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日本舞踊の名取とは?お祝いや試験費用・資格を持つ芸能人も紹介

日本文化

日本舞踊の名取

日本舞踊でよくいわれる「名取」という言葉。踊りが上手な人が持つ資格、という程度は理解できても、なかなかイメージはつかみにくいかもしれません。

もし、日本舞踊を始めようと思っているのなら、名取についてあらかじめ調べておくことはとても大事なことです。

その点を怠ってしまうと、名取になるまでの年数や費用などが想像以上に大変で、最終的に諦めざるをえなかった・・・というケースが起こりうるかもしれません。

そこで今回は、

など、名取を目指す前にある程度の心構えや準備ができるよう、条件や試験費用、資格を持つ芸能人など、名取に関するさまざまな疑問についてご紹介します。

日本舞踊の名取とは?

名取(なとり)とは、日本舞踊の流派に入門後、師匠のもとでお稽古を続け、一定の技能を習得し、家元や師匠から芸名を持つことを許されること、或いは与えられた人をさします。

流派によって名取になるための諸条件や活動範囲は異なりますが、〇〇流の一員、と認められることは、日本舞踊を習うものにとって大きな励みといえるでしょう。

名取になれば、単なる趣味としてだけでなく、日本舞踊に関する技能を十分保持していると対外的に認知してもらえるようになります。

日本舞踊で名取になるには試験が必要?


引用元:Instagram-@yasa_albi

どんなに長くお稽古を続けても、試験を受けて合格しないと名取にはなれません。

流派によって、名取試験を受けるための年齢制限やお稽古年数など諸条件が異なりますが、いずれも家元や幹部の前で指定された曲を踊り、一定水準の技量があるかどうかの厳しい審査を受けます。

なかには、名取にいくつかレベル分けをして、段階を経て上級試験まで進んでいく流派もあります。

流派によって名取の条件は違う?

引用元:Instagram-@ynishikawa1961

名取試験を受けるための条件や試験内容は、流派によって異なります。

ここでは五大流派を例に、名取試験を受けるための条件や試験内容をまとめました(試験の曲目は変わる場合あり)。

流派 名取試験を受けるための条件 試験内容
藤間流 お稽古の状況などから師匠が判断し、
試験をすすめられる事が多い(藤間流勘右衞門派)
清元「名寄の寿」等
花柳流 満15歳以上の心身健全な者。
満3年以上、怠りなく学んだ者
長唄「松の緑」、
小曲「潮来出島」等
若柳流 満12歳以上で、お稽古年数が
3年以上の者
「夕月」「芽ふき柳」等
坂東流 13才以上で、入門して
3年以上経った者
長唄「松の緑」等
西川流 満14歳以上の者(西川流宗家) 長唄「重ね菱」、「扇」、「手習子」等

ほとんどの流派が、年齢制限や目安のお稽古年数を定めていますが、なかには藤間流勘右衞門派のように、日頃のお稽古の状況などを鑑みて、師匠の判断により名取試験をすすめられるケースもあるようです。

⇒公式サイト花柳流の名取について詳しく見る

⇒公式サイト坂東流の名取について詳しく見る

日本舞踊で名取になる費用は?

流派によって異なりますが、名取試験を受けるときから無事合格して名取式を迎えるまでに、かかる費用の目安は下表のとおり。

主な項目 金額相場 備考
名取試験の受験料 30,000円~ 流派によって異なる。
別途会場費がかかることも
合格後の年会費 12,000円~ 別途、季節の挨拶代が
含まれる場合も
名取式の費用(基本料金) 500,000円~ 流派によって異なる
取り立て師匠や
親師匠への御礼
100,000円~ 自分の師匠や親師匠(自分の師匠の
師匠にあたる方)への御礼
家元への御礼(名取料) 200,000~
500,000円
名取に合格後、家元に
おさめる御礼
着物・帯の仕立て代 100,000円〜
300,000円
名取り式に着る、流派の
家紋入り着物や帯の作成代
門札免状代 25,000円前後 新しい名前(芸名)が入った
門札や免状の作成代
手ぬぐい代 50,000円前後 新しい名前を披露する為に
名刺代わりとして作成する
食事代 15,000〜
40,000円
新しく名取りになった者が
企画する食事会にかかる費用
名取御披露目会に必要な費用 数十万円~
百万円以上
師匠主催の発表会で
演目を披露するための費用

他に、試験会場が遠方だと、お車代や宿泊費(同行する師匠分も含める)が必要になったり、記念写真代やお土産代がかかる場合があります。

さらに、名取試験を受けるためのお稽古代(5,000~20,000円程度/月)も別途かかるので、名取にかかる費用は、少なくとも150~250万円程度はかかるとみてよいでしょう。

日本舞踊の名取・師範・高弟の違いとは?

名取と師範の違いは、その流派の踊り手としての技術や知識の差はもちろんのこと、自分の名前(芸名)を掲げて弟子をとれるか否かという点です。

ほとんどの流派では、名取の有資格者となってからもお稽古に精進する方がほとんど。

日本舞踊をお稽古事として考える方なら、名取が最終的な目標となりますが、将来日本舞踊を教える立場になりたいのなら、更に上の資格となる「師範(名取師範)」をめざす必要があります。

一方、「高弟(こうてい)」は、流派に属する数多い弟子のなかでも、トップクラスの技量を持つ方々をさします。

高弟になれるのはごく一部の限られた人々で、もともと家元の補佐をしていたなど、特別なキャリアがある場合のみ。

高弟と呼ばれる方々は家元の代わりに弟子へ稽古をつけるなど、その流派をサポートする重要な役割を担っています。

日本舞踊で名取になると名前がもらえる?

引用元:Instagram-@hanabusagoryu_anna

名取試験に合格すると、名取式が執り行われ、その日から名前(芸名)を名乗れるようになります。

苗字は流派名ですが、下の名前の一部は、師匠のお名前から頂くのが一般的で、たまに「~すけ」「~ひこ」など、一見すると男性のような名前が、女性に付けられることもあります。

名取になると教室を開ける?

引用元:Pinterest-日本

ほとんどの流派では、名取の資格だけで教室を開くことは許されていません。

自分の名前(芸名)を掲げて教室を開くには、最上級の免状である「師範」の資格を頂いてから。

名取になってから師範になるまでの道のりは、流派や個人的な能力によって差はありますが、平均10年以上かかるといわれています。

日本舞踊・名取のQ&A

身の周りで名取になられた方がいたら、ぜひ流派の慣習やしきたりに沿ったお祝いを。

他にも、名取に関する疑問をいくつかまとめました。

Q:名取になった人への
お祝いは何がいい?
A:名取料や流派への謝礼など相当の費用がかかるため、
現金を包む方が多いようです。
お相手との関係性によりますが、大体10,000円位が相場。
ご祝儀袋は必ず結び切り以外のものを選び、表書きは
「御祝」や「寿」とするのが無難です。
他に、帯や帯締め、帯揚げ、扇子なども喜ばれますが、
流派によって慣習やしきたりが異なるので、
事情に詳しい方に相談するのがおすすめです。
Q:日本舞踊の名取は資格?
履歴書に書ける?
A:名取は所属する流派の一人前の踊り手として認められた証。
名取の免状を頂いたら、履歴書の特技欄ではなく、資格欄に
「○○流 日本舞踊名取〇〇〇」と記入することができます。
Q:名取になったら収入はある?
年収は?
A:日本舞踊の指導者として活動できるのは、名取の更に上となる
師範になってから。
そのため、流派の家元の関係者などでない限り、
名取として収入を得ることは難しいといえそうです。
Q:名取は子供でもなれる?
最年少の年齢は?
A:流派により、名取になれるまでの年数や条件が異なりますが、
早い方なら中学生~高校生で取られる方が多いようです。
例えば、五大流派のひとつである藤間流では、
勘右衛門派の名取を13歳で取得された女性もいます。
Q:日本舞踊の名取の
芸能人は?
A:五大流派では「坂東流」の名取と師範を持っているタレントの壇蜜さん、
「藤間流」の名取である女優の牧瀬里穂さんが有名どころ。
他にも、藤間流から分派し、八代目松本幸四郎によって創始された
「松本流」の名取に、女優の木村多江さんや、松たか子さんがいます。

日本舞踊の祝舞ってどんな踊り?

引用元:Instagram-@hiro.sudachi

日本舞踊には「祝舞」や「御祝儀舞」と呼ばれる素踊りと呼ばれるジャンルがあり、主に男性は紋付の着物と袴、女性は紋付の着流し姿で扇子を用いて踊ります。

お祝い事や舞踊会の最初の演目など、新しい門出の場にふさわしい踊りで、扇子を用いてリズミカルに上半身を動かすのが特徴。

なかでも、特に人気が高い二つの曲をご紹介します。

日本舞踊の祝い船とは?

御祝儀舞のなかでも特に有名なのが、結婚式でもよく使われる門脇陸男の「祝い船」。

スローな曲調ですが、凛としてメリハリがきいた振り付けに魅せられます。

日本舞踊の祝い酒とは?

「祝い酒」もご祝儀舞でよく使われる曲のひとつ。

坂本冬美の曲(1988年発売)と、十和田みどりという歌手によって歌われた曲(1960年代発売)があり、歌詞や曲調はそれぞれ異なりますが、ともに人気があります。

特に、動画でご紹介している後者の曲は、盆踊りのように円陣になって踊られることが多く大人数向きの曲です。

まとめ

日本舞踊の名取とは、弟子をとったり教室を開いたりするためではなく、家元や師匠から一定水準の技量を持つと認められ、芸名を持つことが許されたことを証明するものです。

名取として名前を持って舞台に立つことは、日本舞踊を習うものにとっての大きな憧れ。

流派によってさまざまな違いはありますが、この名取制度も、日本舞踊の奥深い魅力のひとつといえるでしょう。

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