茶道では茶席が四畳半以上の広間において、道具畳に棚物を置き、
水指や茶器を置いて点前をすることがあります。
大棚、小棚、箪笥など、それぞれの千家の好み物があってその数は膨大です。
ここでは表千家の棚物を紹介します。
茶道で使う棚の種類 ~大棚~
畳に近い巾を持つ棚の総称です。
大徳寺の大応国師が中国から持ち帰ったと伝えられる棚の源となったものです。
・紹鴎棚(じょうおうだな)
武野紹鴎好みの炉用の大棚。
地袋にふすまがはめられ、四本柱に天板がのっています。
紹鴎袋棚(じょうおうふくろだな)とも言います。
砂張りの平水指などが合わせられます。
・袋棚(ふくろだな)
桐木地で違い棚の棚板があり、左下が倹飩蓋(けんどんぶた)の地袋、
右上が棚板で、脇板が香狭間透(こうざますかし)があります。
志野棚(しのだな)、利休袋棚(りきゅうふくろだな)、とも言います。
・葭棚(よしだな)
葭簀を張り竹で押えた、利休好みの杉木地の大棚です。
下部が吹貫となっていて、客付の柱に赤松の皮付丸太を用い
客付向隅に棚板が吊ってあります。
台目棚(だいめだな)、利休台目棚ともいいます。
台子
台子(だいす)は、天地二枚の板がある茶道具を飾る棚です。
台子は飾り方の決まりがあって、台子飾りといいます。
・真台子(しんだいす)
長方形の天板と地板を四本の柱で支えた、
黒塗の「真」の格の茶道具を飾る棚です。
・及台子(きゅうだいす)
「行」の台子といわれる二本柱の棚です。
朱手桶の水指などが合わせられます。
・竹台子
白竹の四本柱で、天板と地板ともに桐木地の棚です。
春慶塗の手桶水指や赤膚焼などが合わせられます。
・高麗台子
天板の下部に火焔形の幕板があります。
茶道で使う棚の種類 ~小棚~
大棚より小さい棚です。
置き棚は初めから棚の地板に水指を置いておき、
運び棚は点前の時に水指を運び出して棚の下に置きます。
台子系の四方棚(よほうだな)、高麗卓(こうらいじょく)、
袋棚系の水指棚(みずさしだな)、卓系の丸卓(まるじょく)、
山里棚(やまざとだな)、三重棚(さんじゅうだな)など多くあります。
・二重棚
四本柱で、天板、地板、中棚と四方の小棚です。
二重棚は、志野棚(利休袋棚)の右半分をもとにして好んだ棚です。
・四方棚(よほうだな)
桐木地の天板と地板が四方の二本柱で、
及台子を二分したものが元になっています。
天板の方が地板より大きな形状の小棚です。
高取焼の水指などが合わせられます。
・小四方棚(こよほうだな)
表千家十三世 即中斎(そくちゅうさい)無盡宗左(むじんそうさ)が好んだ棚です。
風炉、炉ともに用い、天板と地板が丸隅です。
四方の二本柱で、天板の方が地板より大きな形です。
末広水指などが合わせられます。
・三重棚(さんじゅうだな)
杉木地の四本柱、地板の上に棚板が三段に重なって、
地板の四隅に足がついています。 二重棚のもとになっています。
水屋で道具を載せていた棚であったのを用いたのだそうです。
・好文棚(こうぶんだな)
表千家十二世惺斎(せいさい)敬翁宗左(けいおうそうさ)が好んだ棚です。
二重棚の変形で梅型の透かし彫りがあることから、
梅の別名好文からこの名がつきました。
地板は五角形になった形の小棚です。
膳所焼などの水指が合わせられます。
・抱清棚(ほうせいだな)
桐木地の二重棚で左右の板がえぐられ、正面の板には香狭間の透かし彫り
があります。
地板がなく水指を板が抱くような形ということからこの名があります。
中板を取り外し、芝点(しばだて)もできます。
表千家十世 吸江斎(きゅうこうさい)、が好んでいます。
萩焼などの水指が合わせられます。
・三木町棚(みきまちだな)、江岑棚(こうしんだな)
表千家四世 逢源斎(ほうげんさい)江岑宗左(こうしんそうさ)が、
紀州和歌山城下の三木町にて、紀州徳川家に仕えてい際に好んだ棚で、
江岑棚ともいいます。
杉、檜、樅材で作られ、引出しには竹のつまみ、底に足があります。
織部の水指や染付の岩竹水指などが合わせられます。
・糸巻棚(いとまきだな)
糸巻二重棚とも言い、地板を取り外して運び水指ができるようになっています。
四本柱の二重棚で、中板の辺を弓形に削り、糸巻の形にしてあります。
表千家十一世 碌々斎(ろくろくさい)瑞翁宗左(ずいおうそうさ)
十二世惺斎(せいさい)敬翁宗左(けいおうそうさ)が杉木地で好みです。
美濃焼などの水指が合わせられます。
・木屋町棚(きやまちだな)
三本柱で天板と中板は三角形、香狭間透かしのある脇板があります。
三角形のひきだしがあり、地板は五角形になったています。
木屋町棚は表千家十一世碌々斎(ろくろくさい)
瑞翁宗左(ずいおうそうさ)が好みました。
黄瀬戸の水指などが合わせられます。
・丸卓(まるじょく)
天地板が丸い二本柱の小棚です。炉・風炉で使われます。
中国から伝えられた飾り棚である「卓」を棚物として使いました。
利休好みは、桐木地で、地板の裏には低い三つの足がついています。
宗旦好みの丸卓には足はありません。
京焼などの染付水指などが合わせられます。
・桑小卓(くわこじょく)
桑木地の四本柱で細長い小棚です。天板と中板が同じ大きさで
地板がやや大きく、中棚が低い位置にあります。
表千家十世吸江斎(きゆうこうさい)が桐木地で好み、桐小卓ともいいます。
清水焼などの染付の水指が合わせられます。
・蓬莱卓(ほうらいじょく)
四本柱の二重棚で天板、中板、地板が六角の亀甲形です。
柱が曲がっていて、地板と柱に朱の線が入っています。
表千家十三世 即中斎(そくちゅうさい)が還暦記念に好んだ棚で、
棚が亀甲形の亀、曲がった柱に朱の線で鶴を表していて、
鶴亀吉祥としてこの名があります。
・扇棚(おうぎだな)
桐木地の三本柱で、天地板が扇面形です。
扇の要にあたる場所にある向柱に壺々透かしが入っています。
表千家十三世即中斎(そくちゅうさい)無盡宗左(むじんそうさ)と、
十四世淡々斎(たんたんさい碩叟宗室(せきそうそうしつ)が好んだ棚です。
・高麗卓(こうらいじょく)
高麗台子を横半分にした、四本柱の小棚です。
桶川水指などが合わせられます。
・水指棚(みずさしだな)
水の形を表している曲線の中板が上方に付いて、両側に中棚から上には小形、
下には大形の香狭間透かしのある板がついています。
武野紹鴎好みの小棚で、炉、風炉に用います。
紹鴎水指棚(じょうおうみずさしだな)ともいいます。
・旅卓(たびじょく)
三方を板で囲まれて正面の板に香狭間透かしがあります。
両側の板の前が弓形に削られ、中板が手前に丸く出ています。
表千家十三世即中斎(そくちゅうさい無盡宗左(むじんそうさ)が好み、
折りたたんで持ち運べることからこの名があります。
末広水指などが合わせられます。
◎水指について詳しく書かれている記事がありますので
こちらを参考にしてみてくださいね。
和比×茶美
茶道で使う水指とはどんなもの?
主な棚の種類を挙げてみましたが、まだまだ他にもたくさんの棚があります。
飾り付けの決まりも棚によって違うので、覚えることがたくさんですが
棚と道具の取り合わせを見るのは本当に楽しいものです。
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