箱根寄木細工は、日本を代表する伝統工芸品です。特徴である緻密な幾何学模様は、見るものを惹きつける不思議な魅力があります。
200年以上の歴史を持ち、現在も観光土産の定番です。
そこで、今回は知ってるようで知らない箱根寄木細工についてまとめました。
箱根を観光する際におすすめのお土産や販売店もご紹介してますので、ぜひ最後までご一読ください。
箱根寄木細工とは
箱根寄木細工とは、神奈川県箱根町及び小田原市で作られる木の工芸品です。
木片や木材を組み合わせる「寄木」の名の通り、色の違う木々の風合いを生かした幾何学模様も魅力の1つ。
1984(昭和59)年には、国の伝統工芸品として通商産業大臣の指定を受けました。
お椀やお盆、キーホルダーなどの他、アクセサリーやマウスパッドなど、時代のニーズに合わせ、幅広い製品が作られています。
箱根寄木細工の歴史
寄木細工のルーツは古代西アジア。シルクロードを通って日本へ伝えられたと言われています。
そんな寄木細工が箱根で花開いた歴史をひも解きましょう。
箱根寄木細工はいつからあるの?
箱根での寄木細工の始まりは江戸時代末期。
当時寄木細工が発展していた静岡で技術を学び、箱根畑宿(はたじゅく)に戻った石川仁兵衛(いしかわにへい)が技法を考案しました。
始めは1種類の木やシンプルな模様の製品のみでしたが、明治時代に現代に見られるような複雑な模様が作られるようになり、大正時代には輸出が増加するなど海外でも人気となりました。
現在まで技術が継承されている箱根町と小田原市が、国内唯一の寄木細工の産地です。
箱根寄木細工が作られた理由とは?
京都嵐山、鳥取の大山と並び、箱根山系は様々な種類の樹木が生息する日本屈指の地域。
箱根山で育まれた木の色合いを生かして緻密な幾何学模様を作り、製品に利用したことで、日本では他に例のない独特の木工品となりました。
また、東海道沿いであり、温泉客が多く訪れる場所も、箱根寄木細工が全国に知られることとなった理由の1つと考えられています。
東海道の茶屋や温泉で庶民に親しまれるお土産として売られ、現在も観光地・箱根を訪れる方に人気です。
箱根寄木細工の特徴とは
江戸時代から受け継がれてきた箱根寄木細工は、模様の美しさが大きな特徴です。
その特徴を作り出す要素を、樹木、模様、材料、使われ方の4つの視点から見ていきましょう。
箱根寄木細工の木の種類は?
箱根寄木細工では、木材の自然な色合いと木肌が重要です。
非常に多くの木材を使うことで、箱根寄木細工の特徴である模様になります。
色の系統別の主な木材は以下の通りです。
色 | 樹木 |
---|---|
白色系 | みずき、あおはだ、もちのき、しなのき、せん |
灰色系 | ほおのき、はおはだのしみ、さんしょうばら |
淡黄色系 | まゆみ、にがき |
黄色系 | しなのき、にがき、うるし、くわ、はぜのき |
赤色系 | レンガス、ハドゥク(外材) |
緑色系 | はりえんじゅ、ほうのき |
茶色系 | えんじゅ、あかくす、いちい、くわ、くすのき、 かつら、くるみ、けんぽ、なし、けやき、さくら、 しなのき、ちゃんちん、もっこく、たぶのき、ナトー |
紫色系 | パープルハート |
褐色系 | かつら神代※、くり神代、マンソニア、ウォールナット |
黒色系 | かつら神代、くり神代、マンソニア |
※神代(じんだい)とは、倒木してから数百年地中に埋まっていた木のこと。「埋もれ木」とも呼ばれています。
以前は箱根の木々を利用していましたが、現在は国立公園に指定され伐採できなくなりました。
ほとんど使えなくなくなった箱根の木材の代わりに、国土の70%が山と森林である日本の他の地域や、海外からも輸入材を購入し、現在も様々な色味を表現しています。
箱根寄木細工の模様の意味は?
箱根寄木細工の伝統的な模様は約60種類にものぼり、その1つ1つに意味が込められています。
模様の意味の一部をご紹介します。
名前 | 模様 | 意味 |
---|---|---|
六角 麻の葉 |
六角形を連続してつなげていく幾何学的な模様 | 子供の健やかな成長・魔除け |
紗綾型 (さやがた) |
卍という字を斜めに崩して連続させた模様 別名「菱万字」 中国から輸入された紗綾織という 絹織物が名前の由来 |
不断長久(絶えることなく長く続く) 家の繁栄・長寿 |
青海波 | 無限に広がる波の模様 発祥はペルシャ |
幸せへの願い 人々の平安な暮らしへの願い |
鱗文様 | 三角形を交互に入れ替えた模様 別名「入れ替わり文様」 |
厄を落とし再生する 厄除け |
亀甲 | 六角形をつなぎ合わせた模様 | 長寿吉兆・永遠の繁栄 |
市松 | 碁盤目状の格子の目に、 色違いの正方形を交互に並べた模様 |
子孫繁栄・事業拡大 |
七宝 | 同じ大きさの円を4分の1ずつ重ねた模様 | 円満・調和・ご縁 |
矢羽 | 斜めになった四角形が組み合わさり、 矢の羽のような形になった模様 |
魔除けの破魔矢・的を射る |
色や配置を変えると種類は100にも200にもなるとも言われ、模様の組み合わせは無限。
伝統的な模様だけでなく、現在もなお新しい模様が生まれ続けています。
購入する際に、模様に込められた意味から選ぶのも楽しそうですね。
箱根寄木細工の材料は?
引用元:箱根寄木細工 木路
箱根の自然そのものであると言える箱根寄木細工は、木材だけではあの精密な模様を作り出すことはできません。
木材同士を張り合わせ、模様を作るのに必須なのが接着剤です。
かつては膠(にかわ)を使用していましたが、現在は木工用ボンドを使用している工房もあります。
他にもカンナ、ノミ、万力やノコギリ、自分で工夫した道具などを駆使して作られています。
箱根寄木細工の使われ方は?
引用元:箱根町公式サイト
箱根寄木細工には「ヅク貼り」と「ムク作り」があります。
「ヅク貼り」は色の異なる木を合わせて幾何学模様を作った「種板」を、カンナで薄く削り、小箱などの表面に貼った製品です。主に箱類に使われており、「指物」とも呼ばれます。
「ムク作り」は、「種板」をそのままろくろなどで加工して作られた製品です。盆や椀物などに使われ、丸みを帯びたフォルムが特徴で「挽物」とも呼ばれます。
箱根駅伝の往路優勝トロフィーも「ムク作り」で作られているんですよ。
箱根寄木細工の魅力や良さとは?
江戸時代から旅人にお土産として愛され、海外の人気も高い箱根寄木細工の魅力は幾何学模様だけではありません。
箱根寄木細工の代表的な良さを、それぞれ詳しく見ていきましょう。
①無垢材の美しさ
箱根寄木細工で使われる「無垢材」は、加工をしていないそのままの木材を指します。
無垢材は1本の木から数本しか取れない非常に貴重なもの。天然の木をそのまま使用するため、ぬくもりのある自然な雰囲気が大きな魅力です。
また、気候の変化にも吸湿性や放湿性で対応し、強度もあるため丈夫で長持ちし、破損の心配もありません。
②幾何学的な模様
箱根寄木細工といえば、表面の美しい幾何学模様を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
幾何学模様は、対称性のある図形を折り重ね、連続しながら組み合わせて配列した模様のことを指します。
シンプルながらもオシャレな印象を受けるので扱いやすく、インテリアなどとの相性の良さも魅力です。
自然界ではミツバチの巣やトンボの目、ヒマワリなどの花も幾何学模様に入ります。
当たり前に存在する身近な模様なので、無意識に親しみやすさを感じ、惹かれてしまうのかもしれません。
③秘密箱・からくり箱の遊び心
引用元:浜松屋公式サイト
箱根寄木細工の代名詞と言える秘密箱やからくり箱は、手順を間違えると開けられない仕組みになっています。
始めは貴重品を泥棒などから隠すために作られたそうです。現在のような秘密箱は、明治時代に箱根の指物職人だった大川隆五郎によって考案されました。
秘密箱の進化形のひとつであるからくり箱は、秘密箱の魅力を引き継ぎつつ、職人の自由な発想で作られています。
まるで立体のパズルのような秘密箱とからくり箱は、現在もなお新しい発展を続け、海外にも多くのファンやコレクターがいるほど。
どちらも職人の遊び心が満載で、お土産だけでなく特別なプレゼントとしても親しまれています。
【Q&A】箱根寄木細工のよくある質問
伝統と歴史を感じさせる箱根寄木細工についてご紹介してきました。
ここからは素朴な疑問にお答えする形で、箱根寄木細工をさらに深くご説明していきます。
箱根寄木細工の秘密箱の開け方は?
引用元:関所からくり美術館公式サイト
秘密箱は、箱の側面をスライドさせると開けられる仕組みです。
スライドさせる方向や順番が決まっていて、その手順を1つでも間違えると開けられません。
スライドさせる回数が多くなるほど難しくなり、少ない箱は4回、多い箱は72回のものもあります。
多いものでは125回の秘密箱が保存されているというから驚きです。
▼YouTubeでも回数ごとに秘密箱の開け方が動画で紹介されています
箱根寄木細工の仕組みとは?
一見難しそうな秘密箱の仕組みは、1つの動作をするために別の動作を行うことの繰り返しです。
1つの面を動かすと蓋が開くのであれば、その面を動かすための違う仕掛けを作り、それを繰り返していきます。繰り返した回数が秘密箱を開けるための手順の回数です。
箱を開けるという考え方から枝を伸ばしていく構造なので、そこまで難しくはないことがわかります。
また、箱根で作られている秘密箱が寄木の模様になっている理由は、装飾だけでなく材木のつなぎ目を隠すという役割も担っています。
箱根寄木細工の問題点とは?
箱根寄木細工の問題点は、後継者の育成と需要開拓、そして知名度です。
立派な技術であっても、良い作品であっても、国の伝統工芸品に指定を受けようとも、売れなければご飯を食べていけません。伝統だけでは箱根寄木細工を後世に残せないのです。
協同組合を中心に、時代とともに変わる消費者のニーズに合わせた物作りをしてきました。
時には各地の百貨店で行われる工芸展や職人展で実演販売を行い、箱根寄木細工の宣伝にも力を入れ、首都圏での知名度は80%になったと言われています。
最近の世界的な日本ブームもあり、箱根寄木細工は日本を飛び出し、海外にも販路を広げています。
箱根寄木細工の職人の人数が減っているって本当?
引用元:箱根寄木細工 木路
2022年8月現在、箱根寄木細工を作っているのは約50名。
寄木細工の職人になるには約10年かかり、若い時から技術を習わないと習得は難しいと言われています。
特に伝統的な秘密箱を作れる職人はとても少なくなっているそうです。
減ってはいますが、若手職人がいないわけではありません。先述の協同組合の努力により、現在は若手職人が集まって海外へ行くなど、活動の幅を広げています。
200年を超えて継承されてきた技術を、ぜひこれから先にも伝えていってほしいですね。
▼箱根寄木細工の若手職人集団「雑木囃子」の紹介動画です
箱根寄木細工のお土産といえば?
木のぬくもりが感じられる伝統工芸品である箱根寄木細工。
ひとつひとつ手作りなので、お値段がちょっと高くて手を出しにくい…と感じる方も多いはず。
しかし、製品を購入することは、今後技術の継承や発展のためにも、職人にとっても大きな声援となります。
そこで手に取りやすく、使い勝手の良いおすすめのお土産を3点ご紹介します。
キーホルダー
箱根のお土産屋に必ず並んでいると言っていいキーホルダー。
小さいながらも、寄木細工の美しい模様や木の質感が感じられます。
身に着けられる大きさなので、ふとした時に木のぬくもりに触れられるのも魅力です。
コースター
引用元:箱根丸山物産公式サイト
体験教室で作るところが多いコースターも、手に取りやすいお土産です。
キーホルダーよりも大きく、寄木細工の特徴である幾何学模様をしっかり見られるのも嬉しいポイント。
形も模様も多種多様で、お気に入りの一枚を探すのも楽しいかもしれません。
アクセサリー
引用元:うちはら公式サイト
定番のペンダント以外にも、ピアスやイヤリングなどのアクセサリーもお土産として人気です。
特に若手職人が生み出した斬新なアクセサリーは若い世代にも評判で、箱根細工の新しい未来を感じさせます。
箱根寄木細工の体験ができるのは?
関所からくり美術館
引用元:公式サイト
観光地として人気の箱根関所近くにある関所からくり美術館では、所要時間40分ほどで寄木細工の体験ができます。
職人集団「からくり創作研究会」の作品約100点を展示、販売もされているので、工作をしなくても十分楽しめる美術館です。
- 体験工作は予約が必要
- 実際に作品に触って遊べるコーナーがある
- 売店ではからくり箱の工作キットも販売
予算 | 1,240円~ |
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取り扱い作品 | 秘密箱、コースター |
特記事項 | 要予約 |
住所 | 神奈川県足柄下郡箱根町箱根16 |
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電話番号 | 0460-83-6604 |
営業時間 | 9:00~17:00 工作体験は10:00~16:00 |
口コミ | 関所からくり美術館のGoogleマップはこちら |
公式サイト | https://hakone-karakuri.jp/our-shop/ |
箱根寄木細工を販売しているお店は?
箱根寄木細工・木路
引用元:箱根湯本観光協会公式サイト
旧街道沿いにある、箱根寄木細工の製造販売店です。「日常生活で使われる寄木細工」がコンセプトで、「ヅク貼り」「ムク作り」両技法を使った様々な商品が並びます。
オリジナル商品が豊富なことが特徴で、ギフトやプレゼント用にも最適です。
- 定番の秘密箱も多数取り扱う
- ムク作りのおひなさまは必見
- オンラインショップも開設
住所 | 神奈川県足柄下郡箱根町湯本386-36 |
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電話番号 | 0460-86-4220 |
営業時間 | 9:00~16:00(毎週木曜定休) |
口コミ | 箱根寄木細工 木路のGoogleマップはこちら |
公式サイト | http://yosegi-kiro.com/ |
寄木細工・うちはら
引用元:公式サイト
1952年創業、芦ノ湖畔にある箱根細工のお店です。バス停から徒歩1分とアクセスも抜群。
秘密箱はもちろん、ストラップやアクセサリーなど若手職人の作品やオリジナル商品も揃っています。
- 70周年に合わせて店舗をリニューアル
- 伝統を受け継ぎつつ新しく生み出されたデザインの作品が並ぶ
- 2階は寄木を使ったカフェ※2022年8月現在コロナのため休業
住所 | 神奈川県足柄下郡箱根町箱根165 |
---|---|
電話番号 | 0460-83-6222 |
営業時間 | 11:00~16:00(不定休) ※季節により営業時間は変動あり |
口コミ | うちはらのGoogleマップはこちら |
公式サイト | https://yosegi-uchihara.com/ |
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