お茶席では、よく禅語に出会う機会に恵まれます。
奥が深い上に数の多い禅語ですが、人生の悩みを解決する手段や生き方を考えさせてくれる先人の教えでもあるんです。
いざというときに恥ずかしい思いをしないよう、前もって意味を把握しておきたいですよね。
今回は夏に使いたい「行雲流水」の意味や例文をご紹介します。
茶道だけでなく励ましの言葉としても使えますので、ぜひ日常生活にも役立ててくださいね。
行雲流水の意味・読み方とは|わかりやすく&簡単に
読み方 | こううんりゅうすい |
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意味 | 物事に執着せず、自然の成り行きに身を任せること |
まずは漢字の並びからイメージしてみましょう。
風に乗ってどこまでも行く雲と、絶えることなく流れる水が思い浮かんだのではないでしょうか?
漢字の通り、雲が空を行き、水が川を流れていく自然現象を表す言葉です。転じて、物事に執着せず、何にも逆らわず、自然の成り行きに心を任せるという意味も持ちます。
略して「雲水」、前後を逆にして「流水行雲」と言うこともありますが、行雲流水を使うのが一般的。雲水は修行行脚する禅僧の通称でもあります。
行雲流水の由来は?
出典 | 謝民師推官与書 |
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著者 | 蘇軾(そしょく) |
行雲流水は中国から来た四字熟語です。
約1000年前の11世紀、宋の時代に蘇軾という文章家が記した「謝民師推官与書」という書物の中によい文章を書くための心得として書かれています。
所示書教及詩賦雜文,觀之熟矣。大略如行雲流水,初無定質,但常行於所當行,常止於不可不止,文理自然,姿態橫生。引用元:謝民師推官与書より一部抜粋
「文章は雲や水のようなもので、最初から形が決まっているわけではないし、自然の流れに任せて、筆が進むなら進ませればよい」というような意味です。
行雲流水の心とは?
一般 | 細かいことは気にしない ありのままを受け入れる |
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茶道 | 起こったことに柔軟に対処していくようにという心構え |
禅 | 輪廻、死や老いを受け入れる |
行雲流水は決して「自由奔放に行動することがよい」と言っているわけではありません。
一般には細かいことは気にしない、ありのままを受け入れるという意味で使われることが多いです。
茶道では、山や岩にぶつかっても形を変えてするすると動いていく雲や水のように、起きたことにも柔らかく対処していく心構えを示すこともあります。
雲は山にぶつかり雨として降り注ぐと、川を流れて海にたどり着き、水蒸気となって再び空を行く…。水の循環を魂の巡りに重ね、禅では輪廻という解釈も。
さらに、恐いものと考えがちな死や老いを自然の流れだと受け入れて、気持ちよく年を取っていく道理を説いているという考えもあります。
同じ行雲流水という言葉でも、それぞれの立場や見方によってとらえ方が変わってくるなんて、面白いですね。
▼1分で行雲流水を解説しています
行雲流水の例文・使い方
例文として一番多く聞くのは「行雲流水、人生は旅なり」ではないでしょうか。人生は一定の形にとらわれず、気の向くままに歩む旅のようなものだ、という意味です。
お茶のお稽古だけでなく普段の会話でも、行雲流水は肯定的でポジティブな意味合いで使用できますよ。
- 今までたくさん準備してきたじゃないか。やれることはやった。あとは行雲流水さ。
- 意見がぶつかるときもある。行雲流水で、少し時間を置いたらどう?
- 小さなことにくよくよしてないで、行雲流水のように考えてみよう。
行き詰っている人や生き急いでいる人に対して励ます意味で使ってみましょう。自然体で気楽に行こう、と伝えられますよ。
行雲流水と似た四字熟語・類義語は?
類義語 | 雲遊萍寄、雲烟過眼、天衣無縫、虚心坦懐 |
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物事に執着せずに自然に任せて行動するという意味では、「雲遊萍寄(うんゆうへいき)」が一番近い類語です。
他にも、物事に深く執着しないという意味では「雲烟過眼(うんえんかがん)」、自然でありのままの姿という意味では「天衣無縫(てんいむほう)」が挙げられます。
「虚心坦懐(きょしんたんかい)」には、流れに身を任せるという受動的ニュアンスは入っていませんが、先入観を持たずに物事に取り組む姿勢や心を表す言葉です。
行雲流水は座右の銘におすすめ
空に浮かぶ雲を眺めて、あんな風に自由に生きれたら…と思ったことがあるかもしれません。
執着せず、ありのままを受け入れるという意味のある「行雲流水」は掛け軸にも使われ、座右の銘として挙げる方も多い言葉です。
些細なことにくよくよせず、気の向くまま生きようという決意を禅語で表すのも素敵ですね。
行雲流水は英語で何という?
英語 | Let it be(なすがまま) Let it go(あるがまま) |
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行雲流水をそのまま英訳すると、「Moving clouds and flowing water」となります。これでは裏に込められた深い意味が伝わりません。
多少の意訳も入ってしまいますが、「Let it be」「Let it go」と意味を訳せば伝わりやすいですね。
▼行雲流水のようにあるがままを受け入れる曲です
行雲流水の生き方とは
とらわれず、抗わず、とどまらず。雲や流れる水のように、自由に形を変え、何にも執着せず、日常の喧騒からも離れて、流れに身を任せる生き方は、まさに「行雲流水」な生き方と言えます。
「自由に生きよう」「執着を捨てよう」と思っても現実には難しいですが、日常生活の中でも「行雲流水」を意識することは可能です。
何か壁にぶつかったとき、人間関係に疲れたとき、「行雲流水」を思い出してみてください。なるようになるさと考えられれば、少し気持ちが楽になることもあります。
身軽で自然体、肩ひじを張らず、リラックスした毎日の一歩となるかもしれません。
まとめ
▼行雲流水の概要まとめ
読み方 | こううんりゅうすい |
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意味 | 物事に執着せず、自然の成り行きに身を任せること |
出典 | 謝民師推官与書 |
心 | 細かいことは気にしない ありのままを受け入れる |
類義語 | 雲遊萍寄、雲烟過眼、天衣無縫、虚心坦懐 |
英語 | Let it be(なすがまま) Let it go(あるがまま) |
今回は「行雲流水」の意味を使い方と併せてご紹介しました。
茶道のお稽古だけでなく、座右の銘や日常会話でも使われます。仏法にも通じる、人間の生き方を説く深い意味のある禅語なので、頑張りすぎて少し疲れた時、気分転換に思い出してみてもいいですね。
次回もたくさんある禅語の中から、心に響く言葉を紹介していきますのでお楽しみに!
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