お茶席で茶入と茶杓と一緒に
拝見に出される仕覆(しふく)。
茶入れを始めとする薄茶器や
茶碗などの道具類を入れる袋です。
宗や元から伝わり、足利義満らの時代より
名物と言われる茶器に使われました。
その頃の仕覆は古代裂や名物裂(めいぶつぎれ)で
作られているのですが、
その美しい仕覆の種類を紹介します。
茶入の仕覆の種類
中国で織られた名物裂と呼ばれる
仕覆の主な種類をあげてみます。
- 金襴(きんらん)平箔(ひらはく)という漆を塗った紙に
金箔を置いて糸状に切ったものを織り込み、
文様を作っています。
金糸で文様を単色の生地に織りこみます。
縦縞や格子の生地に金糸を使う模様もあります。
大名物「円乗坊肩衝茶入」や「橋立茶入」などの
仕覆に用いられています。 - 緞子(どんす)
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)で
模様を織る絹の織物です。
光沢があって重量感があり、仕覆の中でも
格が高いものです。
名物の茶入によく使われる仕覆です。
大名物「油屋肩衝」「伊木肩衝茶入」
「珠光文琳茶入」「宗悟茄子茶入」
などに使われて有名です。 - 間道(かんどう) しま模様があります。縦縞、横縞、格子縞などがあり、
中国広東地方で作られた絹織物であったことから
この名がついたようです。
千利休が間道を茶入の仕覆に使ったのが
最初であるとされています。
大名物「志野丸壷」の仕覆として使われれる青木間道や、
大名物「朝倉文琳茶入」の朝倉間道などが有名です。 - 錦(にしき)
二色かそれ以上の色糸を使い、
一本の糸にして織ります。
金のような美しい織物として古くから重宝されてきました。
大名物「油屋肩衝茶入」に使われています。 - モール(莫臥爾)
桃山時代にペルシャやポルトガルから渡った織り物です。
回々織、毛宇留、毛織などとも書き、
元々は「mogol」というポルトガル語です。
金や銀などを絹の糸に巻き付けて、
文様を織り込み出したものです。
金モールや銀モールという分け方もあります。
今回は茶入の仕覆の裂について紹介していますが、
名物裂などについてはこちらのサイトでも紹介されていますので、
参考にしてください。
和美×茶比
茶道の裂地とは?柄や種類についてご紹介します
そもそも何のために裂地があった?
名物裂と呼ばれる高価な裂地は元々、
寺社の高僧たちが用いる袈裟(けさ)、帳(とばり)、
打敷(うちしき)として使われました。
また、能や猿楽の装束としても、大名を始めとする
武将たちの衣装としても大いに活用されてきました。
茶道ではこれまでに紹介したような茶入の仕覆や、
帛紗(ふくさ)として使われますし、
書画の表装、掛け軸にも使われたので、
より芸術的価値の高い美術品として鑑賞されるようになります。
特に、茶道では名物とされる茶入れに見合う付属品として、
裂地の価値も重要視されるようになります。
まとめ
金箔糸、銀箔糸で織り上げられ、大変豪華な金襴。
名物裂のうちでも最高位です。
茶入れだけでなく袈裟や能装束、表装裂などに用いられます。
先染めした経糸(たていと)と緯糸(ぬきいと)を用いて
文様を織り出した絹織物の緞子(どんす)。
渋くて深みがある色で、光沢と厚みが特徴です。
室町時代以降、縞模様、格子縞などの斬新な
模様が喜ばれた間道(かんとう)。
日本でも飛鳥、奈良時代より織られてきた錦(にしき)。
代表的なものに「蜀紅錦(しょっこうにしき)」
「いちご錦」などがあり、金襴よりも重厚な美しさが特徴です。
絹糸に金や銀を巻き付けて模様を出すモール。
南蛮貿易でもたらされた特徴ある織物です。
茶入れの仕覆にはそれぞれ特徴ある種類があり、
また日本の文化の歴史と深く関わっているのですね。
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