観るだけでなく、自ら習うこともできる日本舞踊。特に「五大流派」である花柳流や藤間流、若柳流、西川流、坂東流は聞いたことがある、という方は多いと思います。
ですが、それぞれの流派の特徴や違いって何?と聞かれても、なかなか説明するのは難しいですよね。
日本舞踊は流派によって曲や振り付け、衣装等が全く異なるので、何も知らないままだと、鑑賞の際やお稽古時に自分のイメージに合わず後悔した…という残念なケースが起こりうるかもしれません。
そこで今回は、
など、日本舞踊・新舞踊の主な流派や特徴、他の伝統芸能との違いについて詳しくご紹介します。
日本舞踊の流派の種類一覧!特徴の違いまとめ
ひとくちに日本舞踊といっても様々な流派があり、江戸時代に興ったものから近年創流されたものまで、数えきれないほど存在します。
ここでは、有名な五大流派とその他のよく知られている流派を挙げ、特徴と型の違いを比較してみました。
流派名 | 特徴 | 型 | |
---|---|---|---|
五大流派 | 花柳流 | 最大規模の流派。細やかに振り付けが 定められ、統一性の維持が図られている |
手(踊りの振り)が多めで間が細かい リズミカルな振付け |
藤間流 | 宗家藤間流は現在の歌舞伎の振り付けを 手掛けること。心理描写を特に重視する |
手数が少なく、劇場で映える ダイナミックな振付け |
|
若柳流 | 振りの繊細さと全体の品位を大切にする。 主に東京や各地の花柳会に地盤を築く |
たおやかな振付けが多く、 繊細かつ品位がある踊り |
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西川流 | 最も古くて由緒のある流派。 ドラマ性の高い舞踊劇が強み |
歌舞伎色の濃い感情表現を大切にする | |
坂東流 | 家元が歌舞伎の家であるため歌舞伎色が 強い。作品の中で役を意識して演じる |
端正で切れの良い踊りが特徴 | |
その他の 有名流派 |
市川流 | 九代目市川團十郎を流祖とする。役の性格を つかみ、品格ある舞踊が特徴 |
品格と力強さを兼ね備えた踊り。 変化舞踊なども楽しめる |
吾妻流 | 女性が表現する「女の踊り」を確立。古典を 底流にしながらも新しい感覚を併せ持つ |
踊りに高低のメリハリをつけ、 女性の身体をより美しく表現 |
|
尾上流 | 上品で格調高い舞踊芸術に定評がある | 流れるような無駄がない踊り。 洗練された表現を得意とする |
日本舞踊の五大流派とは?
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現在200以上もの流派があると言われる日本舞踊ですが、そのうち五大流派といわれるのが「花柳流」「藤間流」「若柳流」「西川流」「坂東流」。
江戸(東京)を中心とする「踊り」と、上方(京阪)の「舞い」に大別されますが、いずれも、三味線など昔の音楽を利用した古典演目が中心です。
日本舞踊の流派で有名なのはどこ?
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流派で特に有名なのは、300年以上の歴史を持つ、流派の源流といわれる西川流。
規模の大きさでは花柳流が広く知られており、現在、名取15,000名を擁する最大規模の流派です。
日本舞踊の流派でおすすめはどこ?
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初心者の方で鑑賞を目的とするなら、まずは五大流派をチェックしてみるのがおすすめ。
比較的公演数が多く、日本舞踊の主流といわれる古典演目を中心に楽しむことができます。
一方、自身で日本舞踊を始めてみようと考えているなら、習う目的や目指す方向性、踊りの好みや通いやすさなどから、流派を選ぶことが大切。
初めてなら、週1回程度で短期間から学べるカルチャーセンターなどの教室に通い、稽古のスタイルなど相性が良ければ、その先生が所属する流派を検討するのもよいでしょう。
その際、費用面や舞台への出演頻度(強制か任意か含めて)、名取や師範までの流れなど、しっかり確認することを忘れずに。
新日本舞踊の流派の種類一覧
新舞踊の流派の種類
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主な種類 | 特徴 |
---|---|
歌謡舞踊 | 歌謡曲や演歌、民謡、小唄などに各流派の 家元が独自の振り付けをした舞踊 |
創作舞踊 | 昭和初期に役者や振付師の師匠等によって 振り付けられたもの。吟詠舞踊や吟詠歌謡舞踊など |
日本舞踊は古典のほか、現代的な曲に合わせて踊る「新舞踊」があります。
「新日本舞踊」「新舞踊」「歌謡舞踊」「創作舞踊」などともよばれ、その流派は全国に点在しているゆえ正確な数は把握されていません。
また、新舞踊を中心とする流派でも、古典演目を組み合わせて習えるところもあります。
新舞踊と日本舞踊の違いとは?
日本 舞踊 |
ジャンル | 名称 | 特徴 | 主な演目 |
---|---|---|---|---|
古典 | 歌舞伎舞踊 | 長唄や清元など日本の伝統的な音楽を利用。 比較的リズミカルな動きが多い |
京鹿子娘道成寺、 藤娘、小鍛冶等 |
|
古典 | 上方舞・京舞 (地歌舞・座敷舞) |
主に花柳界の女性が舞う。抽象的で内面的な 表現を重視し、ゆっくりとした動きが特徴 |
雪、わしが在所等 | |
新舞踊 | 新作・創作舞踊 (歌謡舞踊) |
現代的な楽曲に、古典の振りや新しい振りを 組み合わせたもの。自由な衣装選びが可能 |
歌謡曲、演歌、 民謡、小唄等 |
一般的に、日本舞踊(古典)と新舞踊の違いは音楽の種類と衣装。
「古典」は三味線演奏の長唄や清元、常磐津、大和楽などに合わせて踊るのが特徴で、舞台衣装も決められており、白塗りや鬘(かつら)をつけて役柄に徹して踊ります。
対して「新舞踊」は、歌謡曲や演歌などの親しみやすい曲を取り入れ、衣装の選び方もさまざま。
古典を題材にした曲や振りを取り入れつつ、新しい振りを組み合わせた自由度が高い舞踊といえます。
日本舞踊の流派Q&A
日本舞踊の流派の数はどれくらい?
協会名 | 加入している流派数 |
---|---|
公益社団法人 日本舞踊協会 | 約120流派 |
一般社団法人 日本創作新舞踊協会 | 約80流派 |
現在まで継承されている日本舞踊の流派は、日本舞踊協会に加入しているもので約120流派、日本創作新舞踊協会加入分を含めると、全体で約200流派にものぼります。
この他にも、協会未加入の流派は数えきれないほどあり、その実情の数は把握されていません。
流派を変えることはできる?
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分類 | 流派の変更 | 主な注意点 |
---|---|---|
名取・師範 | 可能 | 前の師匠に事情を説明し、必ず名前(芸名)をお返しする。 新しい師匠の理解を得たら、名前なしから改めてスタートする |
平弟子・一愛好者 | 可能 | 新旧の師匠それぞれに報告してからが望ましい |
一般的に流派を変えることはタブーとされていますが、それは流派から名前を頂いた名取や師範に言われること。
しかし、例え名取や師範であっても、引っ越しや教室の廃業などのやむを得ない事情で流派を変える場合は、これまでの師匠に事情を説明し、頂いた名前をお返ししてから新しい教室に変わるのが筋といえます。
一愛好者なら、それほど気にすることはありませんが、日本舞踊は流派問わず人脈がとても密な世界。
お世話になった先生はもちろん、新しい先生にもきちんと経緯を報告し、理解を得られてからのほうが安心です。
流派による位の違いはある?
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流派 | ジャンル | 特徴 |
---|---|---|
西川流 | 歌舞伎舞踊(古典舞踊) | 元禄年間(1688年~1704年)に始まり、二代目西川扇蔵が確立。 多くの流派の源流といわれる |
井上流 | 上方舞(古典舞踊) | 寛政年間(1789年~1801年)に、近衛家の風流舞を習った 井上サトが創流。主に芸舞妓が舞う流派 |
「古典舞踊」と「新舞踊」に分けられる日本舞踊ですが、流派によって位や格の違いはありません。
あえて、歴史の古さから挙げるとすれば、五大流派の中で最も古い300年以上の歴史をもつ西川流でしょう。
ほかに、舞う人を限定する希少性でいえば、祇園甲部の芸舞妓だけが舞うことを許された井上流が挙げられます。
日本舞踊と歌舞伎の違いは?
日本舞踊と歌舞伎の違い
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種類 | 特徴 | 演者 |
---|---|---|
日本舞踊 | 歌舞伎の演劇性や、能の舞いや踊りの技法を基に、 独自に洗練しながら発展してきた舞踊 |
老若男女問わず演じられる |
歌舞伎 | 豪華な衣装や化粧、独特の振りや動きなどで 独自の様式美を持つ。演劇色が濃くエンタメ性が高い |
基本的に演者は男性のみ |
日本舞踊は、主に歌舞伎をベースに発展してきましたが、それぞれ大きな違いがあります。
歌舞伎は衣装や化粧、独特の動きで観客を魅せるエンターテイメント性が高い舞踊劇。
対照的に、日本舞踊は舞いや踊りに重きをおいたもの。能や歌舞伎などの古典芸能を元に洗練を重ねた結果、多くの流派が生まれ、現在も独自の発展をとげています。
日本舞踊と伝統芸能との違いを比較
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種類 | 主な違い |
---|---|
上方舞・京舞 (座敷舞・地唄舞) |
江戸の歌舞伎舞踊から離れて上方(京・大阪)で発展した、 ゆったりと静かな動きの舞い。花柳界の女性を中心に受け継がれる |
能楽 | 面をつけ、謡や囃子に合わせて舞う「能」と、直面(素顔)で 演じる喜劇「狂言」を合わせた芸能の名称。演者は主に男性 |
大衆演劇 | 一般大衆を観客とする庶民的な演劇。一座の多くが近しい血縁者で 構成され、男性はもちろん女性座長や女優も多い |
琉球舞踊 | 琉球(沖縄)で継承されている舞踊。三線や箏などで構成される地謡などの 琉球古典音楽に合わせて踊る。多くの女流舞踊家が存在する |
民謡 | 各地域で代々継承されてきた民衆の歌謡。日本語の発声や韻を生かして 歌われる。歌い手は男女問わない |
ダンス・バレエ | ソロ、デュエットあるいは集団で演じられ、その様式は極めて多様。遊戯的で リズミカルな動きが多い。男女問わず専門とする者をダンサーとよぶ |
基本的に男性だけが演者である能楽や歌舞伎に比べると、日本舞踊は男女問わず演じられているのが特徴。
上方舞(座敷舞・地唄舞)は日本舞踊のひとつに含まれますが、女性しか舞うことを許されない門外不出の流派もあります。
日本舞踊の男踊り・女踊りの特徴の違いとは?
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種類 | 特徴 | 主な役柄 | 代表的な曲・演目 |
---|---|---|---|
男踊り (立ち役) |
大きめの振りで力強い表現や、 粋な歩き方や仕草が特徴 |
獅子や殿様、武士、二枚目、 鳶頭、お坊さんなど |
助六、越後獅子、 雨の五郎 |
女踊り (女形) |
しなやかで優雅な動きが多い。 内股で控えめに歩く |
お姫様や町娘、天女、花魁など | 京鹿子娘道成寺、藤娘、鷺娘 |
曲中で男を演じるものを「男踊り」または「男舞」、女性を演じるものを「女踊り」「女舞」と呼び、男性が女踊りをしたり、逆に女性が男踊りをすることもあります。
なかには、ひとつの曲で男女を踊り分ける「鏡獅子」といったユニークな演目も。
まとめ
日本舞踊は「花柳流」「藤間流」「若柳流」「西川流」「坂東流」の五大流派を中心に、古典舞踊や新舞踊それぞれのジャンルにおいて、現在も多くの流派が生まれています。
昔ながらの三味線音楽や様式的な踊りを楽しむなら「古典」、歌謡曲や時代の流れに合わせた舞踊が好きなら、「新舞踊」の世界から触れてみるのもよいでしょう。
観るだけではなく、自ら習うこともできる身近な日本舞踊の世界に、足を踏み入れてみるのはいかがでしょうか。
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