こちらで勉強させていただきます。
有難うございました。
こんにちは、返信が遅くなりました。
ご紹介頂いたようでありがとうございます。
今後ともどうぞよろしくお願い致します