テレビ番組で俳句が取り扱われ、サラリーマン川柳も毎年話題になり、何かと気になる存在になった俳句と川柳。
この機会にはじめてみたいと思っても、違いがよく分からないということはありませんか?
また、俳句や川柳はともに「五・七・五」の形ですが、どのような見分け方があるのか気になりますよね。
そんなあなたのために、今回は俳句と川柳の違いをご紹介します。
この記事を読むと、俳句と川柳の違いについて知識を深められますよ。
ぜひ、ご覧ください。
俳句と川柳の違いとは?
「五・七・五」の17音で表現する俳句と川柳の違いは、大きく分けて5つあります。
項目 | 俳句 | 川柳 |
---|---|---|
季語 | 必要 | 特に必要ない |
切れ字 | 重要視されている | 重要視されていない |
文語・口語 | 文語体 | 口語体 |
歴史 | 江戸時代の連歌 「発句」が独立したもの |
前句につけられる 「付け句」が発展したもの |
内容 | 自然や情景を描写し、心情を詠む | 人間模様や世相を風刺的に描写 |
それぞれを詳しく解説していきますので、参考にしてみてくださいね。
季語の違い
項目 | 俳句 | 川柳 |
---|---|---|
季語の違い | 必要 | 特に必要ない |
季語とは、連歌や俳諧などで季節を表現するため用いられる単語のことで、必ず「発句」に入れる決まりがありました。
そのため、「発句」が独立した俳句には季語が必要になります。
対して、川柳は特に季語の必要なかった「付け句」が発展したため明確なルールがありません。
切れ字の違い
項目 | 俳句 | 川柳 |
---|---|---|
切れ字の違い | 切れ字が重要視されている | 切れ字は重要視されていない |
切れ字とは、どのような下の句にも対応できる独立性が求められた発句に、強く言い切る「切れ」を生み出すために使います。
俳句が切れ字を重要視する理由はここにあり、意味が切れる部分(句点「。」を打つ位置)に入れて感動や余韻を表します。
「付け句」が由来の川柳は特に切れ字を使わなくていいので、俳句より自由度が高いのが特徴です。
文語・口語の違い
項目 | 俳句 | 川柳 |
---|---|---|
文語・口語の違い | 文語体 | 口語体 |
文語体(書き言葉)は、古文のような形式の文章で、昭和初期頃まで日常的に使われていました。
口語体(話し言葉)は、話し言葉が基本となった文章の形式です。
俳句が文語体なのは、切れ字(「かな」・「や」・「けり」など)が重要視されているためです。
川柳は口語体が一般的で、俳句よりも自由で親しみやすい印象があります。
歴史の違い
項目 | 俳句 | 川柳 |
---|---|---|
歴史の違い | 江戸時代の連歌のうち「発句」が独立したもの | 前句につけられる「付け句」が発展したもの |
俳句と川柳の起源はともに江戸時代に遡りますが、「発句」と「付け句」のどちらが元になっているか違いがあります。
俳諧の連歌(連句)の最初の「五・七・五」が「発句」です。
「付け句」とは、本来発句から始めて下の句をつけていく俳諧の恋歌を下の句(七・七)から始め、上の句を考えていきます。
そして、下の句がなくても面白おかしく表現できることに気づき、発展したのが川柳です。
内容の違い
項目 | 俳句 | 川柳 |
---|---|---|
内容の違い | 自然や情景を描写し、心情を詠む | 人間模様や世相を風刺的に描写 |
俳句と川柳は、詠む対象が大きく違うのも注目する点です。
俳句は四季や自然を詠んで、思いを表現し余韻を残します。
川柳は余韻を残すことなく、世相や風俗、歴史、人事などを面白おかしく、時には風刺的に表現。
同じ情景を題材にしていても表現する内容に違いが出るため、全く違った作風になる場合があります。
575は俳句だけ?川柳のルールは575じゃないの?
俳句も川柳も、基本的には「五・七・五」の定型文です。
しかし、「字余り」「字足らず」「自由律」「句またがり」の技法があり、必ずしも定型文にはなりません。
字余り | 「五・七・五」のいずれかの部分、または合計が17音より多いこと |
---|---|
字足らず | 「五・七・五」のいずれかの部分、または合計が17音より少ないこと |
自由律 | 「五・七・五」の形に全くとらわれずに、思ったことをありのままに表現する技法 |
句またがり | 言葉の意味が「五・七・五」の切れ目にあっていないもの |
また、川柳には独特のルールが3つあります。
覚えると、より一層句の世界が楽しめますよ。
うがち | 人の目がなかなか向けられないもの、常識などに鋭く切り込み、読み手に気づきを与えること
風刺や批評に繋がる |
---|---|
軽み | 物事をサラリと言ってのけ、句に奥行きや広がりを持たせる言い方
要素を盛り込みすぎると、17音という限られた中で表現する川柳の余韻や余白がなくなる |
おかしみ | 「滑稽」だとか「興味深い」というようなユーモアのこと
気づくと頬が緩むようなにじみ出る笑いや苦笑いのことで、瞬間的に起こる笑いのことではない |
短い文章の中で、これだけの決まりを守りながら句を作り上げていく俳句や川柳は、とても興味深いですね。
俳句と川柳の例
俳句や川柳の違いが分かってくると、実際にどのような句があるか知りたくなりませんか?
季語や切れ字の必要性・使う文体・内容がそれぞれ違う、けれども共通点も多い2つを比べると、また違った楽しみがあります。
そこで、有名な句を3つご紹介いたしますので、比べてみてくださいね。
有名な俳句3選
菜の花や 月は東に 日は西に
与謝蕪村が詠んだ、菜の花が季語の俳句です。
「辺り一面菜の花畑が咲いていて、月が東から昇り、日は西に沈んでいくところだ」という意味で、空と大地の一体感が感じられます。
閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声
松尾芭蕉が詠んだ、蝉が季語の俳句です。
「非常に静かで蝉の声だけが響き渡り、岩に染みこんでいくようだ」という意味で、静かな様子が際立って伝わります。
柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺
正岡子規が詠んだ、柿が季語の俳句です。
「柿を食べていたら、法隆寺の鐘が聞こえてきた」という意味で、秋の訪れを実感できます。
有名な川柳作品3選
孝行の したい時分に 親はなし
ことわざにもなっている川柳です。
「親のありがたさが分かる頃に親はいない。親が存命なうちに親孝行をしなさい」と、戒めを込めた句になっています。
役人の 子はにぎにぎを よく覚え
「にぎにぎ」とは賄賂のことです。
赤ちゃんが、手の上に物を乗せるとにぎにぎと握りしめる様子と、賄賂をもらうときの揉み手を掛け合わせ、世相を風刺しています。
寝ていても 団扇のうごく 親心
添い寝をしていた母親がウトウトとしていても、うちわを扇ぐ手は止まらない。
親子の穏やかなひとときが目に浮かぶような川柳ですね。
俳句・川柳・短歌の違いは?
短歌が俳句や川柳と大きく違うのは、「和歌」であることです。
和歌は「五・七・五・七・七」の31音で形成され、「みそひともじ(三十一文字)」とも呼ばれます。
また、短歌には家族や恋人への感情をうたい、自分の身の回りのことを題材としたものが中心です。
まとめ
「五・七・五」の同じ形式である俳句と川柳には、比べてみるとさまざまな違いがありました。
まとめると、以下のようになります。
項目 | 俳句 | 川柳 |
---|---|---|
季語 | 必要 | 特に必要ない |
切れ字 | 重要視されている | 重要視されていない |
文語・口語 | 文語体 | 口語体 |
歴史 | 江戸時代の連歌 「発句」が独立したもの |
前句につけられる 「付け句」が発展したもの |
内容 | 自然や情景を描写し、心情を詠む | 人間模様や世相を風刺的に描写 |
はじめは戸惑うかもしれませんが、慣れてくるとそれぞれの奥深さが理解でき、俳句や川柳がさらに興味深いものになるでしょう。
あなたもぜひ、俳句や川柳の世界に触れてみてくださいね。
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