歌舞伎のイメージと言えば、「よーっ」と言って、片手を前に出し、首を一回し。現代ではお笑いで使われているせいか、少々滑稽に思えるポーズも歌舞伎の大切な演出の一つです。
この見得をきるポーズ、現代のドラマではなくなってしまいましたが、見せ場をクローズアップしたり、ストップモーションをかけるなど現代ではカメラが行っている演出を、歌舞伎では役者本人が行っているのです。
「歌舞伎の演出?歌舞伎はストーリーだけわかればいい」という方、演目の内容を知って、ストーリーを追うだけでは歌舞伎をまだ十分に楽しめてませんよ。
など、ポーズによる演出の意味を知って、さまざまな視点から歌舞伎を楽しみましょう。
歌舞伎のポーズとは?イラスト&画像で解説
▼2:40頃の「不動の見得」のポーズ、3:30頃の「元禄見得」のポーズに注目!
歌舞伎にはいろいろなポーズがあり、それぞれのポーズによって意味があります。
特徴的なポーズがよく見られる歌舞伎は「荒事(あらごと)」という種類で、演目の中でポーズは、登場人物の力強さといった個人の能力アピールや、怒りなどの感情を表すのにとられます。
ポーズの中でも一番の見せ場である、見得のポーズの中で特に有名なものをまとめました。
歌舞伎の決めポーズの種類!意味&名前まとめ
元禄見得(げんろくみえ)のポーズ
引用元:Pinterest
右手は横に水平に引き、左手は前にかざし、左足は大きく前に出して踏ん張るポーズ。
力強さをアピールするポーズで、荒事の演目でよく見られます。
意味 | 初世市川団十郎がこのポーズを創始した「元禄」時代にちなんで |
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見れる演目 | 暫(しばらく)、勧進帳(かんじんちょう) |
石投げの見得(いしなげのみえ)のポーズ
引用元:All About
まるで石を投げているような、左足を上げ、頭上で右手をぱぁと開くポーズをとります。
「勧進帳」の中で弁慶が、義経への非礼を詫び踊る、延年の舞の最初にとるのが石投げの見得のポーズです。
意味 | 石を投げているように見えるポーズのため |
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見れる演目 | 勧進帳(かんじんちょう) |
柱巻きの見得(はしらまきのみえ)のポーズ
引用元:Pinterest
柱、立木や長刀のような長いものを両手でかかえ、片足を長いものにからませるポーズ。
鳴神上人が絶間姫に裏切られた怒りを全身で表しています。
意味 | 長いもの(柱)に巻き付いているようにみえるため |
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見れる演目 | 鳴神(なるかみ) |
不動の見得(ふどうのみえ)のポーズ
引用元:Pinterest
右手に剣などを持ち、左手に数珠を持つ不動明王のポーズ。
他の見得のポーズに比べ感情的に穏やかで、威厳にあふれています。
意味 | 「不動明王」と同じポーズをとるため |
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見れる演目 | 不動(不動)、鳴神(なるかみ) |
歌舞伎のポーズで有名な演出は?
歌舞伎のポーズで片足を前に出すスタイル
引用元:Pinterest
武士のような、おおらかな力強さを、足を大きく踏み出す事で表現するポーズ。
豪快で荒々しい「荒事」の演技でよく見られます。
足を出す前に、大きく首を振り、片足と一緒に手も大きく広げる。
荒事役者の一番の見せ場で、演目をより観客に印象付ける効果があります。
見得をきった後は「ツケ」による効果音で、演出効果が重ねられ、大向うさんの掛け声で舞台が完成します。
隈取メイクが特徴的な荒事のポーズは、「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」「鳴神(なるかみ)」などで見る事ができます。
目の動きや表情が印象的なポーズは?
引用元:Pinterest
成田屋(市川団十郎家)だけに伝わる、目を見開いてにらみつける「にらみ」のポーズです。
にらみは寄り目ではなく、右目が寄り目のときは左目が中央を向くなど、左右で目の動きは別の方向を向いています。
にらみには、魔除けのパワーがあると言われています。
演目「暫(しばらく)」では、登場人物の鎌倉権五郎が、霊力で悪霊を倒しますが、その霊力を歌舞伎ではにらみで表現しています。
にらみについても、顔の表情だけで見得をきるという事はなく、他の見得のポーズと同様に手や足など全身を使って、役者の力強さを表現しています。
歌舞伎の見得とポーズは同じ意味なの?
引用元:Pinterest
ポーズの中の一番注目してほしい、「決めのポーズ」が見得です。
役者に観客の視線を集めるため、演目の登場人物の感情が一番高まった時に、歌舞伎では演技をとめてポーズをとる、見得という表現をします。
歌舞伎が大ブームとなった江戸時代には、現代の様な照明技術や撮影技術がなく、見得という役者自身がストップモーションをかける演技で、見せ場を表現してきました。
現代でも、演技をとめてポーズをとる手法は残っており、戦隊モノのヒーローが、登場する時に一時静止してポーズをとり、自分の能力などをアピールします。
まとめ
歌舞伎のポーズとは | 登場人物の能力アピールや、感情を表現するもの |
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歌舞伎のポーズで有名な演出は | 力強さを表現する片足を前に出すスタイルや、「にらみ」のポーズなど |
歌舞伎の見得とポーズは同じ意味? | 「決めのポーズ」が見得 |
歌舞伎のポーズについて、理解が深まりましたか。
歌舞伎のポーズは撮影技術などのない状況で、いかに観客を引き付けるのかを考えた、苦肉の策だったのかもしれませんね。
ポーズと同様、歌舞伎のメイクについても、江戸時代の照明技術のない状況で、離れた観客でも役者の表情がわかるように施されたものです。
現代で歌舞伎といえば、見得のポーズとメイクをあげる方も多く、当時の工夫が、現代では歌舞伎らしさと言われるものになったのも興味深いです。
今度、歌舞伎を観劇する際は、是非ポーズにも注目してみて下さいね。
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