落語「ちりとてちん」は東京(江戸)の落語では「酢豆腐」という演目名に変わります。
落語には食べ物を食べる噺がたくさんありますが、落語「ちりとてちん」ほど美味しそうに食べる仕草と不味い仕草を対比させる演目はないかもしれません。
今回は落語「ちりとてちん」のあらすじ・オチ・教訓・名人などについて解説します。
落語は聞く芸だと言いますが、落語「ちりとてちん」は是非生の高座で演者の表情などにも注目して見ていただきたい演目です。
それではさっそく見ていきましょう。
落語「ちりとてちん」とはどんな演目
落語「ちりとてちん」は知ったかぶりばかりする男が「ちりとてちん」という架空の食べ物を食べたことがあると見栄を張ってウソをつき、最終的には腐った豆腐を食べるという噺です。
自分を本来の姿よりも大きく見せようとする人は、見栄を張ったり人を小馬鹿にしたような態度をとることがあるので周りから敬遠されやすいですよね。
「ありがとうございます」「知りませんでした」「分かりません」「教えてください」
上記のような人間としての常識的なことでも、現実にはできていないことも多いのではないでしょうか。
ついつい忘れがちな人としての大切なことを落語「ちりとてちん」は思い出させてくれますよ。
落語の「ちりとてちん」のあらすじ
旦那の誕生日に近所に住む男がお祝いに訪ねてきます。
男は旦那を喜ばせようと世辞(べんちゃら)を言い続けます。
日本酒の「白菊」が出されれば「生まれて初めて頂戴いたします!」と喜んで口をつけ、一口飲めば「こんな美味しいお酒は生まれて初めてです!」と大袈裟に喜んで旦那を喜ばせます。
上記のような調子で「鯛の刺身」「茶碗蒸し」「白ご飯」」に至るまで、とにかく出された食事には「生まれて初めて食べます!」「初物(はつもん)を食べたら75日寿命が延びます!」と徹底して世辞(べんちゃら)を言って旦那を喜ばせます。
しばらくすると裏に住む竹という男の話になり、旦那は「竹はあんたと違って何を食べさしても礼も言わなければ感謝する素振りもない」と愚痴を言います。
竹はなんでも知ったかぶりをして人を小馬鹿にしたような態度をとるため、旦那は誕生日の趣向として竹を懲らしめる計画を考えます。
ちょうどそこへ水屋で腐った豆腐が見つかります。
また隣の稽古屋の三味線の音色「ちりとてちん」からヒントを得て、この腐った豆腐を「元祖 長崎名産ちりとてちん(または「長崎名物 ちりとてちん」)として竹に食わせるという相談がまとまります。
何も知らない竹は旦那に呼び出されて旦那宅にやってきますが、旦那が用意した酒や料理に「しょーもない」と文句を言い旦那を不機嫌にさせます。
旦那は台所に声をかけて、件(くだん)の「長崎名産 ちりとてちん」を用意させ、竹の目の前に差し出します。
竹は「長崎名産 ちりとてちん」はもちろん知っているとウソをつき、「旦那のちりとてちんの発音が悪い」とか「珍味なのでたくさん食べるモノではない」などと知ったかぶりを続け、「ちりとてちん」を一口食べます。
一口食べてあまりの臭いと不味さに見悶えながらも「うまい!」と涙目になりながら「ちりとてちん」を褒めます。
旦那は笑いをこらえながら竹に聞きます。
「竹、私はちりとてちんを食べたことはないのやが、一体どんな味や?」
すると竹は涙目になりながら返答します。
「ちょうど豆腐の腐ったような味です」
落語「ちりとてちん」のオチ
落語「ちりとてちん」のオチは「ちょうど豆腐の腐ったような味でおます」。
上記は上方落語「ちりとてちん」のオチです。
同じ演目ですが江戸落語では演目名は「酢豆腐」に変わります。
「酢豆腐」のオチは、「いや、酢豆腐は一口に限りやす」となります。
落語「ちりとてちん」の教訓とは?
落語「ちりとてちん」の教訓は
- 知ったかぶりはするな!
- 腐った食べ物には気をつけましょう!
- 謙虚さ、感謝の心の大切さ。
- 人を喜ばせる言葉を使いましょう。
上記のような事柄はついつい忘れがちなことでもあるので気をつけたいですね。
落語「ちりとてちん」の名人!十八番なのは誰?【動画あり】
落語「ちりとてちん」の名人と十八番にしている噺家はだれでしょうか?
さっそく見ていきましょう。
桂南光の落語「ちりとてちん」
桂南光の落語「ちりとてちん」は絶品です。
上方落語で「ちりとてちん」を演じる噺家は少なからず影響を受けているのではないでしょうか。
「茶碗蒸し」の件(くだり)は南光自身が大の茶碗蒸し好きのため、落語の中にも取り入れたと言われています。
古今亭志ん朝の落語「酢豆腐(ちりとてちん)」
名人の古今亭志ん朝の落語「酢豆腐(ちりとてちん)」です。
江戸落語で聞く「ちりとてちん」もいいですね。
【動画】落語「ちりとてちん」!おすすめの名演を紹介
引き続き、落語「ちりとてちん」のおすすめの名演を見ていきましょう。
柳家小さんの落語「ちりとてちん」
人間国宝にもなった五代目柳家小さんの落語「酢豆腐(ちりとてちん)」です。
五代目小さんはモノを食べる仕草に定評がありました。
名人の至芸をご覧ください。
NHK 超入門 落語ザムービーの落語「ちりとてちん」
NHK「超入門 落語ザムービー」での落語「ちりとてちん」です。
瀧川鯉昇の落語「ちりとてちん」に合わせて人気俳優が演技をします。
落語を初めて聞く(見る)人でも落語の世界を映像で理解できるので大変好評な番組でした。
NHK朝ドラの「ちりとてちん」
NHKの朝の連続テレビ小説「ちりとてちん」です。
落語「ちりとてちん」の内容とは直接関係はありませんが、女性落語家の修行風景をテレビドラマ化し高視聴率を獲得しました。
落語ブームのきっかけを作った番組でもあり女性落語家の入門志願者が増えるきっかけにもなりました。
落語「ちりとてちん」!台本の内容をテキストで解説!
落語「ちりとてちん」の台本は演者によって変更しているパターンも多いです。
「長崎名産 ちりとてちん」を「台湾名物 ちりとてちん」に変更したり、登場人物を女性に置き換えたりと演者によって様々です。
また上方落語の「ちりとてちん」と江戸落語の「酢豆腐」は、噺の大筋は同じですが噺の導入部分は異なります。
まとめ
今回は落語「ちりとてちん」のあらすじ・オチ・教訓・名人などについて解説しました。
落語「ちりとてちん」は聞いても楽しいですし、実際に見ると更に楽しめる落語です。
腐った豆腐を食べるシーンは落語家それぞれの悶絶の表情も見れて楽しめますよ。
是非、生で見ることをおススメします。
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