「分け入っても分け入っても青い山」「うしろすがたのしぐれてゆくのか」という俳句を耳にしたことはありませんか?これらの俳句を詠んだのは種田山頭火です。
季語や俳句の定型「五・七・五」にとらわれず、思いを自由に詠んだ種田山頭火は「自由律俳句」の俳人として有名です。
一体どのような俳句があるのか気になりませんか?また、俳句の特徴も知りたくなりますよね。
そこで今回は、種田山頭火の有名な俳句や特徴についてご紹介します。
この記事を読むと、山頭火の俳句について知識が深まりますよ。
種田山頭火の俳句|有名な名句集
山頭火は、生涯で8万句以上を読んだと言われています。
その中から、季語のある有名な句をいくつか選びました。
自由律俳句で有名な山頭火ですが、五・七・五の定型の句も詠んでいます。
比較してみると、よりいっそう俳句を楽しめますよ。
山頭火の俳句|春の句
今日の道の たんぽぽ咲いた
道を歩いていてたんぽぽが咲いているのを見つけ、春を感じたのでしょう。
山頭火の春を喜んでいる様子が伝わってきます。
気まぐれの旅 暮れて桜 月夜なる
気まぐれの旅に出ていて、日が暮れて月に照らされた桜が美しかったのでしょうか。
とても趣のある印象を受けます。
子と遊ぶ うらら木蓮 数へては
「うらら」は、春の日差しが穏やかに照って、すべてのものが輝く様子を指す春の季語です。
楽しげな句に、ほっこりとした気分になります。
山頭火の俳句|夏の句
夕立や お地蔵さんも わたしもずぶぬれ
突然の夕立に見舞われて、道ばたのお地蔵さんも私もずぶ濡れになってしまった。
夏は急に豪雨が降ることもありますが、歩いていた山頭火も豪雨に見舞われたのでしょう。
「夕立や」の切れ字や「ずぶ濡れ」の体言止めが、雨をより一層強調しています。
サイダーの泡立ちて消ゆ 夏の月
夏の暑さとサイダーの冷たさ、炭酸が弾けて消えていく様子まで映像として浮かびます。
夕涼みをしている様子と、サイダーの泡に儚さを感じる句ですね。
吾妹子の 肌なまめかし なつの蝶
「吾妹子」とは、男性が妻や恋人、または女性を親しみの思いを込めて呼ぶ言葉です。
そして、「なつの蝶」はアゲハチョウをはじめとした夏になるとみられる大型の蝶のこと。
山頭火が、こんなに色気がある句を詠んでいたのは驚きです。
山頭火の俳句|秋の句
ほろほろほろびゆくわたくしの秋
「ほろほろ」とは、音もなく静かに花や葉などがこぼれ落ちるさまを表します。
山頭火は放浪の人生を送っていたこともあり、紅葉して木から落ちていく葉を、自らの人生に当てはめたのかもしれません。
傾ける 陽の前を群れて 飛ぶ蜻蛉
傾いた夕日の前を横切るように、群れを成して蜻蛉(とんぼ)が飛んでいる。
秋の夕暮れ時、情緒的な風景がすぐにイメージできます。
おとなりの 鉢木かれがれ 秋ふかし
おとなりの鉢に植えられた木が、今にも枯れそうになっている。秋が深まったものだなぁ。
秋が深まる様子と、今にも枯れそうになっている鉢の木が、季節とともにもの悲しさを表しているようです。
山頭火の俳句|冬の句
鉄鉢の中へも霰
いかにも山頭火らしい句です。
この短さの中でも、暖かい火鉢の中に霰が紛れ込み、一瞬で溶けてなくなっていくのが読み取れますね。
けふは凩(こがらし)のはがき一枚
こがらしが吹く日に舞い込んだはがきは何を伝えるのか、想像を掻き立てられます。
または、こがらしそのものを「はがき」に例えたのかもしれません。
越えてゆく 山また山は 冬の山
山をいくつも超えているのに、そこに見えるのはまた冬の山。
冬の寒さをとても感じます。
また、辛い人生を送ってきた山頭火と重ねると、さまざまなことを考えさせられる句です。
種田山頭火の俳句で代表作は?意味も解説
種田山頭火の俳句で、代表作と言えるものを集めました。
口語で作られているものが多く、表現もとてもストレートなので、解読しやすい句ばかりです。
意味も解説しますので、この機会に代表的な句を覚えてみましょう。
うしろすがたのしぐれてゆくのか
後ろ姿が時雨の中を歩いて行く。
「しぐれ」とは、初冬に降る通り雨のことで、夏の豪雨のような勢いはなく、パラパラと降ります。
冬の寒さに雨が加わり、ますます寂しげな印象を与えるこの句は、種田山頭火自身が「自嘲」しているのかもしれません。
分け入っても分け入っても青い山
道なき道を分け入り、進んでも進んでも青々とした山はどこまでも続いている。
俳句の意味だけを読み取ると、緑が青々とした山に入り込み、掻き分けながら進んでいるように思える句です。
しかし、山頭火は幼い頃に母が自死し、自らも精神を病むなど、人生は苦難の連続でした。
そのことを踏まえてこの句に触れると、また違ったものに思えてきますね。
踏みわける萩よすすきよ
萩とすすきを踏み分けて進んでいく。
とてもリズミカルに詠まれた句です。
心を弾ませながら、萩やすすきを踏み分けて進んでいく山頭火が思い浮かびます。
朝まゐりはわたくし一人の銀杏ちりしく
銀杏の葉が散って、絨毯のようになっている朝に参拝をするのは私一人。
大宝寺には山頭火の句碑があり、そこに、この句が刻まれています。
旅の途中で朝参りをした際に詠んだ句のようです。
山頭火の俳句の特徴とは?
引用元 : 種田山頭火 – Wikipedia
山頭火の俳句の特徴は「自由律俳句」であることです。
季語がないものが多く、五・七・五の型にもとらわれない感じたことを自由に表現する山頭火の俳句。
慣れないうちは違和感を感じますが、次第に独特の世界にやみつきになります。
また、口語体の句が多いため、読み手が簡単に理解でき、親しみやすいのも特徴です。
17音より短い作品は短律、長い作品は長律とも呼ばれます。
種田山頭火の名言一覧
引用元 : 種田山頭火 – Wikipedia
種田山頭火は俳人として有名ですが、数多くの名言も残しています。
その中から3つピックアップしました。
俳句とともに、名言もお楽しみください。
「あきらめ」ということほど言い易くして行い難いことはない。
山頭火はこのことを、自棄や盲従ではなく、相手の気持ちを考えて理にかなうようにすることで初めて許される「魂のおちつき」としています。
おこるな しゃべるな むさぼるな ゆっくりあるけ しっかりあるけ
日々暮らしていると文句を言いたくなることもありますが、そんな時はこの言葉を刻みながら、しっかりと前に進みたいものですね。
辛いとき、しんどいときに背中を押してもらえそうな名言です。
無理をするな 素直であれ
何事も、無理すると後が続きません。
そして、素直であれば、確実に成長していけます。
力量を見極めながら、無理をせず素直に日々を過ごしたい、そう思わせてくれます。
山頭火ゆかりの地は山口県・湯田温泉
引用元 : 其中庵 – 山口県小郡文化資料館
山頭火のゆかりの地は、山口県湯田温泉にあります。
昭和7年、山口市小郡に「其中庵」を構え、そこから頻繁に湯田温泉に通っていました。
昭和13年には湯田温泉に移住し、「風来居」を結庵。
さまざまな温泉にまつわる句を生み出しています。
現在の湯田温泉には『山頭火通り』や句碑があり、山頭火の俳句に親しむことができます。
まとめ
生涯で8万句以上を詠んだと言われる種田山頭火には、たくさんの名句があります。
また、名言も多く残し、現在でも人々に影響を与えています。
幼い頃から不運に見舞われ、苦しみながら放浪の人生を送った山頭火。
思いを型にとらわれない自由律で詠むことで、自らを省みていたのかもしれません。
記事を読んで、少しでも山頭火の俳句に興味を持ったら、他の句もぜひ触れてみてくださいね。
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