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薄茶(お薄)と濃茶の違いとは?読み方・点前・点て方・器を比較

茶道

薄茶と濃茶の違い

抹茶は好きだけど、回し飲みする抹茶は知らない。

と思った方は多そうですよね。

一般的に抹茶と聞いてイメージするのは、茶碗に注がれた薄茶の方が有名です。

とはいえ茶道を嗜んでいて、薄茶と濃茶の違いが分からないというのは少し残念ですよね。

今回は薄茶と濃茶の違いについて、紹介しています。

点て方や作法はもちろん、扱う道具や歴史的な背景も簡単に説明しています。

ポイントは下記の3つです。

特になぜ濃茶だけ回し飲みをするのか、知らなかった方もいらっしゃると思います。

ふいに聞かれたときに、さっと答えられるように今回も学んでいきましょう。

薄茶(お薄)とは?読み方も

まずは基本の薄茶(お薄)について紹介します。

薄茶とはお茶会で飲むことが多い抹茶のことです。

最近ブームの日本茶カフェや、懐石料理の最後に出されるのは薄茶です。

読み方は「うすちゃ」と言い、「おうす」とも呼ばれます。

飲み口は濃茶と比べてサラサラしており、使われる抹茶は約2gほどでお茶の状態では70mlほどです。

違いはお茶そのものだけでなく、薄茶を飲むお茶碗にもあります。

薄茶用の茶碗は季節やお茶会のテーマに沿った模様が描かれ、その美しさを楽しみながらいただきます。

特に正客・次客・三客には高級なお茶碗が使われることが多く、金箔がほどこされていたりお家元の家紋などが描かれています。

ホテルや学校祭で行われる簡単なお茶会では薄茶だけ提供されますが、本格的なお茶事では一番最後に提供されます。

これは帰る前に一息つくという意味が込められており、楽しい会話をしつつ楽しむことができます。

 

薄茶の歴史はいつから?

薄茶がいつから飲まれていたかは定かではありませんが、抹茶法というお茶を攪拌(かくはん)して飲む方法は鎌倉時代に伝わったとされています。

仏教宗派のひとつである「臨済宗」を立ち上げた「栄西」(ようさい)が西暦1191年に、中国から喫茶法と茶の種を日本に持ち帰りました。

この攪拌(かくはん)という飲み方は歴史的に古く、現在急須やティーバックで飲む「抽出」(ちゅうしゅつ)という飲み方よりも古い喫茶法です。

中国でも抽出しか行なっておらず、世界的にも攪拌(かくはん)という喫茶法を行なっているのは日本だけになります。

また千利休の秘伝書として有名な『南方録』(なんぼうろく)には、薄茶についての記載も残されています。

うす茶の手前(点前)に極真あり。この差別よくよく得心すべし

とあることから薄茶の点前は基本中の基本であり、茶道の本質があると書かれています。

千利休の愛弟子であった山上宗二(やまのうえそうじ)も同様に

薄茶を建てるが専一也。是を真の茶と云う

と書き残していることから、薄茶が基本のお点前であることも分かります。

濃茶とは?読み方も

続いて紹介するのは「濃茶」です。

読み方はそのまま「こいちゃ」と呼ばれており、丁寧に呼ぶときは「お濃茶」(おこいちゃ)と言います。

時代劇などでお侍さんが、一つの茶碗を回し飲みするシーンを目にしたことがある方もいらっしゃるでしょうか。

簡単なお茶会では提供されることが少なく、本格的なお茶事では会席料理の後に和生菓子と一緒に提供されます。

濃茶も薄茶も茶壺(ちゃつぼ)という大きな容器に入れられていますが、千利休の時代から主役は濃茶でありました。

そのため茶壺いっぱいに濃茶が入っており、その隙間を埋めるために薄茶を入れていました。

これを「詰茶」(つめちゃ)と呼び、濃茶よりもランクが下になります。

▼濃茶の簡単な練り方を紹介しています

 

薄茶(お薄)と濃茶の違いとは?

それではここで薄茶と濃茶の違いを比較しながら、詳しく紹介します。

お茶席での点て方や飲み方はもちろん、茶碗やお菓子の違いも紹介しています。

いまいち違いがわからなかったという方にも分かりやすいように紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

紹介内容 薄茶 濃茶
①点前 お代わり自由 お代わりできない
②作り方(点て方・練り方) 泡立てる 練る
③薄茶器・茶碗 棗(なつめ)・茶碗は自由 茶入(ちゃいれ)・濃茶碗
④抹茶の種類・量 お湯が多い お茶は多く、お湯は少なく
⑤飲み方 ひとりずつ飲む 全員で回し飲む
⑥お菓子 干菓子 和生菓子

①点前

お茶の種類 薄茶 濃茶
それぞれの違い お代わり自由 お代わりできない

まずはお点前の違いから紹介します。

薄茶はお茶事の最後に提供され、濃茶の席よりもリラックスした状態で行われます。

ひとりひとつの茶碗が与えられ、正客から順番に薄茶をいただきます。

以外かもしれませんが濃茶との大きな違いは、お代わりができることです。

薄茶が全ての客に行き渡ったあと亭主は「もう一服いかがでしょうか」と正客に尋ねます。

正客は二客以下に対してお代わりを聞き、尋ねられた方はその返答をします。

基本的には何杯の飲めますが、もちろん客であっても亭主や周りの気づかいは必要なため、臨機応変に楽しみましょう。

ともに炉と風炉でも行われますが、濃茶の方がより格式が高くなります。

基本的に濃茶の席では会話は行わず、黙々と目の前にあるお茶や濃茶碗を楽しみます。

お茶事のメインは濃茶であるため懐石料理や日本酒を楽しんだあとに、ゆっくりと時間をかけて濃茶をいただきます。

濃茶は薄茶と違ってお代わりができません。

最後の客が濃茶を飲み終わったあとに亭主が「もう一服いかがでしょうか」と聞かないのは、このためです。

②作り方(点て方・練り方)

お茶の種類 薄茶 濃茶
それぞれの違い 泡立てる 練る

いちばんの違いは、薄茶と濃茶の見た目にあります。

薄茶は鮮やかな緑色をしており、泡が立っています。

点て方は茶筅をシャカシャカと泡を点てるようにするのが一般的ですが、これも流派によって違いがあります。

特に三千家のなかで違いが大きく、一般的に抹茶と呼ばれてイメージするのは裏千家でしょうか。

流派 裏千家 表千家 武者小路千家
泡の状態 泡をよく点てる 少し泡を点てる あまり泡を点てない

濃茶は濃い緑色をしており、ドロドロと粘土が高くなります。

点て方も薄茶と違い、茶筅で練るようにして作ります。

また薄茶のお湯は一度だけ入れますが、濃茶はお湯を入れて練ったあとにもう一度お湯を入れます。

これは濃茶の練り具合を調節するほか、茶筅に付着したお茶を流すという意味も込められています。

昔は今以上に抹茶が高級品であったため、少しも無駄にしないという心意気ですね。

濃茶を飲み終わったあとは茶碗に濃いお茶が残りますが先生によってはお稽古のさいにもう一度お湯を入れ、薄茶の状態にして飲むという方もいらっしゃいます。

③薄茶器・茶碗

お茶の種類 薄茶 濃茶
茶器の違い 棗(なつめ) 茶入(ちゃいれ)
茶碗の違い 自由に選べる 濃茶碗

なんと薄茶と濃茶の違いは、道具にもあります。

薄茶が入っている容器は「棗」(なつめ)と呼び、木の容器を黒い漆(うるし)で塗ってコーティングしています。

棗の由来は、植物のナツメに形状が似ていることから来ています。

薄茶用の茶碗には制限がなく、お茶会のテーマに合わせた模様や正客が好きな模様を使うことができます。

また薄茶用の茶碗は「ろくろ」を使っており、上から見ると均一な円になっています。

ご飯を食べるときのお茶碗に形状が似ています。

対して濃茶は茶入(ちゃいれ)という容器を使用します。

棗よりも細長いものや、大きいものがあります。

茶入本体の材質は陶器で、上からかけられた釉薬(ゆうやく)もご馳走のひとつです。

棗の蓋は同じ木で作られていますが、茶入の蓋は「象牙」(ぞうげ)で作られています。

濃茶用の茶碗は「濃茶碗」(こいちゃわん)と呼ばれており、ろくろを使用せず手でこねて作られます。

ゴツゴツとした温かみがあり、一般的には「楽茶碗」(らくぢゃわん)と呼ばれています。

④抹茶の種類・量

お茶の種類 薄茶 濃茶
お茶の量 2g 4g
お湯の量 70ml 15ml
お茶の違い 好きなものを選べる 濃茶用を使う

もちろん見た目が違うので、お茶の違いもあります。

薄茶は2gと茶杓一杯分を茶碗に入れます。

ティーカップに換算すると半分くらいの量です。

好きなお茶で点てることができ、濃茶用の茶葉で薄茶を点てることも可能です。

濃茶はお茶の量が増えるのに対して、お湯の量は格段に減ります。

このためコーヒーでいうところのエスプレッソに該当するとも言われており、とてもクリーミーな舌触りです。

濃茶は茶事の主役でもあるため専用のお茶があり、甘味やうま味が強いものを使用します。

収穫して製造した抹茶のなかでも、とくに高級なものが濃茶用のお茶になります。

⑤飲み方

お茶の種類 薄茶 濃茶
それぞれの違い ひとりずつ飲む 全員で回し飲む

薄茶の飲み方は3口が飲み切るのが作法と言われていますが、飲み方は人それぞれなため好きな回数で飲む方が良いでしょう。

それぞれ一人ずつ茶碗が用意され、リラックスした状態でいただきます。

飲み終わったあと茶碗を拝見しますが、これも各自で行います。

濃茶は全員で回し飲むため、飲み口を「小茶巾」(こちゃきん)と呼ばれる布で拭きながら飲みます。

お茶席では全員が平等という考えもあるため、次の人のことも考えた分量を飲むようにしましょう。

最後に濃茶を飲む人は、飲み残しがないように吸い切ります。

⑥お菓子

お茶の種類 薄茶 濃茶
それぞれの違い 干菓子 和生菓子

最後に紹介するのはお菓子の違いです。

薄茶用のお菓子は「和三盆」や「らくがん」といった、乾燥した干菓子(ひがし)と一緒に提供されます。

学校祭のお茶席や普段のお稽古でも、よく食べることが多いですね。

薄茶はお代わりもできるため、菓子盆には人数以上の干菓子が用意されます。

濃茶のお菓子は「こなし」「饅頭」といった、和生菓子(わなまがし)が出てきます。

菓子鉢に入っており、箸で自分の懐紙に載せていただきます。

濃茶はお代わりができないため、お菓子は人数分しか用意されません。

 

薄茶・濃茶は回し飲みが作法なの?

濃茶といえば回し飲みするのが一般的ですが、昔は薄茶のように一人ずつ提供されていました。

これを今の回し飲みというスタイルにしたのが千利休です。

利休はこれを「吸い茶」と呼び

利休が吸茶に仕そめしとなん

という記録が残っています。

濃茶だけを回し飲みにした理由は一つの茶碗で客同士の心をひとつにするほか、濃茶も一つずつにすると時間がかかりすぎるからと言われています。

 

まとめ

薄茶と濃茶の違いがはっきり分かりましたか?

見た目や味だけでなく、扱う道具やお菓子も異なりましたね。

それぞれ細かい違いを紹介しましたが、ポイントは「茶事の主役」と「茶事の最後にリラックス」というところです。

普段のお稽古でも濃茶を飲む機会は多くないですが、その分じっくりと丁寧に楽しむことが大切です。

お茶会によっては薄茶と和生菓子が一緒に提供されることもありますが、これは少ない時間の中でも精一杯楽しんでもらいたいというもてなしの意味が込められています。

また濃茶は直接口を付けるため、体調に不安がある場合にはその場に合わせた対応ができるようになれると良いですね。

 

 

 

 

 

 

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