和の習いごとでまず挙げられるのが、茶道と華道。
扱うものがお茶と花、という違いだけではなく、
根底に流れる精神性や心得に違いがあります。
一般的な茶道と華道のイメージと共に、
少し詳しく探ってみましょう。
茶道の心得は
和敬静寂。
この四文字に端的に表れています。
和は調和、茶の道をお互いに分かち合い、
楽しむことです。
敬は自らは謙虚に他者を敬い、自然を敬い、
先人達を敬うことです。
静は清ともいい、邪念の無い清らかな心や
清められた道具や茶室のことです。
寂は空や無といった、禅の究極の根本思想です。
この和敬静寂こそ茶道の基本的精神であり、
支柱となる心得なのです。
これを茶道の稽古を通じて求めていく修業が茶道です。
さらに、一期一会の精神の元、一度かぎりの茶席の
かけがえのなさを大切にすることも問われます。
以前に紹介した記事ではさらに詳しく述べていますので、ご覧になってくださいね。
華道の心得は
四季折々の樹・枝・草・花などを切って花器に挿して、
その美しさや命の尊さを表現し、観賞するものです。
人と同じ命のあるものとして草花を扱い、
その美しさを花器の上で表現するのです。
花を生ける時に命を感じ、心をみつめ、
理想とする美しさを花で表現することが華道の心得です。
元来、仏へ草花を供える供花から始まったものです。
室町時代の東山文化での書院造りの建築の床の間に、
決められた方法に従って飾られるようになりました。
茶道と華道の共通点は?
茶道では床の間の花入れ、掛け物などを拝見する時、
華道では床の間の花を拝見する時、
見方として、礼を尽くし、具の取り合わせや
それを整えた人のことへ思いを寄せます。
礼儀を重んじること、その場にある人を読むこと、
という点では共通する部分があります。
和の習いごと一般的に、礼儀作法が学べる、
という印象を持つ人が多いのも正座をしてお辞儀をする
基本姿勢が共通することからくるのかもしれません。
茶道と華道でもっとも違う点は?
茶道にあって、華道にはそれほど顕著にはないもの、
それはもてなしの精神です。
相手の状況を読み、あらかじめ念入りな準備をしながら、
自分の思いも投影する茶席は、
すべて一服の茶でもてなすために膨大な時間を使います。
対して、華道の精神は自分自身と向き合い、
その表現を花に託す極めて個人的な営みといえます。
茶道でも花を生けますが、美しく生けることよりも、
野にある自然の花のように季節と命を床の間に添えることを主眼としています。
習うなら茶道?華道?
反論を恐れずに言うと、茶道です。
これまで述べたように茶道の心得は、
修業と自己鍛錬による他者との心の交流です。
本来茶道は、礼儀作法を習いたいから茶道を、
という一般的認識とはかけ離れた厳しさを伴うものなのです。
禅僧が始めた茶道のルーツを見ても自明です。
とはいえ、やはり茶道の幅広い楽しみ方はかぎりがありません。
抹茶の深い味わいや美しい着物、すばらしい茶道具、
花、書、和建築。さらにお菓子、料理。
華やかな茶道の世界も、習ってみるとその深遠さに
自身の世界の狭さを恥じながらも感動を覚えます。
華道が芸術的センスが求められることを見てもわかるように
茶道と華道は同列に比べられるものではないのです。
ですから、和の習いごととしてひとくくりにせず、
目指す場所が全く違うものと認識したうえで、
習いごとを決めるのがよいと思います。
茶道にも華道にもそれぞれの魅力があり、目的も異なるので
じっくり検討して、楽しい習い事を続けてくださいね。
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