あなたは冬と聞いてどんなイメージが湧きますか?寒い、雪が降る……など、マイナスなイメージがあるかもしれません。
しかし、俳句の世界では、冬ならではの美しい景色を詠んだ句が多くあります。
今回は冬の季語が使われているおすすめの俳句をご紹介します。
また、中学生・高校生の課題などで参考にできるように句の意味も解説していきます。
俳句の冬の季語は?
俳句で言う秋は旧暦でいう立冬(11月8日頃)から立春(2月3日頃)までを指します。
時候 | 立冬 冬ざれ 冬至 師走 寒の内 短日 寒し 春隣 節分 三寒四温 |
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天文 | 時雨 雪 小春日和 霰(あられ) 冬晴れ 冬の夕焼け 氷 北風 冬の月 冬の空 凩(こがらし) |
地理 | 山眠る 枯野 氷柱(つらら)霜柱 冬滝 御神渡 狐火 |
人事(生活) | 探梅 マスク 餅 冬籠 炬燵 焚火 風邪 咳 スケート 鼻水 火事 |
行事 | クリスマス 除夜の鐘 年越詣 節分 豆撒 針供養 新嘗祭 七五三 酉の市 鬼やらひ |
忌日 | 一葉忌 芭蕉忌 一茶忌 漱石忌 横光忌 空也忌 貞徳忌 近松忌 親鸞忌 蕪村忌 |
動物 | 鯨 水鳥 鴨 凍鶴 寒鯉 海鼠 鶴 鷹 兎 狼 狐 |
植物 | 冬牡丹 冬椿 山茶花(さざんか) 茶の花 帰り花 落葉 枯木 水仙 葱 柊 |
食物 | 寒鰤(かんぶり) 河豚(ふぐ) 牡蠣 大根 人参 白菜 蜜柑 寄鍋 雑炊 熱燗 |
冬の季語を使った俳句16選
さっそく冬の俳句を鑑賞していきましょう。
冬の俳句 小学生におすすめ |
いくたびも雪の深さをたずねけり |
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むまさうな雪がふうはりふはり哉 | |
化けそうな傘かす寺の時雨かな | |
冬の俳句 中学生におすすめ |
旅に病んで夢は枯野をかけ廻る |
大晦日定めなき世のさだめかな | |
これがまあ終のすみかか雪五尺 | |
冬の俳句 高校生におすすめ |
遠山に日の当たりたる枯野かな |
初しぐれ猿も小蓑をほしげなり | |
降る雪や明治は遠くなりにけり | |
冬の俳句で面白い句 | 冬と云う口笛を吹くやうにフユ |
冬の月の俳句 | 寒の月川風岩をけづるかな |
冬の空の俳句 | 四角な冬空万葉集にはなき冬空 |
冬の紅葉の俳句 | 冬紅葉照りながらへてさながらに |
冬晴れの俳句 | 冬の日や馬上に氷る影法師 |
冬の夕焼けの俳句 | 主婦の手籠に醤油泡立つ寒夕焼 |
冬の花の俳句 | 茶の花や黄にも白にもおぼつかな |
冬の俳句で小学生におすすめの有名な句は?
いくたびも雪の深さをたずねけり 引用元:関西吟詩文化協会-いくたびも – 詩歌 – 漢詩・詩歌・吟詠紹介 – [学ぶ]
作者名 | 正岡子規 |
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出典元(本) | 寒山落木 |
出版年 | 1896年 |
季節 | 冬 |
季語 | 雪 |
病気で寝ている作者。雪がどのくらい積もっているかを何度も聞いてしまう自分がおかしく感じられたという俳句です。
むまさうな雪がふうはりふはり哉 引用元:一茶の俳句データベース詳細表示
作者名 | 小林一茶 |
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出典元(本) | 七番日記 |
出版年 | 1813年 |
季節 | 冬 |
季語 | 雪 |
美味しそうなぼたん雪がふわりふわりと舞っているよ、という句です。たしかに、雪はおいしそうなフワフワのかき氷のように見えますよね。
化けそうな傘かす寺の時雨かな 引用元:太陽の塔とか-「化けそうな傘かす寺の時雨哉(しぐれかな)」
作者名 | 与謝蕪村 |
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出典元(本) | 蕪村自筆句帳 |
出版年 | 1974年 |
季節 | 冬 |
季語 | 時雨 |
雨宿りをした寺で差し出されたのは、ぼろぼろで、いかにも何かに化けそうな傘だったという句。
差し出した人はどういった気持ちで差し出したのでしょうか。
「このようなぼろぼろの傘で恐縮です」という気持ちなのか、当たり前のようにぼろぼろの傘を差し出したのか……。
冬の俳句で中学生におすすめの有名な句は?
旅に病んで夢は枯野をかけ廻る 引用元:芭蕉db-旅に病んで夢は枯野をかけ廻る
作者名 | 松尾芭蕉 |
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出典元(本) | 笈日記 |
出版年 | 1694年 |
季節 | 冬 |
季語 | 枯野 |
旅の途中に病気になり寝ている芭蕉。見る夢は冬枯れの地を駆け回っている、という句。
危篤状態で詠まれた句で、芭蕉最期の句となりました。
大晦日定めなき世のさだめかな 引用元:道徳教育 2007年12月号/俳句に見る日本人の心-大晦日定めなき世のさだめ哉
作者名 | 西鶴 |
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出典元(本) | 俳諧三ヶ津 |
出版年 | 1682年 |
季節 | 冬 |
季語 | 大晦日 |
「定め無き世」というのは仏教的常套句。
仏教での決まり事を、大晦日という一年の総決算日という俗世界の定めに当てはめた、少し皮肉っぽい句です。
これがまあ終のすみかか雪五尺 引用元:俳句の教科書-【これがまあ終(つひ)の栖か雪五尺】作者は誰!?俳句の季語や意味・鑑賞文など徹底解説!!
作者名 | 小林一茶 |
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出典元(本) | 七番日記 |
出版年 | 1818年 |
季節 | 冬 |
季語 | 雪 |
定住すると決めて帰ってきたふるさとの豪雪をみて驚いた句。これが最後の私の住まいなのか、雪が五尺(1.5メートル)も積もっているじゃないか、という悲嘆とふるさとへの親しみが感じられます。
冬の俳句で高校生におすすめの有名な句は?
初しぐれ猿も小蓑をほしげなり 引用元:芭蕉作品集 冬の季語を持つ句 -芭蕉と伊賀
作者名 | 松尾芭蕉 |
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出典元(本) | 猿蓑 |
出版年 | 1689年 |
季節 | 初しぐれ |
季語 | 冬 |
初冬をつげる初時雨が降ってきて、道端の猿も寒そうにしている様を詠んでいます。まるで猿も小蓑(カヤ・スゲなどで編んだ雨具)を欲しそうに見えたようです。
遠山に日の当たりたる枯野かな 引用元:俳句の教科書-【遠山に日の当たりたる枯野かな】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞文・作者など徹底解説!!
作者名 | 高浜虚子 |
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出典元(本) | 五百句 |
出版年 | 1900年 |
季節 | 冬 |
季語 | 枯野 |
冬枯れの土地の果てにある山に日が当たっている様子を詠んだ句。
寒々しい野原に指す陽だまりが頭に浮かび、印象的に感じます。
降る雪や明治は遠くなりにけり 引用元:関西吟詩文化協会-降る雪や – 詩歌 – 漢詩・詩歌・吟詠紹介 – [学ぶ]
作者名 | 中村草田男 |
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出典元(本) | 長子 |
出版年 | 1931年 |
季節 | 冬 |
季語 | 雪 |
雪に覆われた世界は時間の経過自体もうやむやになったように感じたのでしょう。
まるで今が明治であるかのように思えた作者がふと我にかえった時に、一気に現実の昭和に引き戻されたような不思議な感覚を味わった、という句です。「や」「けり」と切字を二つ重ねることでその感慨深さが強調されています。
冬の俳句で面白い句は?
冬と云う口笛を吹くやうにフユ 引用元:セクト・ポクリット-冬と云ふ口笛を吹くやうにフユ 川崎展宏【冬の季語=冬(冬)】
作者名 | 川崎展宏 |
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出典元(本) | 秋 |
出版年 | 1997年 |
季節 | 冬 |
季語 | 冬 |
口笛を吹くように「フユ」と言ってみたよ、という句です。
寒さの厳しい冬、ついネガティブになりがちな季節に「口笛を吹くように」という明るさが良いですね。
冬の月の俳句で有名なおすすめの句は?
寒の月川風岩をけづるかな 引用元:季語めぐり ~俳句歳時記~-冬の月
作者名 | 三浦樗良 |
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出典元(本) | 樗良発句集 |
出版年 | 1784年 |
季節 | 冬 |
季語 | 寒の月 |
寒い月の出ている夜にまるで岩を削っているかのような冷たく痛いくらいの風が吹きつけているという句です。冷え込みの厳しさを月や風で表現しています。
冬の空の俳句で有名なおすすめの句は?
四角な冬空万葉集にはなき冬空 引用元:Weblio辞書-四角な冬空万葉集にはなき冬空の作者
作者名 | 加藤楸邨 |
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出典元(本) | 怒濤 |
出版年 | 1986年 |
季節 | 冬 |
季語 | 冬空 |
高層ビルの並ぶ都会では、冬の空もビルで四角く区切られています。万葉集が編纂された頃の人々が感じていたであろう冬空はこの狭い空にはないんでしょうね……ということが詠まれた句です。五七五、すべて字余りになっていることが、「ルールなんて守っていられるか!」という現代人のうっぷん晴らしのようにも見えます。
冬で紅葉の俳句はある?
夕映に何の水輪や冬紅葉 引用元:季語・冬紅葉
作者名 | 渡辺水巴 |
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出典元(本) | 水巴句集 |
出版年 | 1956年 |
季節 | 冬 |
季語 | 冬紅葉 |
夕日が映る水面に冬紅葉が落ちて波紋が広がり、夕日がきれいに映っていたのに邪魔しないでよ、とでも言わんばかりの句。冬紅葉の綺麗さに気を取られず、あくまで写実的に情景をよんでいます。
冬晴れの俳句で有名なおすすめの句は?
冬の日や馬上に氷る影法師 引用元:芭蕉db-渥美半島
作者名 | 松尾芭蕉 |
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出典元(本) | 笈の小文 |
出版年 | 1709年 |
季節 | 冬 |
季語 | 冬の日 |
冬のこころもとない日差しがさしている中、私は馬上で凍っている影法師のようだ、と芭蕉が自らの姿を絵画的に見た句です。
冬の夕焼けの俳句で有名なおすすめの句は?
主婦の手籠に醤油泡立つ寒夕焼 引用元:俳句季語一覧ナビ-季語/冬夕焼(ふゆゆうやけ)を使った俳句 | ページ 2
作者名 | 田川飛旅子 |
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出典元(本) | 現代俳句全集 |
出版年 | 1959年 |
季節 | 冬 |
季語 | 寒夕焼 |
気温のぐっと下がった寒夕焼の帰り道に、主婦が買い物かごに醤油瓶を入れて家路を急いでいる様子が描かれています。買い物かごの中の醤油瓶というごく小さな対象物に焦点を絞り描写されていることで、そのシーンがありありと目に浮かぶような句です。
冬の花の俳句で有名なおすすめの句は?
茶の花や黄にも白にもおぼつかな 引用元:与謝蕪村-和歌と俳句
作者名 | 与謝蕪村 |
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出典元(本) | 蕪村自筆句帳 |
出版年 | 1974年 |
季節 | 冬 |
季語 | 茶の花 |
茶の花は黄色なのか、白なのかなんともはっきりしない色。
曖昧な色彩に着目して、「何色の花と言ったらいいのかな」と面白がっています。
まとめ
この記事では冬の俳句を紹介・鑑賞していきました。冬の月、冬の空、など、「冬」がつくだけでなんとなく寂しく感じられます。しかし、冬の俳句には冬の厳しい寒さにも負けない、明るい句も多かったですよね。皆さんのお気に入りの冬の俳句が見つけられたら嬉しいです。
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