落語を聞いたことがない人でも「まんじゅうこわい」という演目名は聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?
「寿限無」「時そば」「平林」などと並ぶくらいポピュラーな演目で笑いどころも多い楽しい落語です。
今回は落語「まんじゅうこわい」のあらすじ・オチ・教訓・名人などについて解説します。
落語「まんじゅうこわい」は落語を聞くのが初めての方に是非とも聞いてもらいたい演目です。
ではさっそく見ていきましょう。
落語「まんじゅうこわい」とはどんな演目?
落語「まんじゅうこわい」はオチが非常に有名ですよね。
江戸時代は現代のように娯楽が多くはなかったので、人が集まってお喋りをするというのが娯楽の一つだったようですね。
落語でお馴染みの裏長屋の連中が集まって「怖いものはなに?」「好きな食べ物はなに?」「嫌いなものはなに?」などと言って大の大人がくだらないお喋りに夢中になっています。
すると一人の男が「俺の怖いものは饅頭(まんじゅう)だ」と言います。
「饅頭がこわい?」
長屋の連中は半信半疑でその男の話を聞きますが、男が帰った後に暇を持て余した長屋の男たちはくだらない悪だくみを思い付くのですね。
さて、本当に「饅頭がこわい」という人はいるのでしょうか?
落語の「まんじゅうこわい」のあらすじ
落語でお馴染みの裏長屋。
暇を持て余した男たちが集まってくだらない会話をしています。
「人間は顔も違えば気性も違うもんやなあ」
「そらそうやで、違うさかいええねやで、これだけのもんがいっぺんに便所行きとなったら騒動やで」
「好きなもんでも皆それぞれ違うと思うが、お前は何が一番好きや」
「俺か?俺が一番好きなんは酒や」
「なるほどなあ、男らしいてええがな」
「お前は何が一番好きや?」
「わしか?わしは二番目が酒や」
「なるほど、こっちは一番が酒で、こいつは二番が酒か。で、お前が一番好きなもんはなんや?」
「わしが一番好きなもんは……、二番が酒や」
「二番は分かってるねん、一番は!?」
「三番は…」
「誰が三番聞いてるねん! 一番好きなもんはなんやと聞いてるんや!」
「……女ご(おなご)や」
「…なんや言いにくそうにしてると思たで。で、隣は?」
「わしはキャラメル」
「キャラメル? おなごとえらい違いやな。まあ、お前は甘党やさかいな」
長屋の連中が集まって「好きなモノ」や「嫌いなモノ」「こわいモノ」などを発表しあいます。
すると一人の男が「俺の一番怖いものは饅頭(まんじゅう)だ」と告白します。
「饅頭がこわい?」
長屋の連中は不審に思いながらも、その理由を聞きます。
すると、その男は「まんじゅう」という言葉を口に出すだけでも恐ろしい、と言って震えながら帰ってしまいます。
長屋の連中はその男が家に帰ってから、「皆で饅頭をたくさん買いにいき、その男の家の中に饅頭を投げ込んで、ビックリさせてやろう、怖がらせてやろう」という悪い話がまとまります。
ところが実は「饅頭がこわい」と言ったのはその男のウソで本当は「饅頭」が大好物だったのです。
「饅頭がこわい」と言えば、みんなは俺を驚かせようと思って饅頭をたくさん買ってきて俺の家の中に嫌がらせで饅頭を投げ込んでくるにちがいない。
男の計略通りに事が進み、男は家に投げ込まれた大量の饅頭をムシャムシャと食べ始めます。
長屋の連中はまんまと騙されて、怒った一人が男に聞きます。
「あんたの本当に怖いものはなんだ!」
すると、男が答えます。
「今度はあつ~いお茶がこわい」
落語「まんじゅうこわい」のオチ
落語「まんじゅうこわい」のオチは「今度はあつ~いお茶がこわい」です。
上述のオチは上方落語の「まんじゅうこわい」のオチです。
江戸落語の「まんじゅうこわい」のオチは「今度は濃ぃ~いお茶が一杯こわい」となります。
落語「まんじゅうこわい」の教訓とは?
上方落語の「まんじゅうこわい」の教訓ですが、「饅頭がこわい」と告白した「佐藤みつたろう」という男は打算的な男で長屋の連中を上手に騙すことに成功します。
「佐藤みつたろう」という男は甘党で酒は一滴も飲めません。長屋の連中はおそらくほとんどが大酒飲みでしょう。
日頃から酒を飲んでくだらない話をしている長屋の連中を、下戸の佐藤光太郎は冷めた目で見ていたことでしょう。
落語「まんじゅうこわい」の教訓は、酒席でべろべろに酔ってくだらない話をして楽しんでいるのは酒が飲める人だけで、酒が飲めない下戸(げこ)の人は実は退屈しているかもしれませんよ、ということかもしれません。
落語「まんじゅうこわい」の名人!十八番なのは誰?【動画あり】
落語「まんじゅうこわい」の名人・十八番にしていた噺家をみていきましょう。
桂米朝の落語「まんじゅうこわい」
人間国宝で文化勲章も受賞した桂米朝の落語「まんじゅうこわい」です。
上方落語・中興の祖と言われており桂米朝のおかげで今の上方落語があると言っても過言ではないでしょう。
桂枝雀の落語「まんじゅうこわい」
桂米朝の弟子で天才落語家と言われた桂枝雀の落語「まんじゅうこわい」です。
歴代の落語家で桂枝雀ほどお客を笑わせた落語はおそらく存在しないでしょう。
落語「まんじゅうこわい」!おすすめの名演を紹介!【動画あり】
引き続き、落語「まんじゅうこわい」のおすすめの名演を見ていきましょう。
古今亭志ん生に落語「まんじゅうこわい」
江戸古典落語の大名人の古今亭志ん生の落語「まんじゅうこわい」です。
若手時代は不遇な時期もありましたが、戦後は江戸落語の大看板として活躍しました。
落語「まんじゅうこわい」 英語
落語「まんじゅうこわい」の英語版です。
落語の国際化も進んでおり、現在は英語以外にも中国語や韓国語などでも落語が上演されています。
今後は外国の方が現地で落語を演じ、逆輸入で海外から日本に伝わる「Rakugo」の演目が出てくるかもしれませんね。
落語「まんじゅうこわい」 子供向け
NHKのEテレで放送されている「落語絵本」の「まんじゅうこわい」です。
上方落語家の桂米平(よねへい)の「まんじゅうこわい」です。
子ども向けに内容も分かりやすく時間も5分ほどに短くなっています。
落語「まんじゅうこわい」 NHK
NHKの「落語ザムービー」で放送された古今亭菊志んの落語「まんじゅうこわい」です。
プロの落語家が語る落語に合わせて人気俳優が演技をするという番組で大変好評でした。
残念ながら番組は終了しましたが「落語ザムービー」をきっかけにして落語を好きになった人も多いのではないでしょうか。
落語「まんじゅうこわい」!台本の内容をテキストで解説!
落語「まんじゅうこわい」の台本は落語家によって異なります。
大筋は同じですが落語「まんじゅうこわい」は、細かいギャグなど演者本人の工夫が入れやすい演目なのかもしれません。
また上方落語では落語「まんじゅうこわい」は30分以上の長講ネタですが、江戸落語では15~20分ほどのネタに刈り込まれています。
上方落語の「まんじゅうこわい」は狐に化かされたと話す男のシーンや川に身投げをしようとしていた女のシーンなどがあり、その箇所は怪談噺のように演じます。
江戸落語ではその箇所は「九郎蔵狐」という別の演目名で演じます。
冒頭の好きなモノの尋ね合いのシーンや家に中に投げ込まれた饅頭(まんじゅう)の銘柄はや数は落語家それぞれの工夫が感じられて面白い箇所です。
まとめ
今回は落語「まんじゅうこわい」のあらすじ・オチ・教訓・名人などについて解説しました。
数ある落語の中でも屈指の滑稽噺です。
落語「まんじゅうこわい」は演者によっても演出やボリュームも違いますし、上方と江戸でも雰囲気が変わってきます。
上方と江戸の落語「まんじゅうこわい」を聞き比べするのも面白いかもしれません。
落語を聞いたことがない人や小学生くらいのお子さんにも是非聞いてもらいたい演目です。
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