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歌舞伎の口上とはどんな意味?有名な新年・襲名披露の例文まとめ

歌舞伎

歌舞伎の口上

歌舞伎役者が舞台の上で、裃姿で挨拶をする口上というのを見た事はありますか?

見た目は演目の一部の様にも見えるけれど、話している内容は役者本人の事を述べており、劇中の事なのか現実の役者の事なのか少し異様に感じます。

襲名のあいさつならば、舞台の上でしなくても他の芸能人の様に記者会見をすればいいのにと思った方、歌舞伎文化の勉強不足ですよ。

など、口上について学んで、観客を一番に考える歌舞伎という文化をより知れるようになりましょう。

歌舞伎の口上とはどんな意味?

歌舞伎の口上とは、歌舞伎役者が舞台の上から観客向けて感謝を述べるあいさつの事です。
あいさつの口上の中でも、最も広く知られているのが「襲名披露」の口上です。

「白波五人男」の様に、歌舞伎の演目の中で役名を名乗る事や、科白を口上という事もあります。

また、上演前の口上以外でも、演目の途中で役者が客席に向いてあいさつを述べる「劇中口上」もあります。
舞台の幕切れ時に述べるの「切り口上」もあり、あいさつをする事で観客に敬意を表します。

歌舞伎の口上の例文を紹介

新年の口上

「まずは、いずれも様、新年明けましておめでとうござりまする。
いずれも様の麗しきご尊顔を拝したてまつり、お慶びを申し上げたてまつりまする(役者名)にござりまする。
(劇場名)にかくも賑々しくご来場たまわした段、関係者に成り代わりまして、厚く厚く御礼を申し上げまする次第にござりまする」

襲名披露の口上

「当月、(公演名)を開催いたしますところ、初日より賑々しくご見物くださり有難き幸せ、厚く厚く御礼申し上げます」
「この後とも、新(襲名後の役者名)をご贔屓下さることはもちろんの事ではございますが、何とぞ伝統歌舞伎を末永くご贔屓ご後援を賜りまするよう、お願い申し上げます」

歌舞伎の口上で有名な台詞まとめ

歌舞伎の口上「隅から隅まで」

「隅から隅まで」と始まり、「ずずずい~っと希い上げ奉りまする」という表現が続きます。
観客席の隅から隅まで全員が、公演自体や、歌舞伎の文化を楽しんでもらえる事を切望するという意味です。

公演前の口上では「東西東西」から始まり、「隅から隅までずずずい~っと希い上げ奉りまする」と結ぶのが定型です。

歌舞伎の口上「東西東西」

「東西東西」は、口上の最初に呼びかける言葉で、客席の東から西までを指し、観客全員を表します。
口上の始まりの言葉としてだけではなく、歌舞伎の開始の合図として役者以外の座頭が発する場合もあり、東西声と言われます。

歌舞伎の口上「先づ今日はこれ切り」

演目が終了した際に、役者が「本日はこれまで」という意味で発する口上。
芝居を切ってしまうため「切り口上」といいます。

江戸時代では、芝居が終了した際の合図として、座頭が切り口上を述べるのが一般的でした。
現在では、演目の内容を理解し、終了のタイミングもわかった上で観劇している方が多いため、本来の終了を知らせる合図ではなく演出の1つとして切り口上を行います。

歌舞伎の新年の口上とは


引用元:歌舞伎美人

歌舞伎は、毎年新年に必ず口上があるというものではありません。
一幕として口上を行う年もあり、最近では2018年1月新橋演舞場での「初春歌舞伎公演」にて、十一代目市川海老蔵による口上が行われました。

初春歌舞伎公演では、新年のあいさつの後には、芝居の年中行事の一つで正月に行う「仕初め」の中から、「巻触れ」を披露。
当月の狂言名題を書いた巻紙を読み上げ、成田屋伝統の「にらみ」を行いました。

成田屋のにらみは、「一年間無病息災に過ごすことができる」と伝わっている縁起のよいもので、観客より盛大な拍手が沸き起こりました。

歌舞伎の襲名披露の口上とは

襲名の口上では、襲名の喜びや先代への敬意、歌舞伎という伝統芸能を後世までつなげる決意を語ります。
襲名披露公演の中に、口上という一幕を設け、鬘をつけた裃姿の歌舞伎役者が舞台に並んで行うのが一般的です。

襲名披露公演で行う演目は、家柄それぞれが持つゆかりの演目を行うという特徴があります。
市川家であれば、歌舞伎十八番の中から選ばれ、2020年5月の十三代目市川団十郎襲名公演では、「暫」や「助六由縁江戸桜」を行う予定でした。

歌舞伎のパリ・オペラ座公演の口上とは

2007年3月に公演された「パリ・オペラ座歌舞伎公演」の中で行われた口上は、十二代目市川団十郎を始め列座した役者全員が、フランス語で口上を行い話題となりました。

演目は歌舞伎十八番の「勧進帳」と「紅葉狩」を披露。
「勧進帳」では、団十郎と十一代目市川海老蔵の親子が日替わりで、富樫と弁慶を演じました。
また「勧進帳」最大の見せ場、花道で行う弁慶の「飛び六方」は、花道のないオペラ座で、団十郎の弁慶と海老蔵の弁慶がそれぞれ去り方を変えるなど、新しい演出方法がとられました。

歌舞伎の口上・外郎売とは

演目「若緑勢曾我」の中に登場する人物で、小田原にある外郎家の薬を販売するのが「外郎売」です。
外郎売が劇中に、薬の由来や効能について話す8分程度の「つらね」と言われる長科白があり、現代では「外郎売」というと長科白を指す事が多いです。

2019年7月に十一代目市川海老蔵の息子の堀越勸玄が、外郎売の海老蔵と連れ立って薬を売る貴甘坊に扮し、約4分間の長科白に挑戦しました。
父親の海老蔵が体調不良で不在の中、懸命に科白をいう姿に多くの観客は感動させられました。

まとめ

歌舞伎の口上の意味 歌舞伎役者が舞台の上から観客向けて感謝を述べるあいさつの事
歌舞伎の新年の口上とは 一幕を設け、新年に口上を行う年もある
歌舞伎の襲名披露の口上とは 襲名の喜びや先代への敬意、歌舞伎を後世までつなげる決意を語る

口上についての理解が深まりましたか?口上とは観客を始め、歌舞伎を応援してくれる方へ感謝を伝える事です。感謝や伝統継承の決意の場をプログラムの中に組み込むというのは、他の芸能では見当たりません。

わざわざ一幕設けてまでも、観客に思いを伝えたいのは、歌舞伎という文化が観客とのコミュニケーションを大切にし、観客を楽しませることを、何よりも大切にしてきた事の現れなのかもしれません。

これから、歌舞伎の大名跡十三代目市川団十郎の襲名公演が控えています。演目だけではなく、口上で何を述べるかについても是非注目してみてくださいね。

コメント

  1. 歌舞伎ヤスくん より:

    第十三代團十郎、新之助の口上、暫、鞘当を鑑賞してきました。歌舞伎初めて鑑賞しました。
    感じたのは、一方的にプロの技を披露するのではなく、観客に対する感謝とその縁をとても大切にしているのだろうという事。鑑賞後に口上の独特の言い回しを調べたくてこのコメントに出会いました。まさに、観客とのコミュニケーション。と書いてあることに納得、感激です。また見に行きたい、やっこのあの声の方は、どなただったのだろうなどと余韻に浸っています。

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