1000年以上前から時代を超えて愛され続けた音楽であり、日本の大切な伝統芸能の一つである「雅楽」。
しかし儀式や祭典時にしかお目にかかれず、あまり馴染みがないという方も多いのではないでしょうか。
ある日突然雅楽を鑑賞する機会が訪れた時、雅楽について教えてほしいと尋ねられた時に知識不足でなにもわからないというのは避けたいものです。
そこで今回は雅楽の歴史や魅力について簡単・わかりやすくまとめました。
少しでも知識を持っておくことで、雅楽の世界観をより深く楽しむことができますよ。
鑑賞時のポイントもぎゅっと詰まっているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
雅楽とは|簡単に【中学生も分かる】
雅楽とは日本固有の歌舞と大陸から伝わった音楽文化が融合してできた古典音楽です。
1000年以上前から伝承された世界で最古の音楽文化として、国の重要無形文化財にもなっています。
現代では神社やお寺の祭典や結婚式などでも演奏されており、耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか?
雅楽の読み方・意味は?
雅楽の正しい読み方は「ががく」で、「雅正の楽舞」という意味をもちます。
民衆の音楽である「俗楽」とは相反する、正統な音楽としてこの名がつけられました。
雅楽の神聖な雰囲気にぴったりの呼称ですね。
雅楽の特徴とは|種類は
現代曲にも器楽曲や歌曲などの分類があるように、雅楽の中にも下記のような3種の演奏スタイルがあります。
楽器演奏にダンスや歌を合わせて音楽をより楽しもうという気持ちは、今も昔も変わらないようですね。
大きく分けると上記の3種類ですが、ここから外来の演目か日本固有の演目かによって大きな違いが見られます。
次はそれぞれの使用楽器や、演目の種類などにスポットを当てて紹介していきます。
管絃
管絃は楽器のみの演奏スタイルです。
弦・管・打楽器の3種類の楽器を用いるオーケストラと同じ編成となっています。
そのため雅楽は「世界最古のオーケストラ」とされ、現代の「管弦楽」という言葉の由来にも繋がっています。
管絃で使用される楽器は下記の通り。
吹き物(管楽器) | 笙・篳篥・龍笛 |
---|---|
弾き物(弦楽器) | 箏・琵琶 |
打ち物(打楽器) | 鞨鼓・太鼓・鉦鼓 |
現在では基本的に弦楽器が2人ずつ、管楽器が3人ずつ、打楽器1人の16人編成がよくみられます。
舞楽
舞楽は管絃を伴奏に舞を演じるスタイルです。
舞楽にも種類があり、日本古来の舞である「国風歌舞(くにぶりのうたまい)」と外来の舞である「右方の舞」「左方の舞」に分けられています。
それぞれの違いや特徴を下記の表にまとめました。
右方の舞 | 朝鮮半島より伝来した「高麗楽」が伴奏に用いられる 舞人は赤の装束を身に付ける 舞台の右側から登壇する 伴奏には篳篥・高麗笛・三の鼓・太鼓・鉦鼓を使用 |
---|---|
左方の舞 | 中国より伝来した「唐楽」が伴奏に用いられる 舞人は緑の装束を身に付ける 舞台の左側から登壇する 伴奏には篳篥・笙・龍笛・太鼓・鉦鼓を使用 |
国風歌舞 | 日本古来より伝わる歌舞 衣装・舞の振り・伴奏が質素ですっきりとしている 皇室や神社の祭礼などで演奏される特別な歌舞 |
衣装や使用楽器や舞人の動きを観察することで、どの種の舞楽なのかを簡単に見分けることができますので、着目してみてくださいね。
歌謡
歌謡は雅楽の楽曲を伴奏につけた声楽曲です。
日本各地に伝わる民謡を歌うものを「催馬楽(さいばら)」、中国の漢詩文に節をつけて歌うものを「朗詠(ろうえい)」といいます。
催馬楽では管・絃・打楽器が用いられる一方、朗詠は管楽器のみなど伴奏にも大きな違いが見られます。
催馬楽の使用楽器 | 管楽器 | 笙・篳篥・龍笛 |
---|---|---|
絃楽器 | 琵琶・箏 | |
打楽器 | 笏拍子 | |
朗詠の使用楽器 | 管楽器のみ | 笙・篳篥・龍笛 |
雅楽の楽器の種類とは
演目ごとに楽器の編成が異なるのも、雅楽鑑賞時の大きなポイントです。
ここからは頻繁に使用される雅楽器を紹介します。
雅楽の楽器 | 特徴 |
---|---|
笙 | 和音で曲を華やかにする |
笛(龍笛・高麗笛・神楽笛) | 主旋律に彩りを添える |
太鼓 | 曲の節目を目立たせる |
篳篥 | 主旋律を担当 |
琵琶 | リズムを刻む |
曲のテンポや流れを作る | |
鉦鼓 | 唯一金属製の打楽器 |
和琴 | 日本最古の弦楽器 |
鞨鼓・三の鼓 | 指揮者の役割 |
笙
笙(しょう)は雅楽器の中で、唯一和音を奏でられる楽器です。
頭というお椀型の部分に、17本の竹管が差し込まれた構造となっています。
その外観は、鳳凰が羽を休めているように見えるため、「鳳笙」という別名を持ちます。
音色は高く澄んでおり、天から差し込む光に例えられるほどの美しさです。
笛(龍笛・高麗笛・神楽笛)
龍笛(りゅうてき)・神楽笛(かぐらぶえ)・高麗笛(こまぶえ)などの横笛は、主旋律を装飾し支える役割を担っています。
主に唐楽に用いられる横笛です。
広い音域と力強さを持った音色は、古来より「龍の鳴き声」に例えられることも。
そのため、天を現す笙と地を表す篳篥と合わせて演奏することで、1つの宇宙を表現したとされています。
日本古来の笛で、神楽歌を奏す際に用いられます。
横笛の中で最も長く太い造りとなっており、音域も比較的低いものとなっています。
日本古来より伝わる笛で、日本書紀にも登場しています。
朝鮮半島から日本に伝来した横笛で、主に高麗楽を奏する際に用いられます。
神楽笛に反して細く短い造りで、高く鋭い音色が特徴的です。狛笛と表記されることもあります。
太鼓
雅楽で用いる太鼓は2種類あり、管絃と舞楽で異なります。
管絃で用いるものは「楽太鼓(がくだいこ)」というもので、円形の枠に吊るして使用することから「釣太鼓(つりだいこ)」とも呼ばれています。
舞楽では、楽太鼓よりも大きい「鼉太鼓(だだいこ)」が用いられます。
舞台の左右に1台ずつ置かれる2台一体の太鼓です。
太鼓の周りに、火焔の装飾はされていることから「火焔太鼓(かえんだいこ)」という別名でも知られています。
篳篥
篳篥(ひちりき)は、主旋律を担当することが多い楽器です。
中国から伝来した楽器ですが、日本古来の楽曲にも多く登場するほど魅力的な音色の持ち主。
人の声に近い音域であることから、古来より「地や人を表現する楽器」として雅楽に取り入れられています。
長さは約18cmと小さいですが、音量は非常に大きく豊かな響きで観客を魅了します。
琵琶
琵琶にはたくさんの種類がありますが、雅楽で用いられるのは「楽琵琶」と呼ばれるもので和音や単音でリズムを刻む役割を担います。
楽座という胡坐のような体制で楽器を構え、バチで弦をなでるように演奏します。
箏
雅楽では「楽箏(がくそう)」という、現代の箏より絃が太いものを奏します。
楽箏は琵琶と同じ、曲のリズムを決める役です。
ゆっくりと奏する閑掻(しずがき)、早く奏する早掻(はやがき)などの、演奏パターンを組み合わせて曲の流れを作っています。
鉦鼓
鉦鼓は雅楽打楽器の中で唯一金属製で、高めの鋭い音が印象的です。
直径15cmほどの円形の青銅を2本の桴で打って演奏します。
管絃の演奏には、「釣鉦鼓(つりしょうこ)」という円形の枠に吊り下げたものを、舞楽の演奏には一回り大きい「大鉦鼓(おおしょうこ)」と別のタイプの鉦鼓を用いります。
和琴
和琴(わごん)は日本固有の楽器の中でも最古のものです。
そのため日本古来の国風歌舞など日本古来の楽曲に用いられています。
絃がまとめられている尾の部分が、鵄の尾に似ていることから「鵄尾御琴(とびのおのおんこと)」という別名を持ちます。
位の高い者が演奏する楽器とされていたことから、現代の宮内庁楽部でも主に楽長が奏しています。
鞨鼓・三の鼓
雅楽の演奏には指揮者がいないかわりに、鞨鼓(かっこ)もしくは三の鼓(さんのこ)が演奏の開始・終わりの合図・曲のリズムを決めます。
どちらも枠付きの締め太鼓ですが、形状や演奏楽曲・奏法が異なります。
▼鞨鼓と三の鼓の主な違い
鞨鼓 | 演奏楽曲 | 唐楽 |
---|---|---|
形状 | 円筒型 | |
奏法 | 台に乗せた状態で演奏 | |
三の鼓 | 演奏楽曲 | 高麗楽 |
形状 | 砂時計型 | |
奏法 | 床に直置きして演奏 |
雅楽の楽器の値段は?
雅楽器は神聖な儀式等で奏されることから、高そうというイメージを持つ人も多いかもしれません。
そこで雅楽器の販売相場価格を下記表にまとめました。
楽器名 | 相場 | |
---|---|---|
笙 | 137,000円~2,000,000円 | |
神楽笛 | 40,000円~280,000円 | |
高麗笛 | 12,000円~280,000円 | |
龍笛 | 5,500円~418,000円 | |
楽太鼓 | 1,400,000円 | |
篳篥 | 4,400円~198,000円 | |
琵琶 | 825,000円 | |
楽箏 | 385,000円 | |
鞨鼓 | 561,000円 | |
和琴 | 550,000円 | |
鞨鼓 | 533,000円 | |
三の鼓 | 792,000円 |
笙や横笛・篳篥は雅楽の中でも人気の習い事であるため、お求めやすい価格の入門セットも販売されています。
雅楽の歴史をわかりやすく解説|魅力・良さは?
雅楽の基礎となる音楽ができたのは4,5世紀頃。
朝鮮半島や中国大陸から遣唐使や留学生が来日し、大陸の音楽文化が融合したことが始まりです。
その後大宝元年には雅楽寮(うたまいのつかさ)と呼ばれる管理機関ができ、宮廷音楽として発展していきました。
しかし1467年、応仁の乱によって雅楽器や楽譜が消失し一度勢いが途絶えます。
その後江戸時代までに徐々に復興を遂げ、明治時代には宮内庁式部職楽部が創設され宮中での演奏を担当するようになりました。
1000年以上前から伝わる世界最古のオーケストラである「雅楽」は、このような困難を乗り越えて発展し現在の姿に至るのです。
雅楽の代表作や有名な曲は?
西洋音楽のオペラと同じように、雅楽にも様々なコンセプトの演目があります。
中でも、舞台上を活発に走り回る走舞を演じる「蘭陵王(らんりょうおう)」や、十二単をまとって舞う「五節舞(ごせちのまい)」は見ごたえがあり、人気の舞楽です。
越天楽
雅楽の一番有名曲「越天楽(えてんらく)」は、小中学校の音楽の授業にも取り上げられているため知っているかたも多いのではないでしょうか?
現代では演奏会等でよく耳にしますが、平安時代では数少ない仏教行事のみで演奏される曲目でした。
それぞれの楽器の音色の違いを聴きやすいので、初めての雅楽鑑賞におすすめの楽曲です。
雅楽の奏者で有名人は?
雅楽鑑賞をするにあたって、有名な奏者はチェックしておきたいですよね。
奈良時代から1300年以上続く楽家の東儀家出身の、東儀博昭さんや東儀雅季さん、東儀秀樹さんは特に注目度の高い雅楽奏者です。
またYouTubeで雅楽の知識や良さを発信している山口創一郎さんや、雅楽ネタを披露する芸人のカニササレアヤコさんも人気を集めています。
東儀秀樹
東儀秀樹さんは、現在最も注目度の高い雅楽奏者です。
宮内庁楽部に在籍後、雅楽と現代音楽を融合させた楽曲創作や映画・ドラマ出演など様々な方面でご活躍されています。
またYouTubeでの活動も注目を集めており、特にアニメ曲を雅楽器アレンジした動画は大人から子供まで楽しめるととても人気です。
雅楽の衣装は?
雅楽の衣装にはたくさんの種類があり、演目や成り立ちによって色・形、着方が異なります。
唐楽や高麗楽など外来の舞楽は絢爛豪華な色や刺繍が施された衣装が多く、煌びやかな演出が特徴的です。
一方外来の管絃では武家が着用した装束などが用いられるなど、舞楽よりもやや控えめな印象となっています。
外来の舞楽とうってかわって日本独自の演目は、比較的素朴で簡素な衣装が多い印象です。
国の文化によって、衣装にも特徴がみられるのも面白いですね。
雅楽の面とはどんなもの?
雅楽で用いられる面は、色彩豊かで豪華な物が多く見ごたえがあります。
中には顎の部分と目の部分が動く面もあり、舞うたびに躍動感が増していく様子も鑑賞ポイントです。
雅楽を習いたい!教室のおすすめは?
雅楽鑑賞を通して、自分でも演奏してみたいと思われる方もいるのではないでしょうか?
雅楽器の中でも笙・篳篥・龍笛の3つは、初心者でも始めやすく人気です。
鑑賞だけでなく、演奏を通して違う角度から雅楽の世界を楽しんでみませんか?
ムサシノ雅楽教室
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