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九谷焼の特徴とは|歴史や見分け方は?有田焼との違いも

日本文化

九谷焼の特徴とは|歴史や見分け方は?有田焼との違いも

石川県で製造されている九谷焼は、鮮やかな色彩と豪快な筆遣いの絵付けが特徴の陶磁器です。

宮内庁からの贈答品として英国チャールズ皇太子御成婚祝に献上されたことでも知られます。

世界中の人々に親しまれる九谷焼を知らないと、日本人として恥ずかしい思いをしてしまうかもしれません。

そこで、美術品から日用品まで幅広く人気の九谷焼の魅力をまとめました。

九谷焼の窯元や現代作家だけでなく、偽物やよく似ている有田焼との見分け方もご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。

九谷焼とは


引用元:石川県九谷焼美術館

九谷焼は石川県南部の金沢市、小松市、加賀市、能美市で生産されている陶磁器です。江戸時代前期にはその存在が確認されています。

豪快で闊達な線描きの上に、多くの色絵具で描かれる、まるで絵画のような絵柄が持ち味。

釉薬の上に顔料で絵付けを行い再度焼く技法は上絵付と呼ばれ、中でも赤、黄、緑、紫、紺青の「九谷五彩」が有名です。

受け継がれてきた技法や画法の種類が多く多彩な表現も魅力の1つ。古九谷の「青手」や「赤絵細描」、明治時代に一世を風靡した「金襴手」は世界的にも有名になりました。

1975年には経済産業大臣から国の伝統工芸品に認定された、歴史ある焼き物です。

▼世界に誇る九谷焼の魅力が、美しい映像とともに紹介されています

九谷焼の読み方は?

久谷焼は「くたにやき」と読みます。

原料となる陶石が発見された「九谷村」が名前の由来です。

モダンなデザインが人気

日本の伝統工芸品に興味はあるけれど、好みのデザインがなかったり敷居が高いイメージがあったりと、なかなか手が出せない方もいるかもしれません。

しかし、九谷焼は現代の人が見ても、思わず「可愛い!」と言いたくなるようなモダンなデザインが多く、若い世代からも人気となっています。

中にはドラえもんやムーミンなどキャラクターとのコラボ商品も。九谷焼の伝統柄とキャラクターとの自然な融合は必見です。

最近ではアクセサリーにも九谷焼の技法が取り入れられ、多様化が広がっています。

鮮やかな色彩で描かれるデザインは、1つ1つが職人の熟練の技によるもの。同じ九谷焼でも作家によってそれぞれ特徴や味が違い、選ぶのに迷ってしまいそうです。

九谷焼の歴史は?

365年以上の歴史がある九谷焼は、4つの時代に分けて考えられています。

  • 江戸時代前期、古九谷
  • 江戸時代後期、再興九谷
  • 明治~昭和前期、産業久谷
  • 昭和後期~現代、現代九谷

古九谷は、江戸時代前期、九谷村で焼き物の原料である陶石が発見されたことをきっかけに生産が始まった初期の九谷焼です。

しかし、50年ほどで生産は突如終了します。

九谷焼の復活を目的とした加賀藩の支援を受けて、約100年後の江戸時代後期に再び生産を開始。この頃の九谷焼は復興九谷と呼ばれます。

明治時代からは産業久谷と呼ばれ、藩の支援がなくなった窯元の職人たちは、作品の美術的価値を磨き、九谷焼を美術工芸品にまで高めていきました。

輸出産業にも活路を見出すと、赤絵と金彩による色絵付けで欧米向けの作品を作り、「JAPAN KUTANI」と称されます。

伝統的な美術工芸品ブランドを確立した昭和後期以降は、実用品だけでなく美術品として制作されるようになり、人間国宝も誕生。

伝統を継承しつつも時代のニーズに合わせてデザインが作られ、作家による多様性も広がり、今もなお九谷焼の歴史は築かれています。

⇒九谷焼作家の人間国宝はこちら

九谷焼と有田焼の違いは?

江戸時代前期に九谷焼が始まった時、中心人物だった後藤才次郎が技術を学んだのが有田でした。九谷焼は有田焼の流れをくむとも言われ、共通点が多く見られます。

九谷焼と有田焼を見分けるポイントを表にまとめました。

ポイント九谷焼有田焼
原料陶石+陶土※1陶石
磁器の色青みを帯びている透明感がある
印象豪快で華麗繊細で美しい
筆遣い力強い繊細
絵付け上絵付が多い染付※2が多い

※1:陶石は磁器の、陶土は陶器の原材料。
※2:白地に藍色だけで模様が描かれる技法。上絵付に対して下絵付とも言われる。

絵付けを行う前の工程である骨がき作業も、九谷焼の特徴と言われています。

骨がき作業は、呉須という顔料を使って絵の輪郭を描く作業です。窯出し後、呉須は透明なガラス状になった絵具の下から黒い線となって現れていますので、ぜひ確認してみてください。

作家による多様化が進んでいるため、デザインの印象や絵付けの仕方ですべてが判断できるわけではありません。あくまで判断基準の1つとして押さえておきましょう。

⇒古九谷と有田焼の見分け方はこちら

九谷焼(金沢)の特徴&種類

引用元:石川県九谷焼美術館

九谷焼の特徴は、上絵付けの伝統と職人の技術による高い芸術性です。

伝統的なデザインや受け継がれてきた技法にはたくさんの種類がありバリエーションの多さも九谷焼の魅力。

中でも有名な3つのデザインをご紹介します。

古典柄


引用元:石川県九谷焼美術館

着物のイメージが強い古典柄ですが、古くから日本人に親しまれてきた伝統的な柄は、焼き物にも見受けられます。

九谷焼は、花鳥や山水、風景をまるで絵画のように描いた大胆な絵図柄が特徴です。中国の明や唐に習ったと見られるデザインも多く見られます。

また、小紋と呼ばれる幾何学紋様は、古九谷の時代から見られる伝統模様。丸紋や亀甲紋、青海波紋などがあります。

幾何学紋様単体で使われることもあれば、数種類を組み合わせたり山水画と併用したりと、バリエーションに富んでいます。

吉田屋


引用元:石川県九谷焼美術館

九谷焼の代表的な作風のひとつ。青、黄、紫、紺の4色を使い、日本画の要素が多く取り入れられた、柔らかい画風が特徴です。

器全面を絵具で塗り埋める手法が多く見られ、小紋や点描で地の文様を埋めています。

赤を全く使わないことから別名「青九谷」。古九谷を最も受け継ぐ作風とも言われています。

赤絵


引用元:石川県九谷焼美術館

赤絵は文字通りにじみにくい赤絵具を使用し、器全体に細かくデザインが書き込まれています。赤だけでなく、金で華やかに彩られた作品が多いことも特徴です。

赤絵具は古九谷でも使われていましたが、絵画のようなデザインに使われるようになったのは再興九谷の時代です。その後、明治時代に入って金や銀を加えた技法が手法になりました。

特に背景を赤で塗り埋めた器に、金で絵付けを施したスタイルは、赤絵の中でも「金襴手(きんらんで)」と呼ばれています。

九谷焼の見分け方

伝統工芸品である九谷焼は、美術品としても世界中にコレクターがいるほど人気です。特に名作は骨董品として高額で取引されることも。

九谷焼の中でも製作期間が短いため希少価値の高い「古九谷」と、混合しやすい「有田焼」の見分け方をご紹介します。

  • 古九谷に使われる赤、黄、緑、藍、緑などの色に独特の深みと重厚感がある
  • 古九谷の赤はあずき色、有田焼(特に柿右衛門様式)は朱色
  • 土台となる器を青・緑・紫・黄の彩釉で塗り埋めた「青手」は古九谷特有
  • 裏面の図案にも意匠が凝らされ、丁寧に描かれている

上記の特徴が、すべての古九谷と有田焼に当てはまるわけではありません。

有田焼の中には「古九谷様式」と呼ばれる色絵磁器があります。また、古九谷の産地は石川県とする説と、佐賀県の有田とする説が、半世紀以上にわたって論争されてきました。

近年の調査により、現在古九谷の産地はどちらでもあると考えられていますが、見分けが難しくなる理由とも言えるでしょう。

作家印・裏銘で偽物を見分ける

作者が自分の作品自体に銘と言われるサインを入れる事を、作銘(さくめい)と言います。

器や皿などでは裏の高台部分に入っていることが多く、作品の作られた時代、焼かれた窯名、作者を特定するための指針のひとつです。

江戸時代と明治時代で見られる銘の違いをまとめました。

年代見られる銘
江戸時代吉祥を意味した角「福」
明治時代絵付をした作者名
活躍した工房名
依頼先の陶器商人の名
上記を併記する形もあり

江戸時代の九谷焼では、陶画工の名前が高台の中に書き入れられたものは、ほとんどありません。

明治時代には、名工の「九谷庄三」や、ブランドとして名高い商人名の「鏑木」などが見られ、これらを併記する形で裏銘を入れるようになりました。

分業されて多くの職人の手を渡る作品であっても、工芸品の製作者名は製品の最後に装飾した者とする不文律があるため、銘は最後に絵付けを行った人物の名であると言えます。

残念ながらこの銘を消したり、別の銘に書き換えるなどして偽物が横行しているのも事実です。

審美眼を養うためにも、普段から良いものを目にすることも見分ける力となりますよ。

九谷焼の値段

九谷焼の値段は、作成時期や作家によって変わります

特に新しいものより古いもののほうが評価が高く、骨董コレクターからも人気が高いです。

江戸時代前期に作られた古九谷は、美術的・歴史的価値から最も高価であると言えるでしょう。

また、もう1つのポイントは作家です。歴史的に名を残す名工はもちろん、現代でも人間国宝や人気作家の作品は高価格な場合が多い傾向にあります。

しかし日常使いであれば、小さい豆皿は1,000円ほどで購入可能です。お得に九谷焼を購入できる九谷焼祭りやアウトレットも開催されています。

1つ1つ手作りなので多少お値段は張りますが、手に取りやすい価格帯の作品があることも九谷焼の魅力の1つ。その金額を出す価値があると思える作品に出会いたいですね。

九谷焼の窯元【一覧】

様々なバリエーションがあることも九谷焼の魅力。窯元によっても強みや特色が異なります。

石川県内の九谷焼の窯元を特徴とともにまとめました。好みの絵柄を探しに訪れる際の参考にしてください。

▼窯名をクリックすると公式サイトへ移動できます

窯名特徴住所
九谷美陶園伝統的な九谷焼が基本
幅広い食器や料理にも合うモダンなデザイン
石川県加賀市山代温泉16-71
九谷焼窯元
きぬや
オリジナリティ溢れる作品
「九谷オーバル」や「ゆかたべさん人形」シリーズが人気
石川県加賀市山中温泉東町1丁目マ22
上出長右衛門窯五彩や染付などの伝統技術を生かした割烹食器が中心
創業140年以上の老舗
予約すれば工房の見学も可能
石川県能美市吉光町ホ65
青郊窯転写シートという印刷技法を導入
開発した絵具で、食器の内側にもデザインが可能に
石川県能美市佐野町ロ-25番地
文吉窯素地作りから絵付けまで一貫して行う窯元
古九谷や青九谷の技法を受け継ぐ
石川県能美市寺井町レ61
虚空蔵窯「見て楽しく、使って楽しく、
持つだけで心が豊かになる」がコンセプト
現代の生活にも映えるユニークな形状やデザインが特徴
石川県能美市和気町井55-3
九谷光仙窯金沢で唯一ろくろから絵付けまで一貫して行う窯元
見学や絵付け体験も可能
石川県金沢市野町5-3-3
鏑木商舗創業200年を迎えた老舗
和風建築の店内には、九谷焼の展示やカフェなども併設
石川県金沢市長町1-3-16
宮本泰山堂「伝統とモダンの融合」を目指した九谷焼作り
贈る相手やシーンを考えたデザインの九谷焼が並ぶ
オーダーメイド商品の発注が可能
石川県小松市東町76

九谷焼の現代作家といえば?

九谷焼で特に人気の現代作家7名をご紹介します。

作家名窯名住所
仲田錦玉錦玉窯石川県小松市高堂町ト18
田村星都陶窯田村石川県小松市高堂町イ-53番地
4代徳田八十吉徳田八十吉陶房石川県小松市金平町新5番地
山本篤妙泉陶房石川県加賀市伊切町ワ163-1
福島礼子福島武山工房石川県能美市佐野町ヲ46
山近泰大志窯石川県能美市泉台南19 九谷陶芸村内
林京子(独立)石川県能美市

最近は男性だけでなく、女性作家も活躍。女性ならではの視点から作られた新しい九谷焼も生まれています。

九谷焼の若手作家の作品を使っているレストランもあるほど。

それぞれ得意とする技法や特徴が違いますので、お気に入りの一品を探す手段として人気作家から探すのもおすすめです。

九谷焼作家で人間国宝なのは?

国の重要無形文化財の保持者に認定された人が人間国宝と呼ばれます。九谷焼で認定れているのは2名です。

3代 徳田八十吉

引用元:和食器専門店「九谷満月」

花鳥風月などの絵柄ではなく、色の配色のみの絵付けが大きな特徴です。 約70色を使い分け、色のグラデーションだけで仕上げる技法「彩釉(さいゆう)」を生み出しました。

1997年人間国宝に認定。

釉薬で色彩を調整した鮮やかな群青色が特徴で、海外にも多くの作品を発表しており、高い評価を得ています。

吉田美統

引用元:和食器専門店「九谷満月」

遠近感のある金箔使いが特徴です。カットにも技術が必要な金箔を焼付けた後、透明の釉薬で覆い、上品な金の色彩を際立たせます。

「釉裏金彩(ゆうりきんさい)」の第一人者として、2001年に人間国宝に認定されました。

落ち着いた中に品格も持つ優美な芸術品として、国内外から高く評価されています。

九谷焼の販売店は?

九谷焼の窯元や人気作家の作品を取り扱う販売店は、それぞれ並ぶ作品の特色も異なります。

時間はないけれど、九谷焼の魅力を満喫して好みの作品を手に入れたい人には、九谷陶芸村がおすすめですよ。

九谷陶芸村

引用元:九谷焼協同組合公式サイト

九谷焼の美術館から体験館、九谷焼専門店10店が集結。「見る」「知る」「作る」「買う」ができる九谷陶芸村では、九谷焼の魅力を存分に体感することができます。

人気作家だけでなく若手の作品も展示・販売しているので、好みの九谷焼を探せるおすすめのスポットです。

  • 毎年5月と10月に行われるお祭りは、アウトレット価格で九谷焼を購入できる
  • 間近に創作活動の見学も可能
  • アクセスが悪いので事前の乗り換えチェックは必須
住所石川県能美市泉台町南22
電話番号0761-58-6102
営業時間9:00~17:00(受付は16:30まで)
※陶芸館は12:00~13:00休み
※専門店は年中無休、美術館3館とも毎週月曜定休
(祝日の場合翌日)
口コミ九谷陶芸村のGoogleマップはこちら
公式サイトhttp://kutani-danchi.org/

九谷焼の美術館【一覧】

引用元:石川県九谷焼美術館公式サイト

石川県内で九谷焼を展示している美術館を一覧にまとめました。

普段は決してお目にかかれないような、価値ある九谷焼を気軽に鑑賞できるところが美術館の魅力です。ぜひ足を運んで九谷焼の美しさに触れてくださいね。

▼美術館名をクリックすると公式サイトへ移動できます

美術館住所特徴
金沢市石川県立美術館石川県金沢市出羽町2-1加賀藩ゆかりの古美術に加え、
現代作家の作品も展示
毎年九谷焼の公募展も開催
石川県伝統産業工芸館金沢市兼六町1番1号石川県の伝統工芸36業種をすべて展示
伝統工芸士による実演や体験も可能
加賀市石川県九谷焼美術館石川県加賀市大聖寺
地方町1-10-13
九谷焼専門の美術館
「青手」や「赤絵」などテーマごとに展示
喫茶室やギャラリーも併設
九谷焼窯跡展示館石川県加賀市山代温泉
19-101番地9
江戸時代後期の「吉田屋窯」跡をそのまま展示
明治に古材で建てられた古民家が展示棟
能美市能美市九谷焼資料館石川県能美市泉台町南56九谷焼の歴史から作品まで展示
陶芸体験、作家の活動の見学も可能
小松市小松市錦窯展示館石川県小松市大文字町
95番地1
昭和初期の町家を改修した九谷焼の展示館
人間国宝徳田八十吉の生家で、上絵付の陶房跡
九谷焼の名品と歴代徳田八十吉の作品を展示

九谷焼の特徴まとめ

日本の伝統工芸品である九谷焼をご紹介しました。

  • 九谷焼の歴史は365年以上
  • 長い歴史の中で生まれた豊富な技法を駆使して描かれる、鮮やかな色彩と力強い上絵付が特徴
  • 作家や窯元によって得意とする技法やデザインが異なり、多種多彩
  • 作成時期が古いもの、人気作家や人間国宝の作品は価格が高い傾向が見られる
  • 作銘や色絵の特徴を理解することで偽物と見分ける方法も
  • 美術品として九谷焼を気軽に鑑賞できる美術館は、審美眼を養えるおすすめスポット

骨董から実用品まで、時代を越え、世代もこえ幅広く愛され続ける九谷焼。

日本が世界に誇る九谷焼の色や絵柄の美しさに、歴史と職人技を感じてみませんか?

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