羅生門や蜘蛛の糸などの小説で有名な芥川龍之介が、俳句を作っていた事を知っていますか?
芥川は35年という短い生涯の中で、なんと1,000句以上の俳句を作っていました。芥川の俳句は、評論家の中には小説以上と評価される方もいる程、評価も高いです。
芥川龍之介は、知らない人はいないと言い切れるほどの小説家。そんな有名な作家の小説以上と言われる俳句、興味がありますよね。
などを知って、芥川龍之介の俳句の世界を学んでいきましょう。
芥川龍之介の俳句|有名な作品一覧
芥川龍之介の俳句について、まずは有名な作品から見ていきましょう。
芥川龍之介の俳句|春の句
雪どけの 中にしだるゝ 柳かな
「出典:澄江堂句集」
雪どけの水が、柳の枝や葉が垂れ下がっている。
春が近い雪解けの時期の、美しい景色を詠んだ句です。
お降りや 竹深ぶかと 町のそら
「出典:澄江堂句集」
門松の竹に、しんしんとお正月の空から雨が降り注いでいる。
お降りとは、元日から三が日の間に降る雨のこと。雨の降るお正月の情景を詠んでいます。
芥川龍之介の俳句|夏の句
更くる夜を 上ぬるみけり 泥鰌汁(どじょうじる)
「出典:澄江堂句集」
夜は更けていき、泥鰌汁もぬるくなってしまった。
客人をもてなそうと泥鰌汁を振舞ったが、盛り上がらず、泥鰌汁の様に興も覚めてしまった気持ちを表現しています。
青簾(すだれ) 裏畠の花を 幽(かすか)にす
竹の簾ごしに裏の畠の花を見ると、かすかに花が見えるというくらい、見えにくくなってしまった。
夏の季語「青簾」を使い、青簾ごしの景色が目に浮かぶ、想像力をかきたてる句です。
芥川龍之介の俳句|秋の句
風落ちて 曇り立ちけり 星月夜
「出典:澄江堂句集」
星が見える綺麗な月夜だったのに、風が吹いてきて雲が出て来てしまった。
美しい月夜に天気が悪くなってしまう様を詠んだ句です。
初秋の 蝗つかめば 柔かき
秋になりたての季節に、蝗をつかんだらまだ柔らかかった。
秋の訪れを、蝗の体の柔らかさで表現しています。
芥川龍之介の俳句|冬の句
老咳の 頬美しや 冬帽子
「出典:澄江堂句集」
咳をしている帽子をかぶった男性の頬が美しい。
労咳というのは結核の事。結核を患った青白い男性の頬が咳をする事で赤く染まって美しい様を詠んだ句です。
臘梅や 雪うち透かす 枝のたけ
蝋梅に雪が積もり、花から雪が透けて見える。
蝋梅は蝋細工のような花で、花が透けて見えます。蝋梅の美しい特徴をとらえた句です。
芥川龍之介の俳句で代表作は?意味も解説
芥川龍之介の俳句の中でも代表作と言われる5句を詠んでみましょう。
飛び石は 斜めに芝は 枯れにけり
庭の飛び石は斜めになってしまい、芝も枯れてしまった。
冬の訪れを感じ、手入れをされていない庭の荒んだ様子を詠んでいます。
青蛙 おのれもペンキ ぬりたてか
青蛙、お前も私と同じようにペンキが塗りたてのようだ。
ペンキが塗りたての様な表面だけ輝く蛙を、上辺だけは立派に見える芥川自身と重ねています。
草萌ゆる 土手の枯草 日かげかな
春の日の日差しのおかげで、土手の冬の枯草の中から、新しい草の芽が出ている。
新芽から春の訪れを感じている発句です。
竹の芽も 茜さしたる 彼岸かな
竹の芽も赤く茜色になってきた彼岸だ。
成長を始めて赤くなってきた竹の芽を見て、春の訪れを感じています。
水涕や 鼻の先だけ 暮れ残る
赤い夕暮れも終わりあたりは暗くなりましたが、水涕や鼻の先の赤いのは残ってしまいました。
深い孤独を感じる句で、芥川龍之介の辞世の句と言われています。
芥川龍之介の俳句の特徴とは?
引用元:Wikipedia
芥川龍之介の俳句の特徴は、他の俳人の句を踏まえて詠まれた句が多い事です。
例えば、芥川が俳句の理想で師匠だと思っていた松尾芭蕉の有名な、「古池や 蛙飛び込む 水の音」を、「古池や 河童飛び込む 水の音」と詠みなおしています。
芥川の冬の俳句として有名な「老咳の 頬美しや 冬帽子」も、飯田蛇笏の「死病得て 爪美しき 火桶かな」に憧れ詠んだと言います。
芥川龍之介の俳句はどんな評価だった?
芥川龍之介は俳句でも高く評価されています。芥川龍之介の句は師事していた芭蕉と同様、静寂の中の自然の美しさを詠んだ句が多く、その写実性が高く評価されていました。
俳句の講評を求めるため高浜虚子に送った芥川の句を、虚子は「圧巻」と評し、俳句雑誌ホトトギスに掲載されました。
【Q&A】芥川龍之介の俳句よくある質問
芥川龍之介の俳句を作る時のペンネームとは
芥川が活躍していた時代、ペンネームの事を号と呼んでいました。芥川の号は「澄江堂主人(ちょうこうどうしゅじん)」でした。俳句雑誌「ホトトギス」には、我鬼(がき)の俳号で投稿をしていました。
スペイン風邪の俳句がある?
スペイン風邪の俳句はあります。現在のインフルエンザの一種と言われるスペイン風邪が、約100年前に流行。スペイン風邪で芥川は父親を亡くし、自身もスペイン風邪に2度もかかりました。
激しい咳の症状があった事を、
胸中の 凩(こがらし)咳と なりにけり
「激しい咳のある病気になってしまった」と、二度目のスペイン風邪の時には、
思へ君 庵の梅花を 病む我を
「家の梅と病中の私を思って下さい」と、病気になった不安を詠んでいます。
まとめ
芥川龍之介の俳句についての知識は深まりましたか。
松尾芭蕉の俳諧の世界を理想としていたという芥川作品は、いかにも俳句らしい定型を重視した句が多かったですね。他の俳人の作品をモチーフに、自分の俳句を作るというのも興味深かったです。
芥川龍之介と聞くと短編小説家のイメージが強いですが、小説だけではなく是非俳句も詠んでみてくださいね。
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